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なでしこジャパンに不足しているストライカー。本当に世界のトップと争うために。

森田泰史スポーツライター
アメリカ代表のエースであるモーガンを止めにかかる熊谷と阪口(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

アジアカップが始まった。2019年のフランス・ワールドカップ最終予選を兼ねた大会で、なでしこジャパンの戦いぶりをどう見るかが問題だ。

ベトナム、韓国、オーストラリアが同組のグループBで、初戦のベトナム戦は4-0で快勝した。2戦目の韓国戦ではスコアレスドロー。次が大一番、オーストラリア戦である。

■ストライカー不在という問題

この2試合で、多くの課題が見受けられた。だが率直に言えば、両ゴール前において、現在のなでしこは脆さを露呈している。

韓国戦では岩渕真奈、田中美南、菅澤優衣香、横山久美と4人のFWがピッチに現れた。それにもかかわらず、疲労で足が止まり始めていた韓国を仕留めきれなかった。この事実から目を背けてはならない。

アレックス・モーガン(アメリカ/現在FIFAランク1位)、クリスティアン・シンクレア(カナダ/4位)、ウジェニー・ルソメ(フランス/5位)、サマンサ・カー(オーストラリア/6位)、フィフィアネ・ミーデマ(オランダ/7位)、マルタ(ブラジル/8位)...。世界のトップを争う国々には、一流のストライカーがいる。

ボックス内で真価を発揮する。彼女たちに一瞬で勝負を決める力があるから、強いのである。

■サイドの使い方に一考の価値

韓国戦の後半。明らかに相手の体力は落ちていた。セオリーからすれば、両サイドに揺さぶりをかけなければいけなかった。韓国戦で右MFで起用された川澄奈穂美、左MFに据えられた長谷川唯、この2選手への要求はもっと高いものであるべきだろう。

今回およそ2年ぶりの代表復帰を果たした川澄だが、連携面でまだ難があるように見える。元々、「使われる選手」だ。所属先のシアトル・レインでも、ポイントに入ってゴールを陥れる場面が多い。また、長谷川には鮫島彩のオーバーラップを引き出す知性を見せてもらいたい。攻撃面できらりと輝くセンスを、インテリジェンスにまで昇華させてほしいと願うのである。

それから、守備の意識だ。前半、韓国は日本の左サイドを狙っていた。日本陣地で韓国がボールを保持した場所を見ると、右サイド(日本の左サイド)がおよそ60%に達している。当然ながらサイドの選手は攻守のメリハリを利かせる必要がある。しかし、清水梨紗、鮫島、両サイドバックの負担があまりに大きくなるのであれば本末転倒。特に鮫島は攻撃参加を大きな武器としている。

ただでさえ、次のオーストラリア戦は、フィジカルで押し込まれる展開が予想される。サイドの使い方は一考の価値があるはずだ。

■オーストラリア戦で問われる真価

なでしこはここまで1勝1分け。しかし、決して楽観できる状況ではない。

オーストラリアは初戦韓国戦(0-0)、次のベトナム戦(8-0)で1勝1分け。韓国は2分けだが、順調に行けば最終戦でベトナムに勝つだろう。

グループ3位でも、W杯出場権獲得の可能性は残る。5位決定戦に回り、そこでグループAの3位を叩けばいい。だが1986年の第6回大会以降、アジア杯では常にベスト4以上の成績を残してきた。

3月に発表されたFIFAランキングで、なでしこは11位だった。トップ10から陥落したのは、実に11年ぶりである。

「世界の頂点へ!」がキャッチコピーになっているようだが、現在のなでしこにW杯で優勝する力はない。まずはアジア制覇。オーストラリア戦で現状を見極めるべきだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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