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トップリーグ ナエアタ ルイ4戦出場停止のなぜ&第3節ベスト15【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
爆発力を示すナエアタ。写真は昨季のプレー中(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ファンは騒然とした。現場は粛々と受け止めた。

 3月6日にあった国内ラグビートップリーグの第3節を受け、3月11日、第4節以降の出場停止処分を受ける選手が発表された。

 当該選手の1人が今季好調の日本代表候補だったこともあってか、ネット上で議論が飛び交う。決定を下したトップリーグ側、決定を受けたチーム側が見解を示した。

 今回、出場停止処分がなされたのは、クボタのタウモエ・パパイ・ホネティ、ホンダの呉季依典、NTTドコモの金廉、神戸製鋼のナエアタ ルイの4名だ。

 クボタのホネティ、ホンダの呉は、当該のプレーで試合中にレッドカード(一発退場処分)を、NTTドコモの金はイエローカード(10分間の一時退出処分)を受けている。

 かたや神戸製鋼のナエアタは、処分対象の行為とされた後半32分のタックルでは、笛を吹かれていない。むしろそのプレーがあった4分後、脳震盪の疑いのため他選手と交代している(書面上は「一時的退場」)。

 ただ今回の出場停止期間は、レッドカードを受けた2選手のうち1選手が3試合だったのに対し、イエローカードを受けた金、笛を吹かれていないナエアタが4試合と1試合多かった。開幕が予定より約1か月遅れた今季にあって、レギュラーシーズンはあと4節で終わる。

 ナエアタの当該のプレーを振り返ると、自身より小柄な選手へタックルした際にお互いの頭部が激突したようにも映った。レッドカードを受けた他選手が相手を蹴っていたのに比べると、故意性は低そうだ。

 もっとも、リーグを運営する日本協会の関係者は、「試合中のカードが出たとか、出ないとかと今回の裁定は関係ない」。今回の4名への追加処分は同協会の規律委員会が決めており、それはこれまでの似た事例と同様だ。

「レフリーが見られない角度からのビデオの中身などを判断して、その結果での裁定となります。(ナエアタの処分の詳細は)詳しくは言えないですが、リリースに載ってある『当該選手の右肩が頸部及び顎部にコンタクトした』の通り。ワールドラグビーは、頭頚部へのヒットがあった場合の出場停止処分には『6週間』を推奨しています。(ナエアタへの処分は)そこから軽減され、4試合となった」

 選手の安全面を考慮する現在のワールドラグビーの指針では、肩より上へのコンタクトは厳しく罰せられる。今度の件には、神戸製鋼側も最終的には納得の様子だった。

「(強い衝突を喰らった)相手の選手とすれば『!』となったのかもしれません。逆に、去年の試合では、うちにいたダン・カーターへ肘打ちをしてしまった選手が似た懲罰を受けています(昨季第2節のプレーで当時ヤマハ所属のリチャード・アーノルドが4試合の出場停止処分を受けた)。今回もルールに則って…ということです」

 不服がある場合はアピールの権利が与えられていたが、神戸製鋼側は「(ナエアタの)タックル自体が高く、バインドが高かった」と、安全な形を取れなかったことを踏まえてジャッジを受け入れた。確かに試合の放送を振り返れば、担当レフリーが該当シーンの際に「ここはあとでチェックを…」と言ってもいたような。

 ナエアタは昨季の活躍で、2020年に水面下で編まれた日本代表候補へ初めて加わり、今季もここまでリーグ最多の9トライを挙げている。貴重な戦力であるのは間違いない。

 一方で神戸製鋼は、2018年以降、元ニュージーランドアシスタントコーチのウェイン・スミス総監督のもと、選手へ求めるプレーの水準やグラウンド外での態度を明確化したことで豪華戦力をチーム力に首尾よく変換している。

 チーム関係者は、今度の件も一丸となって乗り越えるつもりだと語った。

「いまから強いところ(との対戦)が待っているのでナエアタの不在は響くように見えますが、彼1人でチームを作っているわけではない。他の選手が出てきてくれれば」

 今度の判定は、各人が確たる根拠のもとに意思決定を下した結果だ。課題があるとすれば、文書による「リリース」の領域を超えたクリアな説明の有無か。古今東西、開かれた業界が人を集める。

<私的第3節ベストフィフティーン>

1、稲垣啓太(パナソニック)…スクラム優勢。守っても正確なタックルと素早いリロードを繰り返した。

2、坂手淳史(パナソニック)…スクラムをリード。前半に訪れた自陣でのピンチもタックルと起き上がりの速さで失点防ぐ。

3、具智元(ホンダ)…一時、スクラムで反則を取られるも、その次のスクラムで文句なしの押し込み。相手の頭を上空へ突き上げた。突進も効いた。

4、ローレンス・エラスマス(NTTドコモ)…接点周辺で堅牢。

5、ルアン・ボタ(クボタ)…チョークタックル。キックチャージ。モールの軸。

6、ベン・ガンター(パナソニック)…鋭い出足のタックル。味方のミスボールへ鋭く反応し、ピンチを未然に防いだ。

7、マイケル・フーパー(トヨタ自動車)…ジャッカル、グラウンド端での突破と縦横無尽。

8、テビタ・タタフ(サントリー)…ジャッカル。強烈な突破。

9、TJペレナラ(NTTドコモ)…決勝トライ。その際の自陣から攻め上がるまでのマネージメントも秀逸。ピンチも何度も防ぐ。

10、松田力也(パナソニック)…両コーナーへのスペースへキック。

11、テビタ・リー(サントリー)…狭いエリアも構わずラインブレイク。

12、ライアン・クロッティ(クボタ)…防御時のワークレート。

13、セタ・タマニヴァル(東芝)…ジャッカル2度。ランニングとオフロードパスでチャンスメイク。

14、ジョネ・ナイカブラ(東芝)…強烈なタックルを連発。トライもマーク。

15、野口竜司(パナソニック)…ハイパントからのチェイスで陣地を獲得。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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