「セクハラ被害者は名乗り出ろ」という財務省の非常識
福田財務事務次官のセクハラ発言が話題になっていますね。
・セクハラ疑惑 財務省対応「女性配慮欠く」 更迭先送りで傷口広げる
発言内容は最悪のもの
発言内容は、
というもので、本当に、記者に対してこの発言がされていれば、誰がどう見ても、どの角度から見ても、よほど特殊な例外的場面でない限り、セクハラとなると思われます。
これは音源もあるようです。
・「財務省トップ」福田淳一事務次官のセクハラ音源公開!(週刊新潮)
福田次官は記者に対してしたという点を否定
この発言に対し、当の福田次官は、この発言が記者に対してなされたということは否定しつつ、発言内容自体については、次のように述べています。
言い訳としては、よくあるものですが、そもそも「女性が接客をしているお店」であれば、こうした発言をしていいのか?という問題は残ります。「女性が接客をしているお店」といっても広い意味を含みますので。
仲間内だとセクハラになる可能性も
ただ、気になるのは、「仲間内の会話で、相手から話題を振られたりすれば、そのような反応をするかもしれない」というところです。
これは、場合によっては、これ自体がセクハラとなる可能性があります。
福田次官は、「相手から話題を振られたりすれば」とありますが、彼は事務次官という省内の事務方のトップに位置する人間ですので、そもそも仲間内でもこうした話題が職場や業務時間内に出た場合は、それを不快と感じる人がいる可能性もあるので、止めねばなりません。
このあたりに福田次官のセクハラへの意識のなさがにじみ出ていると言えるでしょう。
いずれにしても、福田次官の会話相手が記者であれば「詰み」が生じますが、本人は否定していますので、これは今後の推移を見守るしかありません。
財務省の調査手法は問題
さて、問題は財務省の調査手法です。
財務省は、この女性記者に名乗り出るように呼びかけ、外部の弁護士の連絡先をマスコミに配ったようです。
しかし、麻生財務大臣によれば、その弁護士は、財務省の顧問をしているということです。
弁護士という仕事は、依頼者の利益を最大限にはかることが基本です。
したがって、財務省の顧問弁護士は、財務省の利益を最大限にすることが基本となります。
女性記者にそこに名乗り出よ、というのは、はっきり言えば、酷であるといえるでしょう。
なぜ、福田氏個人が訴えることを掲載するのか?
そして、もっとひどいのは、財務省という国の重要省庁のホームページに、福田次官の「所感」なるものとして、次のものが掲載されていることです。
これを見たとき、私は、さすがにこれはないだろ、と思いました。
福田次官が、個人的にどのような法的手段をとっても自由ですので、それに対し何か言うべきことはありませんが、これを財務省という国の機関のホームページに載せる必要はないと思います。
ところが、これを載せているわけで、当然、事の性質上、麻生大臣の決裁を経て(今回は内容を読んで決裁しているでしょう)、掲載されているものと思われます。
そうなると、麻生大臣的には、「福田は怒っている」というメッセージを発信したかったものと思われます。
財務省のメッセージ
要するに財務省のメッセージは次の通りと解釈できます(麻生大臣の声で脳内再生してください)。
・セクハラの事実を福田は否定した。
・週刊新潮の報道はウソだろ。
・福田は怒っているから、新潮社を裁判で訴える。
・以上を前提に、女性記者は名乗り出て来い。
名乗り出られれば、すごいと思いますが、実際には厳しいでしょう。
「#me too」の運動があるので名乗り出られるはず、という見解もありますが、それはこの運動の趣旨を誤って解釈して、逆立ちした結論を導いてしまったものと思います。
見え透いた政治的意図
現在、財務省は森友問題などで、厳しい立場に立たされています。
そこに事務方のトップのセクハラ発言ですから、より厳しい立場になったと言っていいでしょう。
これをどう切り抜けるか、国のトップクラスの頭脳集団ですから、土日で考えに考えたはずです。
出した結論は、早い幕引きと、セクハラ疑惑の払拭でしょう。
それが財務省の政治的意図です。
その財務省の政治的意図を実現するのが、「名乗り出ろ」作戦です。
麻生大臣が言うように、「被害者がいなければ、調査のしようがない」というもっともらしい口実をつけ、名乗り出るまで、この問題を宙に浮かせようという意図が見えます。
そして、名乗りでなければ、「事実はなかった」「事実は福田の言うとおり」という結論を出して、なかったことにし、早い幕引きがはかれるのです。
真面目に調査する気がない財務省
しかし、本来、セクハラ問題が発生したときは、このような調査手法はとりません。
関係者から、丁寧に事実関係を聴取するのがまず第一です。
これをしないで、いきなり顧問弁護士へ名乗り出ろという、被害者の「公募」は非常識です。
しかも、福田次官は訴える準備中であると公表しているのですから、これは女性記者への恫喝とも取れます。
そもそも財務省は、福田次官から聴取しただけで、他の職員に調査した形跡は見えません。
先に指摘したとおり、福田次官の言い訳を前提としても看過できない部分もあるのです。
いきなりの「名乗り出ろ」作戦は、政治的意図が見え見えというべきでしょう。
逆にいえば、財務省内は、セクハラの問題を軽視したのです。
福田次官がセクハラ発言を記者にしたかどうかは、まだ分かりませんが、少なくとも財務省のこの姿勢は十分に批判するに値するものです。
財務省は、国の中枢機関という矜持をもって、セクハラ撲滅にむけて、真摯に取り組んでいただきたいと思います。
署名をやっています。
・財務省は、セクハラ告発の女性に名乗り出ることを求める調査方法を撤回してください!!