もはや忘れ去られた、金が金を生む72の法則
日本銀行は7月末に政策金利を引き上げる追加の利上げを発表しました。その発表を受けて急速な円高となり、また米国市場の不透明感もあって、株価が大幅に下落し、発表後3営業日で20%以上の下落、リーマンショック以上となりました。株価の動向を解説するものではありませんが、今年に入ってから1989年末前後のバブル経済での株価を34年ぶりに塗り替え、経済の復調が取り上げられました。34年前はバブル経済とはいえ、株価がそれを塗り替えたからと言って経済が復調したか否かは疑問を唱える人は少なくなく、実際、その当時の米国の株価に比べて、現在の米国の株価は15倍程度になっていますから。
この政策金利の引き上げですが、一般の人にとっては今回のような株価の暴落や住宅ローンの金利引き上げなど必ずしも良い印象は得られていません。例えば住宅ローンで借入額が5,000万円で35年返済とした場合、変動金利で現在0.5%であったとした場合、0.1%引き上げられた場合、毎月の返済額が約2,000円増加します。これが0.5%引き上げられただけで約12,000円の増加となります。しかし逆に貸し付けではなく、預金金利も引き上げられます。いくつかの大手都市銀行では普通預金の金利が今まで0.02%であったものが、5倍の0.1%に引き上げられます。残念ながら定期預金もほぼ同じような金利です。しかしまだ100万円を10年預けても1万円(税込)しか利子が付きません。1万円も利子がつくのかと喜ぶ人もいるかもしれませんが、上記のバブル時代には年利6%が普通だったのです。郵便局の定期貯金金利が6.331%でした。当時、100万円を10年間定期貯金を行えば、約85万円(税込)の利子が付いたのです。
バブル当時、特に財テクに興味のある誰もが知っていた法則が72の法則です。それは
(金利)[%]×年数[年]=72
という法則です。簡単に言えば、金利が何%であれば、元手が2倍になるかという法則です。今回引き上げられた普通預金金利は0.1%ですから、2倍になるためには72を0.1で割って720となり、720年間預金すれば元手が倍になります(正確な計算値は693年間)。バブルの際の定期貯金金利は6.33%でしたから、約11年預ければ2倍となります。720年は非現実的ですが、11年は十分現実的でしょう。バブルの時代は3,000万円を貯めれば、元手に手を付けることなく、一生、何とか食べていけると言われた時代なのは納得できると思います。現在では1億円でも無理なのです。
ちなみに、2倍ではなく元手が33倍になる法則は365の法則と呼ばれます(勝手に名付けました)。バブル時代に300万円を預けて、億万長者、すなわち資産を1億円にするためには57年となり、それほど非現実的ではありません。現在の金利0.1%では3650年になるのですから(正確に計算すると3498年)。