グーグルが描くネット広告の未来 冷蔵庫、腕時計、自動車など、あらゆる機器に
冷蔵庫、車のダッシュボード、サーモスタット(室温制御装置)、眼鏡型端末、腕時計型端末など----。近い将来、我々の生活にある様々な機器にネット広告が配信されるようになる。米グーグルはそんな展望を描いているという。
これは昨年12月、グーグルが米証券取引委員会(SEC)に宛てた書簡の中に書かれていたもの。このほどこの書簡をSECが公開して、話題になっている。
「当社の広告事業はプラットフォームにとらわれない」
グーグルは現在、広告収益の機器ごとの内訳を開示していない。そうした中、SECはグーグルも米フェイスブックや米ツイッターと同様に、モバイル広告(スマートフォンとタブレット端末)の財務情報を開示するよう要求している。
これに対し、グーグルは書簡で、モバイルプラットフォームの定義が曖昧になっている状況で、モバイルという収益区分は理にかなっていないと主張、SECが求めるような情報開示は無意味だと反論している。
その説明の中で、グーグルが例に挙げたのが冷蔵庫や眼鏡型端末などの新たな形の情報機器。同社はそれらをスマートデバイスと呼び、次のように述べている。
「多くのスマートデバイスが市場で勢いを増す中、モバイルの定義は変化し続ける。今から数年後、当社のような企業は広告をはじめとするコンテンツを様々な機器に配信するようになるだろう。これらの広告媒体はその可能性の数例にすぎない」
Android、スマホやタブレット以外にも
ここ最近のグーグルはモバイル基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」の利用範囲をスマートフォンやタブレット以外の分野にも広げようとしている。
今年1月同社は、アンドロイドの自動車への搭載を目指した企業連合「Open Automotive Alliance(OAA)」をドイツのアウディや、米ゼネラル・モーターズ(GM)、ホンダ、韓国現代(ヒュンダイ)自動車などとともに結成した。
今年3月にはウエアラブル端末向けOS「アンドロイド・ウエア(Android Wear)」を発表しており、韓国LGエレクトロニクスや米モトローラ・モビリティが同OSを搭載する製品を今年夏までに発売する計画だ。
またこれまで一部の利用者だけに販売していた眼鏡型端末「グーグルグラス(Google Glass)」は、このほど在庫限りという条件つきで一般販売を始めた。
グーグルのここ最近の顕著な動きは、学習型サーモスタットなどを手がける米ネストラボの買収だろうと米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。グーグルは32億ドルの現金で同社を買収することで合意している。
広告が人々を追いかける「うっとうしい世界」と米紙が指摘
前述の通り、グーグルは機器別の広告収益を開示していない。これは、同社が昨年始めた広告サービス「エンハンストキャンペーン(Enhanced Campaigns)」の考え方に基づくと同社は説明している。
従来広告主は、広告の掲出先をパソコンにするかモバイル端末にするか選択できた。だがグーグルは、これらを1つのパッケージとして提供するという方針に変更。どの機器に広告を出すかはグーグルのシステムが自動で決めるという新方式を導入した。
グーグルはこの広告サービスについて、「適切な人に適切なタイミングで、適切なデバイスに広告を出すシステム」と説明している。
だが米ニューヨーク・タイムズはこれについて、広告がデバイスの垣根を越えて人々を追いかけるシステムだと指摘、グーグルにとっては事業拡大のチャンスだが、利用者にとっては「うっとうしい世界」だと伝えている。
(JBpress:2014年5月23日号に掲載)