サイバー犯罪を安易に許してはいけない、バイトテロのネット拡散を含めて!
青少年のサイバー犯罪はいずれの国でも問題となっており、日本も例外ではありません。青少年のサイバー犯罪数は決して少なくはないのです。例えば、平成30年における不正アクセス禁止法違反に係る被疑者の年齢別構成は、「14~19歳」と「20~29歳」がそれぞれ48人で、次いで「30~39歳」が37人の順となっており、検挙人数が173人であることから未成年者の割合は28%であり、国民の年齢構成から考えても十分大きな値なのです。
【出展:総務省資料「不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況」】
さらにこの数字には、まだ隠れた数が抜けています。その数とは13歳以下の事実上の被疑者数です。また不正アクセス禁止法ではなく、マルウェア(コンピュータウィルス)を作成したとして不正指令電磁的記録保管・提供の非行内容で児童相談所に通告された9歳の小学三年生の例もあり、少なくない数の学童が通告・補導されているのです。
青少年がサイバー犯罪に陥る要因は、サイバー社会での倫理観の欠如、現在の社会全体を含めてのサイバー犯罪への理解不足、そして教育の不備等が挙げられます。しかし、一番問題になるのは積極的なサイバー犯罪への関与なのです。犯罪であること、少なくとも倫理的に問題となることを承知した上で犯罪を犯す青少年なのです。先のオーストリアの例も、結局は承認欲求が増幅され、罪を問われ、それが将来的な待遇に対して否定的に作用することを理解していながら、結果的には、それ以上の将来的に優遇される待遇を期待しているのです。オーストリアの例では、「アップルに就職したい」、つまり「罪を犯しても、アップルに認められるのではないか」という期待からなのです。
したがって、このオーストラリアの少年裁判所の記事を素直に受け取ることはできません。少年が「アップルに雇って欲しかった」という犯行の動機を受けて、裁判所が「貴重な才能」と称し、「有罪判決を記録しない」と優遇したことは問題です。この少年が罪を犯し、判決が下されるまでの非難や社会的制裁があるとしても、結果的に裁判所が、この少年の「アップルに雇って欲しい」という努力を、その手段が犯罪であるにもかかわらず評価したということになり、強いては、この少年に追随し、承認欲求が転じて、不正をはたらいてでも、最終的に社会的に受け入れられる、例えば高待遇で就職できると思い込んでしまう可能があるからです。
ここでも述べたように、サイバー犯罪を起こした青少年を決して英雄視してはならないのです。
一般的に、サイバー犯罪を非常に軽く考える傾向が今だにあります。サイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ばれる社会がすでに実現しており、サイバー社会での混乱は、社会全体の混乱に通じることを理解していません。例えば、不正アクセスによって580億円を不正に送金することは、街中の銀行に押し入って、例え直接、肉体的に人を傷つけなくとも、金庫を破壊して580億円相当の現金、貴金属を奪取することと全く同じなのです。関係する人の精神を傷つけるだけでなく、社会的な生活を阻害することになるのですから。また他人のパスワードを使って、個人情報を覗くことは、他人の家に留守の間に忍び込み、何があるかと探し回ることと同じなのです。サイバー空間は現実空間以上に社会に大きな影響を及ぼし、それゆえに大きな罪となることを認識しなくてはなりません。
現実空間とサイバー空間は異なるのです。現実空間における冗談行為と同等な行為をサイバー空間において行えば後者の空間に多大な損害を与える可能性があるのです。通例、上記のバイトテロのように事件自体は話題となっても、その後、彼らの犯した罪と罰がどのように展開されたか、取り上げられることがほとんどありませんでした。このような犯罪行為を犯したことによって、どのような罪と罰を受け、単にバイトを解職されるだけでは済まないこと、そして実際には自身の一生が本人の意思に反して大きく変わってしまうことを伝えなければなりません。単に「イタズラ」では済まないことがサイバー社会では多々あるのです。その結果を現実社会に投影することになるのが、現在のサイバーフィジカル社会なのですから。