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間もなくブラピ来日! トムのように日本が舞台の作品でヒットなるか。ブラピの興行ポテンシャルは?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『ブレット・トレイン』のLAプレミアより。この笑顔がもうすぐ日本で見られそう。(写真:REX/アフロ)

9/1公開の『ブレット・トレイン』に合わせて、あと数日でブラッド・ピットが日本にやって来る。5月のトム・クルーズに続いて、ハリウッド超大物スターの来日で、しかも『ブレット・トレイン』は新幹線を思わせる日本の超高速列車を舞台に描かれるので、来日時にも大がかりなイベント的プロモーションが行われるはず。メディアで大きく取り上げられるだろう。ブラピの人気は衰え知らずである。同世代のスターでは、ジョニー・デップが最近、スキャンダル系で騒がれ、レオナルド・ディカプリオもこのところ静かな人気という印象で、トム・クルーズに比肩できるのは、やはりブラピではないか。

2022年は『トップガン マーヴェリック』が日本でも破竹の勢いをみせ、現在、興行収入105億円を超えてきた。実写映画として100億円を突破したのは、2019年の『アラジン』以来、3年ぶり。8/5公開の『ONE PIECE FILM RED』がロケットスタートを記録しているが、おそらく『トップガン マーヴェリック』が年間トップの座を維持するのではないか。

このように今年の夏は『ジュラシック・ワールド』『キングダム』『ミニオンズ』あたりも含め、映画興行は活況を呈しているが、夏が終わると、特大ヒットを狙える作品がパッタリと途絶える。例年、秋はこのパターンになりつつ、今年は特に顕著であるような気がする。もちろん芸術の秋ということで秀作は粒ぞろいではあるが、興行的な盛り上がりへの期待は、11/11公開の新海誠監督の新作『すずめの戸締まり』、12/16公開『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』まで待たなくてはならない。

この“閑散期”に少しでも元気を注入したい。そこで期待されるのが、ブラピ来日効果だ。しかも原作は伊坂幸太郎(「マリアビートル」)。日本でヒットしなくてどうするの……である。原作で上野から盛岡へ向かう東北新幹線の車内で展開される殺し屋たちの激烈アクションが、このハリウッド実写版では、東京発/京都行に変更。日本でロケはしていないが、富士山も見えるし、駅名も忠実に再現され、その車内でブラピが活躍するわけである。

ただ、トム・クルーズと比べ、ブラッド・ピットの主演作は、なかなか特大ヒットが難しいという傾向がある。

そのイケメンふりが話題になった『ジョー・ブラックをよろしく』
そのイケメンふりが話題になった『ジョー・ブラックをよろしく』写真:Splash/AFLO

2人の主演作の日本での興行収入を比較すると……

トム・クルーズ

1)ラスト サムライ 137億円

2)トップガン マーヴェリック 105億円(上映中)

3)M:I-2(ミッション・インポッシブル2) 97億円

4)トップガン 66.3億円

5)ミッション:インポッシブル 61.2億円

6)宇宙戦争 60億円

7)レインマン 56.1億円

8)ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル 55.4億円

9)マイノリティ・リポート 52.4億円

10)M:i:Ⅲ 51.5億円

ブラッド・ピット

1)セブン 53億円

2)Mr.&Mrs.スミス 46.5億円

3)トロイ 42億円

4)セブン・イヤーズ・イン・チベット 31億円

5)ジョー・ブラックをよろしく 28億円

6)デビル 26億円

7)ザ・メキシカン 26億円

8)スパイ・ゲーム 26億円

9)ベンジャミン・バトン/数奇な人生 24億円

10)ファイト・クラブ 19.8億円

※は配給収入からの換算

ブラピの場合、主演作ではなくメインキャスト作品なら、『オーシャンズ11』69億円、『オーシャンズ12』36億円があるにしても、このようにトム・クルーズのベスト10がすべて50億円以上なのに対し、ブラッド・ピットの50億円超えは『セブン』1本のみ。しかも近年の作品はない。ただ、興収の数字が示すほど、トムとブラピの人気がかけ離れているとは思えない。つまり裏を返せば、トムよりもブラピの方が“通好み”のセレクトをしているのだ。ブラピにオスカーをもたらした、タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は日本で興収11.8億円だが、その数字以上に映画ファンに愛された作品と言えるからだ。同作でブラピの虜にならなかった人はいないはず

「出演作」という括りでは、日本でブラッド・ピット最大のヒットが『オーシャンズ11』
「出演作」という括りでは、日本でブラッド・ピット最大のヒットが『オーシャンズ11』写真:Shutterstock/アフロ

『ブレット・トレイン』でブラピが演じるレディバグ(てんとう虫)は、原作でも書かれているとおり、「世界一運の悪い殺し屋」。とことんツキがないという意味で、演じようによっては愛すべきキャラクターになる。その点で、現在58歳のブラピが、めちゃくちゃチャーミングに見えるから不思議! そしてアクションでも年齢を忘れさせる、豪快な動きを披露しており、こちらもトムに負けていない。

トム・クルーズの日本での最大のヒット作が、日本を舞台にした『ラスト サムライ』なので、日本という共通項の『ブレット・トレイン』がブラピにとって、どこまでのヒット作になるか。現実的に考えて『セブン』を超えて1位になるのは難しそうだが、ブラピ主演作のベスト10圏内、つまり20億円あたりには何とか到達してほしいところ。

ブラピだけでなく、日本人にとって(ツッコミどころも含め)見どころだらけの作品に仕上がっていることだけは断言したいので。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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