なぜレアルはリュディガーを“確保”したのか?チェルシーとの関係性とアンチェロッティの思惑。
彼らに歩みを止める気配は、なさそうだ。
今季のチャンピオンズリーグで決勝に進出したレアル・マドリーだが、すでに来季に向けて動き始めている。最終ラインを整備するため、アントニオ・リュディガー(チェルシー)の獲得を決定的なものにしている。
■アラバのケース
リュディガーは今季終了時にチェルシーとの契約が満了する。つまり、次の夏にフリーで移籍が可能になる選手だ。
マドリーとチェルシーは良好な関係を築いてきた。過去、この2クラブ間では多くの“取引”が行われてきた。リカルド・カルバーリョ、マイケル・エッシェン、ティボ・クルトゥワ、エデン・アザール、アルバロ・モラタ…。彼らはみな、白と青のユニフォームに袖を通している。ここに、リュディガーが加わる流れになっている。
また、マドリーは昨年夏、同様の手法でダビド・アラバを獲得している。
バイエルン・ミュンヘンとの契約が満了したアラバに対して、いち早く動いたのがマドリーだった。アラバは今季、公式戦45試合に出場。エデル・ミリトンと共にディフェンスラインを支え、マドリーのタイトル奪取に大きく貢献した。
「リュディガーはレギュラーの選手で、チェルシーの鍵となるプレーヤーだ。シーズン終了まで、そうあり続ける」
「(退団の可能性に)非常に残念だ。我々は彼が恋しくなるだろう。ロッカールームで、勇気を与えてくれる存在だった。対戦相手としては恐れを抱く存在で、毎シーズン、50試合から55試合に出て高いレベルでプレーしてくれる。この1シーズン半、トップクラスのDFだった。我々は解決策を見つけなければいけない」
これはチェルシーのトーマス・トゥヘル監督の言葉だ。
■セルヒオ・ラモスの退団
マドリーは今季開幕前にセルヒオ・ラモスがパリ・サンジェルマンに、ラファエル・ヴァランがマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。
チャンピオンズリーグ3連覇を達成したジダン・マドリーで、S・ラモスとヴァランは絶対的な存在だった。
2021−22シーズン、開幕当初は苦戦すると思われた。しかしながらアラバとミリトンが“師弟関係”のように互いを高め合い、安定したディフェンスラインを築いた。それでも、アラバ不在の試合では一抹の不安が残された。
アンチェロッティ監督は今季、マドリーをリーガエスパニョーラ制覇に導いた。ミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘンと欧州5大リーグで優勝を成し遂げた史上初の指揮官となった。
その中で、アンチェロッティ監督は、フランコ・バレージ、パオロ・マルディーニ、リリアン・テュラム、ヤップ・スタム、ファビオ・カンナバーロ、アレッサンドロ・ネスタと優秀な守備者たちを指導してきた。
「DFながら素晴らしい技術を有している選手たちがいた。また、カンナバーロのように、唯一無二の守備の能力を持っている選手がいた。相手をマークすると言うことに関しては、彼はファンタスティックだった。あるいは、バレージのように、最終ラインでリーダーシップを発揮してくれる選手もいた」
多くの選手を見てきたアンチェロッティ監督だが、以前、このように語っていたことがある。
「セルヒオ・ラモスを他の選手と比較するのは難しい。だが彼はより完璧な選手だと言えるかもしれない。技術、フィジカル、パーソナリティ、リーダーシップ、すべてを兼ね備えている」
ヴァランとS・ラモス、とりわけ後ろから指示を飛ばし味方を動かしていたS・ラモスのマドリーからの退団は指揮官としても痛手だったのだ。
マドリーはリュディガーと2026年夏まで契約を結ぶ見込みだ。年俸は700万ユーロ(約9億円)前後になるといわれている。ユヴェントス、パリ・サンジェルマンと複数クラブが関心を寄せていたリュディガーを、マドリーが射止めた格好だ。
アラバの活躍とミリトンの成長があった一方で、マドリーは守備陣の補強を必須としていた。そのための条件として、タイトルを獲得してアンチェロッティ監督の発言権が増す必要があった。それぞれの思惑が孕み、リュディガーの移籍が決まろうとしている。