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2年目を迎えたヤマエ久野九州アジアリーグ。大分に根付きつつある独立リーグという野球文化

阿佐智ベースボールジャーナリスト
激戦を制して勝利を祝福する北九州ナイン

昨日3日、ヤマエ久野九州アジアリーグ(KAL)公式戦、大分B-リングス福岡北九州フェニックスの2回戦が、大分県中津市のダイハツ九州スタジアムで行われた。

今シーズンのKALは、スピードスター・西岡剛監督率いる「ホリエモン球団」、福岡北九州フェニックスが新たに加入。3球団で福岡ソフトバンクホークス三軍との交流戦を含めた各チーム78試合のペナントレースを競う。

北九州の西岡選手兼任監督
北九州の西岡選手兼任監督

桜が満開の中津市大貞公園。春の陽気に誘われてこの日も、多くの野球ファンが公園内の市営球場のスタンドを埋めた。前日のホーム開幕戦をエース岡部峻太の力投で開幕6試合目にして初勝利をあげた大分ナインは試合前のアップから一様に明るい。

それにも増して元気があったのが、新球団・北九州だった。前日の敗戦で1勝2敗と負けが先行してしまったが、ルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスから選手兼任で移籍し、監督に就任した若き指揮官、元メジャーリーガーの西岡剛監督の指導の下、ナインたちはリラックスした表情で試合に臨んでいた。北九州から大分までの2日続けての遠征というスケジュールを考慮して北九州は試合直前のシートノックをキャンセル。アメリカ野球を経験した西岡監督の合理的な方針は独立リーグの世界に新風を吹き込んでいた。先月20日のリーグ開幕戦では、攻撃中に本拠・北九州市民球場にクラブミュージックを鳴り響かせ物議を醸したフェニックスだったが、ビジター試合にもかかわらず、この日も音量を調整した上で自軍の攻撃時にはスタンドに設置したスピーカーからクラブミュージックを響かせていた。

試合は、ともに背番号34をつけた大分・辻興聖(MSH医療専門学校)、北九州・荒巻千尋(至誠館大学)の両先発投手の好投で終盤まで息詰まる熱戦となった。

先発として好投した大分先発の辻
先発として好投した大分先発の辻

辻は立ち上がりの連打とパスボールで初回に先制を許したが、5回まで毎回の7三振を奪う力投。2失点で7回を迎えたが、ここで力尽きたのか、この回長短打合わせて3本を浴び2点を北九州に献上してしまう。

一方の荒巻は6回まで大分打線を0封。7回に連打とダブルスチールで1点を失い2アウトをとったところで降板するが、力のあるストレートを中心にぐいぐい押すピッチングで2勝目を挙げた。

大分打線は序盤から再三チャンスを作りながらも肝心なところであと1本が出ず敗戦。点差以上の接戦だったが、いかに打線を繋いでゆくかが今後の課題として浮かんできていた。

それでも、昨シーズン、ペナントレースが興醒めしてしまうような「圧倒的な弱さ」は大分から感じられることはなかった。昨年は、リリーフ陣の層の薄さから試合の終盤を壊すことが多かったが、この日の試合では、先発の荒巻降板後も、後続の投手陣がしっかり自分の仕事をこなし、ホーム球場に集まったファンに最後まで期待をもたせていた。

県内での知名度も向上し、多くのスポンサーが集まった大分
県内での知名度も向上し、多くのスポンサーが集まった大分

また地道な営業活動の甲斐あって球団の認知度も地元・大分に浸透しつつあるようで、この日の試合を含めての3連戦には冠スポンサーもついた。「おらが町のチーム」を支えようという機運が高まって来ていることは、今シーズンを迎えるにあたって新調したユニフォームの広告の多さにもあらわれている。スタンドに集まったファンも、息詰まる熱戦に最後までスタンドを立つことはなかった。

今シーズンは、KALも加盟する日本独立リーグ野球機構所属リーグの優勝チームによるチャンピオンシップも開催されるだろう。従来の四国、BCの両リーグの決勝シリーズから九州から北海道に至るまでの各リーグのチャンピオンチームが一堂に会するこの大会にいずれのチームが姿を現すのか、目が離せない。

大分対北九州のこのカードは、臼杵市民球場に場所を変えて今日はナイターで行われる。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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