Yahoo!ニュース

メッシとS・ラモス。バルサとレアルは「象徴的な存在」を手放してしまうのか?コロナ禍の経済的打撃とは

森田泰史スポーツライター
競り合うメッシとS・ラモス(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

バルセロナとレアル・マドリーは、「象徴的な存在」を手放してしまうのだろうか?

リオネル・メッシとセルヒオ・ラモス。彼らはバルセロニスタとマドリディスタを象徴する存在だ。いずれも今季終了時に契約満了を迎える。そして、両者ともに契約延長で合意に達していないという状況だ。

■メッシの去就

まずはメッシだ。この夏、弁護士を通じてburofax(ブロファックス/内容証明郵便)をクラブに送り付け、2019-20シーズン限りでバルセロナを退団する意思を表明した。エルネスト・バルベルデ元監督の解任、バイエルン・ミュンヘン戦の2-8の大敗、ルイス・スアレスの移籍、ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長との確執...。メッシが退団を希望した理由は、一つではなかった。

最終的に、メッシは残留を決断した。だが火種は燻ったままだ。1月31日付のスペイン『エル・ムンド』紙でメッシの契約内容が報じられた。

゛5億5523万7619ユーロ”

派手な見出しが躍った。ボーナスを含め最大5億5523万7619ユーロ(約667億円)、それがメッシが受け取る可能性がある額だった。

バルサでプレーするメッシ
バルサでプレーするメッシ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「メディアの情報には、悪意があった。このクラブのために尽くした選手に、ダメージを負わせるものだった。私には理解できない。もしそれをクラブの誰かが漏らしたのだとすれば、その人間は去るべきだ」とはロナルド・クーマン監督の弁である。

一方で、3月7日に予定されている会長選を控え、候補者たちはメッシを擁護している。ジョアン・ラポルタは語る。

「メッシのサラリーは問題ではない。彼はそれ以上の価値を生み出してくれる。バルサの全体の収益を考慮すればね。私には、メッシがバルセロナで快適に過ごしており、残りたいという意思があるようにみえる。なので、彼の残留に全力を尽くす」

「メッシはお金で動くタイプではない。チャンピオンズリーグで優勝できるような具体的なスポーツプロジェクトが必要だ。メッシの契約内容をメディアにリークした人物がクラブ内にいるのなら、私はそれを炙り出すつもりだ」

また、ビクトル・フォンが「問題はサラリーキャップだ。それはメッシだけの年俸ではない。全選手の年俸の問題なんだ。メッシは際立った存在だ。だが彼がいなかったとしても、世界が終わるわけではない」と述べており、トニ・フレイシャは「(メッシの残留は)正しかった。契約を残す状況では、それを全うすべきだ。彼には移籍の可能性があったが、残留した。良い決断だったと思う。我々の目標を邪魔してほしくない。クラブの弱体化を図る人たちは、それをやり続けるだろう」と話している。

CL決勝でヘディング弾を沈めたS・ラモス
CL決勝でヘディング弾を沈めたS・ラモス写真:ロイター/アフロ

■S・ラモスのケース

新型コロナウィルスの影響で、レアル・マドリーの財政が圧迫されているのは明らかだ。

2020年夏と2021年冬の移籍市場で、マドリーの補強選手はゼロだった。この冬にはマルティン・ウーデゴールをアーセナルに、ルカ・ヨヴィッチをフランクフルトにレンタル放出したが、代役獲得には動かなかった。

2020-21シーズン、マドリーの予算は6億1700万ユーロ(約740億円)だ。本来であれば、9億ユーロ(約1080億円)前後の予算を立てられるはずだった。だが、ない袖は振れない。その中でマドリーはセルヒオ・ラモスとの契約延長で合意にこぎ着けなければならないのだ。

S・ラモスが過去に契約延長を行わないまま契約最終年を迎えたことは一度もない。しかしながらマドリーは近年、30歳以上の選手に単年契約をオファーする方向で動いてきた。S・ラモスは今年3月に35歳になる。現時点、S・ラモスは2年以上の契約を望んでいるといわれており、交渉がまとまっていないという状況だ。

S・ラモスとペレス会長
S・ラモスとペレス会長写真:ロイター/アフロ

ただ、現在、「ボール」はS・ラモス側にあると言える。ペレス会長が選手に譲る可能性は非常に低いからだ。実際、イエロやルイス・フィーゴといった選手たちが、契約更新を行わずにマドリーを去っていった。

2002-03シーズン、リーガエスパニョーラで優勝した直後、マドリーがビセンテ・デル・ボスケ監督とイエロとの契約延長が行わないことが明るみに出た。スペイン『マルカ』紙に「フロレンティナッソ(フロレンティーノの打撃)」と見出しが躍った。それくらい衝撃的だったのだ。

フィーゴに関しては、ペレス会長にとって「銀河系軍団」の第一号だった。2000年夏に当時史上最高額の移籍金6000万ユーロ(約72億円)で加入したフィーゴだが、契約期間を2年残していた段階で2005年夏にインテルに移籍している。マドリーはロベルト・カルロス、ジネディーヌ・ジダン、ラウール・ゴンサレス、ロナウドと契約更改を行っていたものの、フィーゴには新契約を提示していなかった。

賽(さい)は投げられた。いや、ずっと前に、投げられていた。だがパンデミックと会長選がスペイン2強のシチュエーションを難しいものにしている。2021-22シーズン、もしかしたらメッシとS・ラモスのいないリーガがスタートするかも知れない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事