ネットで話題の「忍者の年収945万円なのに人手不足」は本当か? 伊賀市に聞く
年収945万円という高額な給料にもかかわらず日本では忍者が不足している――こんな海外発のニュースが、先週の土日に日本のインターネット上で話題になりました。
ニュースの情報源は伊賀市の岡本市長の発言だとされています。
忍者という職業のなり手が少なそうなことは想像に難くありませんが、さすがに年収945万円で集まらないとは思えません。
そこで、実際のところどうなのか伊賀市・観光戦略課にお話を伺いました。
「伊賀市ではそのような発言はしていない」
担当者の方によると「伊賀市からはそのような発言はしていません。当日取材に対応した職員からも『発言していない』と確認しています。忍者の募集も市では行っておりません」とニュースを否定する回答が。
伊賀市では取材時に給与の話はしておらず、金額の根拠がどこから出てきたのか不明だということです。伊賀市では観光協会にも確認しており、観光協会側も「そのような発言はしていない」とのことでした。
このニュースが話題になってから伊賀市や観光協会に問い合わせの電話がいくつかきており、対応に苦労していると報道に困惑されていました。
給与の話はラジオの出演者の発言
それでは、どこから「忍者の給料は高額」という話が出てきたのでしょうか?
情報の大本になっているニュースを探してみると、アメリカのラジオ局「ナショナル・パブリック・ラジオ」の取材であることがわかりました。
ラジオの放送内容を確認すると、番組のホストを務めるStacey Vanek Smithさんが忍者の給料について発言していることが確認できます。
つまり、「忍者の給料は高額」という発言は岡本市長のものではなく、ラジオの出演者によるものだったのです。
PVのために「85,000ドル」部分が独り歩き
この発言の根拠となった忍者の給与についての情報は、残念ながら見つけることができませんでした。多くが時給での募集ばかりです。
しかし、このニュースの拡散状況を追っていくと、二次情報、三次情報と複製され続けていくうちに次第に高い方の「85,000ドル」という金額だけが取り上げられるようになっていました。
忍者の給与が「23,000ドルだから人手不足」であれば普通のことですが、「85,000ドルなのに人手不足」は驚きにかわり、より多くの読者の注目を集められるからです。
ナショナル・パブリック・ラジオが最初に報じた「日本の忍者不足」は本当なのでしょう。しかし、それが「高額の給与なのに不足している」かどうかは確かな情報がなく、伊賀市の話を聞いたかぎりでは正しくないと言えそうです。