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ワクチン予約、もっと他の予約方法はなかったのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:いらすとや

KNNポール神田です。

65歳以上のワクチン接種のオンライン予約がはじまった…しかし、この予約システムといい、電話予約などももっと良い方法がなかったものなのか?

□(2021年5月)17日(月曜日)から予約の受け付けが始まった新型コロナウイルスワクチンの大規模接種をめぐり、予約受け付けのシステムが、実在しない接種券番号などでも予約が取れる状態であることがわかりました。

防衛省では、会場で接種券を提示しなければ接種は受けられないことから、適正な情報を入力するよう呼びかけています。

□防衛省関係者によりますと、短期間で予約システムを構築することが求められる中、対象となるすべての自治体の接種券の番号をシステムとひも付ける作業はできなかったということです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210517/k10013036311000.html

■適当な番号でもすんなりと通ってしまうシステムだが…

ワクチンの予約は、インターネットブラウザから利用することができる。

基本的に接種券を用意して予約を取るというしくみだ。

出典:防衛省
出典:防衛省

 東京センター: https://www.vaccine.mrso.jp/

 大阪センター: https://info.vc-osaka.liny.jp/

LINEからでもスキャンしてからウェブ予約が可能となっている

出典:防衛省
出典:防衛省

実際に、検証のために市町村コードを調べて、適当な番号を打つと、予約が取得できる画面にまで進むことができてしまった。防衛省は、スピードを優先して、不備を把握していたという。

出典:防衛省
出典:防衛省

実際に会場予約をができてしまうので、検証はここで終わりにした。

■不備把握もスピード優先 防衛省、システム改修へ―大規模接種

□岸信夫防衛相は(2021年5月)18日(火曜日)の記者会見で、国が運営する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種の予約システムを一部改修すると表明した。虚偽情報による予約を防ぐのが目的。防衛省はシステム上の不備を事前に把握していたが、24日の接種スタートを優先し、改修を見送っていた。

□防衛省はこうした不備を事前に知っていたが、「7月末までの高齢者接種完了」が至上命令となる中、動作チェックなどに時間をかけられないことから改修を見送ったという。同省幹部は「限られた時間の中での最適解だった」と説明した。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021051801022

しかし、『不備把握もスピード優先』といい、『限られた時間の中での最適解』いうには、根本的に常識的に考えられていないことも露呈している。

■65歳以上しかワクチン接種できないのだから『生年月日』欄も工夫できたはず

出典:防衛省
出典:防衛省

まず、生年月日の入力欄をみて驚くのが…。1965年以降もズラリと並ぶのだ。

1956年(昭和31年)生まれが65歳となる。つまり、今回の予約システムの利用資格は、1956年以前の誕生日である。いくらスピード優先であったとしても、今回のワクチンであれば、ここは1956年(昭和31年)生まれまでとすべきだったろう。

今後の年代も考えていたとしても、あとで追記すれば良いだけのことだ。

ほんの数行の手間を惜しんで、接種券番号がなくても予約だけできてしまう結果となっている。

プルダウンメニューには、必要な情報以外は明記してはいけないのだ。

■平等・公正・公平よりも優先すべきことは…?

今回の場合、65歳以上の人に一斉に、ワクチン接種券を送ったことが問題かと思う。

平等で公正で公平にやるには、誰もが同じ条件というのが原理原則であるが、今回の優先順位は、高齢者の死者を無くすという大命題があるので、平等である必要はない。

100歳以上、100歳以下、90歳以下、80歳以下、70歳以下と、ワクチンの優先順位をつけるべきであった。

また、電話予約でも、末尾が奇数・偶数によって予約を変えることができたはずだ。

何よりも、『マイナンバー』を活用すべきだったと思う。

■マイナンバーの利用は?

『マイナンバー』を真剣に普及させることが国民の為になるのであれば、最大限に65歳以上の『マイナンバーカード』の『マイナポータル』で予約させればよかったのだ。スマートフォンでかざすだけだ。

高齢者がスマートフォンを持っていない、マイナンバーを持っていない議論ではない。

高齢者でも、スマートフォンを持ち、マイナンバーカードがあれば、スマホでマイナンバーカードを読み取って、ワクチン予約が優先的に受けられるという『デジタル化』の恩恵を享受すべきなのだ。

総務省管轄や防衛省管轄の問題は、2021年9月の『デジタル庁』の発足を待たずにしても、『特措法』の一部に追加で『デジタル庁』の権限で指導できるようにもできたはずだ。

□接種予約システム乱立「デジタル庁あれば避けられた」 平井担当相

□平井卓也デジタル改革担当相は(2021年5月)18日(火曜日)の閣議後記者会見で、各地でばらばらな予約システムに問題があるとの認識を示し、地方自治体を含めた行政システムの統一を図るデジタル庁の必要性を改めて強調した。

□「予約システムに関しては各自治体それぞれ独自で作っている。デジタル庁が発足していれば、こういう予約システムが乱立するようなことは避けられただろうと、今となっては思う」と述べた。

□デジタル庁は菅義偉首相の看板政策である「デジタル化」の司令塔となる組織で、デジタル庁創設を柱とするデジタル改革関連法が12日に成立。9月1日の発足を予定している。

https://mainichi.jp/articles/20210518/k00/00m/010/139000c

『デジタル庁』があっても避けられたとは思えない…。なぜならば、鳴り物入りでデジタル庁が誕生してデジタル化が一気に促進することは絶対にないからだ。

2021年9月を前倒しにしてでも、『(仮)デジタル庁』や『デジタル庁ベータ版』として、試験的に始めればよかったのだ。

少なくとも『マイナポータル』に関しては、ワクチン予約に利用できるはずだ。むしろ、ワクチン予約するために『マイナンバーカード』の取得に積極的になるはずだ。『マイナンバーカード』の問題は、税収把握の側面が目立っていて、利用者にとってメリットが何も見えてこない点である。還付金やいろんなメリットがマイナンバーカード側であれば利用者は喜んでマイナンバーカードを利用するだろう。

そう、日頃からの『デジタル化』への創意と工夫。そして法整備が重要であり、根本的に行政の問題点は、利用ユーザーに対する『サービス意識』が皆無なところにすべてある。

■デジタル化の前に『ユーザーに寄り添う気持ち』

市役所や行政の方々は、市民や国民が役所に来る時間を、貴重な『時間』という資産が毀損されている意識はほぼ皆無だ。同じやりとりをする担当は自分の担当にしか興味がなく、同じような人が来るのであれば、その流れを創意工夫して合理化できれば、報酬ポイントとなるような加点の仕組みがあっても良いはずだ。

『デジタル化』とは、電子化することが目的ではなく、電子化することによって、従来の紙のアナログシステムの根本的な部分を一から見直すことができることにある。

従来の紙の不要な仕組みを極力排除し、ヒューマンエラーを起きにくくすることである。現在の行政の『デジタル化』はヒューマンエラーを増殖させており、そのエラーのための余分な時間を搾取さえしている。

行政のデジタル化の意思決定の最重要課題は、いかにユーザーに寄り添う気持ちがあるかどうかだ。それがなければ、単にデジタル化しただけで、合理化できていない仕組みだけを量産してしまうだけになる。

これを担うリーダーシップが平井担当大臣に課せられている。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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