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全試合のほぼ半数でスタメンマスクの捕手がオプションを破棄される。金額は1000万ドル未満なのに…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ライセル・イグレシアス(左)とトラビス・ダーノー Sep 4, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 11月4日、アトランタ・ブレーブスは、マーセル・オズーナの球団オプションを行使し、ルーク・ジャクソントラビス・ダーノーの球団オプションを破棄したことを発表した。

 それぞれのオプションは、DHのオズーナが年俸1600万ドル(解約金100万ドル)、リリーバーのジャクソンが年俸700万ドル(解約金200万ドル)、捕手のダーノーは年俸800万ドル(解約金なし)だ。

 オズーナは、2023年の40本塁打に続き、2024年も39本塁打を記録した。この2シーズンの出塁率は.346と.378、OPSは.905と.925だ。オプションの行使は、当然だろう。2023年と2024年の年俸は1800万ドルずつなので、それよりも200万ドル少ない。

 ジャクソンのオプションを破棄したことも、頷ける。ジャクソンは、夏のトレードで、ホルヘ・ソレーア(現ロサンゼルス・エンジェルス)とともにサンフランシスコ・ジャイアンツからブレーブスへ移った。移籍前が36登板の35.0イニングで防御率5.40、移籍後は16登板の18.0イニングで防御率4.50だ。ちなみに、2017~21年もブレーブスで投げ、2021年は71登板の63.2イニングで防御率1.98を記録した。

 一方、ダーノーのオプションは、行使してもよかった気がする。ショーン・マーフィーが開幕直後から5月下旬まで離脱し、復帰後に打撃が振るわなかったことも要因だが、ダーノーのスタメンマスクは79試合を数え、ブレーブスの162試合中、ほぼ半数の48.8%を占めた。また、出塁率は.302ながら、99試合で15本のホームランを打った。

 ブレーブスが破棄したオプションは、2024年の年俸と同額だ。ダーノーは、2020年からブレーブスでプレーしてきた。シーズン短縮による減額を含めなければ、どのシーズンも、年俸は800万ドル。契約は、2年1600万ドル(2020~21年)→2年1600万ドル(2022~23年)→1年800万ドル(2024年)と推移してきた。

 来年2月に36歳となる年齢に加え、マーフィーの年俸も、ダーノーのオプションを破棄した理由のように思える。ブレーブスは、2022年12月にマーフィーをオークランド・アスレティックスから獲得し、その直後に6年7300万ドル(2023~28年)の延長契約を交わした。各シーズンの年俸は、2023年が400万ドル、2024年が900万ドル、2025~28年は1500万ドルずつ。2024年→2025年は、600万ドルのアップとなる。

 2024年のスタメンマスクは、ダーノーが79試合、マーフィーが67試合、チャドウィック・トロンプは16試合だった。トロンプの先発出場は、通算5シーズンで45試合に過ぎない。ブレーブスは、2025年の捕手について、マーフィーとドレイク・ボールドウィンの2人、と考えているのかもしれない。

 ボールドウィンは、メジャーデビュー前のプロスペクトだ。来年3月に24歳の誕生日を迎える。2024年はAAとAAAでプレーし、AAの52試合は打率.244と出塁率.313、4本塁打、OPS.650だったが、6月中旬にAAAへ昇格後は、72試合で打率.298と出塁率.407、12本塁打、OPS.891を記録した。選球眼に優れた左打者なので、ともに右打者のマーフィーとダーノーから、右打者のマーフィーと左打者のボールドウィンの2人体制になり得る。

 現在、ボールドウィンは、アリゾナ・フォール・リーグでプレーしている。続いて、プレミア12にも出場する予定だ。USAのロースターに名を連ねている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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