アマゾン、時価総額ナンバー1で『GAFA』企業にも異変?(前編)
KNNポール神田です。
■ベゾスの資産は、東京都の予算に匹敵14.8兆円と同等
なんといっても、ジェフ・ベゾスCEOの16%の時価は約1,350億ドルだから単純に@100円としても13兆円の資産となる。ビル・ゲイツ氏の資産9兆円よりも4兆円も高いという。一方、Appleのティム・クックCEOは「90万株」と言われるのでAppleの株価150ドルとして1.35億ドルで約135億円だ。創業者と雇われ社長たちの持ち株資産は桁違いといえるだろう。
ちなみに、東京都の2019年(平成31年度)の予算要求額が『14.8兆円』なので、ドル円が@110円ならば,ジェフ・ベゾスの資産『14.8兆円』と同等ということとなる。
■時価総額ベスト10 新たな『GAFA』時代の到来
本日の時価総額ベスト10を見てみよう。
1位 アマゾン 8,100億ドル(81兆円)
2位 マイクロソフト 7,891億ドル(78兆円)
3位 アップル 7,153億ドル(71兆円)
※4位 Google (5位+9位)7,006億ドル(70兆円)
4位 アリババ 3,805億ドル(38兆円)
5位 アルファベット 3,762億ドル(37兆円)
6位 ジョンソン&ジョンソン 3,485億ドル(34兆円)
7位 フェイスブック 3,424億ドル(34兆円)
8位 JPモルガン・チェース 3,344億ドル(33兆円)
9位 アルファベット 3244億ドル(32兆円)
10位 エクソン・モービル 3,050億ドル(30兆円)
※便宜上ドル円@100で試算
日々、変動する生きているデータとしての時価総額であるが、Google Apple Facebook Amazonの頭文字の『GAFA(ガーファ)企業』に『MA(マイクロソフト)』が返り咲き、また『GAFMA(ガフマ)』と呼ばれるのだろうか?いや、アリババが入り新たに『GAAFMA(ガーフマ)』と呼ばれるのだろうか? いや、中国勢の『BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)』などが今後、GAFAの名前を変えるのかもしれない。
■AppleのiPhone発表から12年目の節目
12年前の本日、2007年1月9日(米国時間)は、『Apple Computer』が 『Apple』と社名から『Computer』の文字を葬り、『iPhone』を発売した日でもある。あれから12年。『iPhone』が発売される前の社会を、想像さえしにくいほどライフスタイルは激変した。それまでの進化は常に、いろんなものを『アドオン』し、いろんなことができるうようになってきた歴史の積み重ねであった。特にエンターテインメントの世界は。レコードがあり、ラジオがあり、テレビがあり、ビデオがあり、カメラがあり、そしてパーソナルコンピュータがあった。『Apple』がもはやコンピュータ会社として決別し、プラットフォーマーを目指した。『iPod』という音楽プレーヤーを生み出してからは、音楽もデジタルデータの一つとして正規で購入できる『iTunes』を生み出し、デジタルミュージックというカテゴリーを音楽を主体としない企業が生まれた。
■『iTunes』は、ロックフェラーの『スタンダードオイル』のビジネスモデル
ジョン・ロックフェラーは、1870年に石油を採掘するのではなく、採れ過ぎて価格が下落する石油を買い占め、それを『精製』し、『スタンダード』で良質な石油を保障することによって莫大な富を築いた。1849年の『ゴールドラッシュ』の頃の、ジーンズを販売したリーバイスや鉄道王のスタンフォード(スタンフォード大学創設者)や金を運んだ『ウエルズファーゴ』のように金を掘らずに金を掘る人のツールやサービスを提供したのが功して大成功を収めてきた。スタンフォード大学はヒューレット・パッカード社を生むきっかけとなり、シリコンバレーのベンチャーの生態系の基礎となった。
AppleがiPodを誕生させる前、声質の劣化を伴わずに圧縮できる『MP3ファイル』で音楽業界は海賊データで溢れていた。そこに立ち上がったのが、Apple社のスティーブ・ジョブズだ。ソニー系音楽レーベル以外のメジャーは『Apple Music Store iTunes』でダウンロードできるようになった。無断で音楽を盗まれるよりは、『音源』さえあれば、ディスクをプレスしたり、ジャケットもいらず、ディストリビューション(流通)も不要という間接コストが一切不要なビジネスが誕生したのだ。これはまさしくジョン・ロックフェラーのスタンダード・オイルの『石油精製ビジネスモデル』と一緒だ。適正に管理された石油は価格が安定し、そして、常に価格決定権はロックフェラーにあった。そう、スティーブ・ジョブズも1曲『0.99ドル』という新たな適正価格を決定したのだった。
■『iPhone』は『キャリア』や『販売店』そして『メーカー』のポジションを変えた
ジョブスの発明は、パーソナルコンピュータや、iPodやiPhoneのハードウェアに注目されがちだが、実は、『iPhone』の一番の功績は、プロダクトの『ブランド品質の維持』にあった。2007年6月29日、アメリカ合衆国での発売時には『iPhone』が購入できるのは『Apple Store』か『AT&T』のショップのみであった。1年後の日本でも『iPhone 3G』が購入できるのは、『Apple Store』か『ソフトバンク』のショップのみであった。他のキャリアは『iPhone』の売上とキャリアの通信契約増を見ながら、苦渋をのむしかなかった。iPhoneは、圧倒的な勢いで成長する。そして、毎年のアップグレードは、自動車メーカーのGMのデュポンの塗装による『モデルチェンジ』による販売方法そのものだった。それと同時に、製造のファブレス化は進化し、AppleはiPhoneの広告は自ら作るが、制作費も放送料金もすべてキャリア持ちというファブレスCMをも実現し、売り場に関しても完全にキャリアや販売店を支配下においた。iPhoneを売るためには、Appleの要求のすべてを飲み込むしかないという有利な条件である。そして、製造もAppleは完全に台湾の鴻海にファブレス化され、メーカーでありながら物を作らず、25%もの純利益を稼げるようになったのだ。そう、年間世界で2億台も売れるiPhoneの部品に採用されると、圧倒的なまでの限界費用スレスレで調達できるようになり、さらなる利益をもたらした。さらに電話業界は、『2年しばり』という購買慣習もモデルチェンジとテクノロジーの進化の原則である、1年半でCPU速度は2倍になるという『ムーアの法則』とシンクロし進化を続けてきた。
100年前の『石油』と同じように、価格決定権を持ち、プラットフォームを築くことによりAppleは時価総額ナンバー1の座を守り続けてきた。
■Appleの減衰期のはじまり
このAppleの破竹の勢いも、韓国のSamsungや中国という巨大なマーケットで成長してきたHuaweiのシェアに奪われていく。これはAppleが新たな市場を創り、Microsoftが市場を飲み込んでいくケースと酷似している。ただ、Googleは、Andoroid OSを提供し、iOSのAppleとはライバル関係でありながらも、iOSにもGmailやMapやカレンダーブラウザーそして『検索エンジン』を提供し、共存共栄で強力なパートナーシップの関係だ。Microsoftが『Windows』でMacintosh OSと競いあいながらも、『Mac版 Office』を一年も早く新製品として投入してきたマーケティングに似ている。ただ、MicrosoftとGoogleが違うのは、GoogleはOSでまったく事業をしていないことだ。Googleはあくまでも『検索』を主とした『広告』がメインの事業だからだ。すべてGoogleは常に『広告』を見せるための場としてのプラットフォームを無償で提供する立場にある。
iPhone発表から12年、筆者はもっと早くAppleの衰退期は訪れると感じていたが、ティム・クックCEOの采配が良かったから、いやティム・クックCEOは『バリューチェーン』の天才だったのだ。ジョブズ亡き後も、iPhoneはモデルチェンジで売れ行きを伸ばしてきた。製品の完成度も高く、2016年発売のiPhone SEは今でも販売されている。古い機種のiPhoneは中古市場でも高値で売買され、こだわりさえなければ古いiPhoneでも十分に使える。それと同時に新たな機種に買い換える側もリセールバリューが高いので、半額で売れば新たな機種も半額で買えるというスキームで購買されてきた。
また、その間、『iPad』のタブレットと『Apple TV』というデバイス、『Apple WATCH』という腕時計というカテゴリーも登場させ一応のカテゴリーを築いたが、iPhoneを支えるプロダクトには成長していない。スマートスピーカーの『Home Pod』は、いまだに日本でも発売されていない。
AppleはCPUのプロセッサ、OS、ソフトウェア、ハードウェア、販売店、Apps、クラウドにいたるまで、完全なる垂直統合の会社だ。とはいえ、アプリのAppsに関しては、AppleのAppsの利用は低い、検索は、Googleで、SNSは、FacebookやLINE、Instatgamで、ECは、amazonや楽天やヤフーショッピングにZOZOや、ヤフオクやメルカリで良い。Appleは使いやすいスマートフォンとしてで十分だ。
確かに最新型のiPhoneであれば、写真やビデオのクオリティは、もはやカメラ専用機を不要としている。しかし、その写真もinstagramやfaebookやLINEで利用する頻度の方が多く、プリントアウトをする機会のほうが少ない。誰もが一眼レフレベルのボケが得られるスマートフォンが欲しいわけではない。いつしか『iPhone 』の価格も10万円を超えていた…。
カメラ等の性能も、セルフィーに特化すると中国製のHUAWEIの製品であれば、iPhoneの半額近い価格で購入できるようになった。音楽も『iTunes』一強時代ではなく、『Apple Music』のサブスクリプションでなくても、『Amazon Prime Music』や『Spotify』の無料、『Netflix』の台頭に『YouTube Music』と続々と新たなサブスクリプションが誕生し、Appleの支配は『iOS』であること以外に差別化が非常にしにくくなっている。
そんな折、中国での販売数の減少の発表が2019年の『Apple Shock』を招いてしまった。
【後編】へ続く…。
アマゾン、時価総額ナンバー1で『GAFA』企業にも異変?(後編)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20190118-00111351/