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5千人vs5千人! 地上最大級合コン「東海コン」の幹事はこの人だ

大宮冬洋フリーライター
「東海コン」のメイン会場にて。恋人候補との出会いを求める男女数千人が集まる

「東海コン」という言葉を初めて聞いたのは、名古屋に住む34歳独身の男友だちからだった。東山動植物園(名古屋市千種区)で行われた5000人規模の合コンで22歳の女子大生と出会い、付き合い始めたという。同性の友だちと2人1組で参加し、見知らぬ素敵な異性との出会いを楽しむ街コン方式らしい。一回りも年下の女性との恋愛よりも5000人という数に驚いた。よくある街コンの規模をはるかに超えている。

一度きりのイベントでの集客ならばわからなくもないが、名古屋を中心とする東海地区では東海コンはもはや恒例行事のようになっているらしい。2012年9月に第1回がポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)で開かれて以来、最大で7000人の参加人数を記録した。来月24日にナガシマスパーランド(三重県桑名市)で開催される第12回は、男女合わせて1万人による出会いイベントを目指すという。

なぜこんなに人気なのか。何千人も集まると不満や混乱が生じないのか。そもそもこの超巨大合コンの幹事はどんな人なのか。運営会社の株式会社AOIにインタビューを依頼すると、担当者の男性から快諾の即レスが来た。

名古屋駅から徒歩5分ほどのところにAOIが入る雑居ビルがある。ドアをノックすると、カジュアルな服装の若々しい男性が現れた。東海コンを一人で仕切り続ける野入栄祐さん(31歳)だ。

――最近は隔月ペースで開催されているようですが、なぜこんなに大規模なのですか。

出会いを活性化するためです。規模が大きくなればなるほど「出会いを求めているけれどなかなか行動しない」層の人にまで情報が届き、気軽に参加してもらえるようになります。イベントの賑わいは規模に比例するのです。人が多いとグッと盛り上がり、ワクワクしますよね。もちろん、参加するお客様が多いほどうちの会社にとっても経済的な見返りが大きくなります。

お客様の満足度を上げるためには、グルメなどの要素に逃げないことも大事です。「真剣に出会いを求めている男女が集結する」というコンセプトは絶対にブレません。

規模を追求しつつ、男女の比率も丁寧に揃えています。以前、競馬場で開催したときに予想よりも女性の参加予定者が少なくて、男性の参加予定者700組に電話をかけて、「次回以降の東海コンへの参加もしくは全額返金」の対応をさせてもらったことがあります。

――東海コンの担当社員は野入さんたった一人というのは驚きですが、当日のスタッフはもっとたくさんいるのですよね。

120名以上の登録スタッフがいます。東海コンの経験者も多く、男女を引き合わすことにかけてはプロですよ。会場内の随所にいて、インカムを付けてスタッフ間で常にやり取りをし、お客様が相手を見つけるお手伝いをしています。スタッフに話しかけさえすれば必ず出会える仕組みができ上がっているのです。

東海コンの成功にはスタッフの能力がとても重要になるので、派遣スタッフなどは使っていません。ボランティアではなく、ちゃんとお給料を渡して責任を持って仕事してもらっています。

――街中の飲食店をハシゴするのではなく、1つの広い会場で行っているのはなぜですか。

第2回の東海コンは名古屋駅前の飲食店40店舗ほどにご協力いただいて街コン形式で開催し、3000人のお客様に来ていただきました。しかし、過去で一番クレームが多かったのがこの回です。比較的行きやすい場所にあるお店にお客様が集中してしまいました。お店の対応能力もまちまちで、空席があるのにお客様の入店をストップしてしまった店もあります。

この反省を生かして、1つの会場にお客様をギュッと集めて、自分たちで運営管理をすることにしたのです。回を重ねるごとにノウハウが蓄積されるので、東海コンには競合がいない状態が続いています。もし真似をしたとしても、この規模の人数に満足していただくことはできないと思います。

――どんなノウハウなのですか。

例えば、「ランダムマッチング」という仕掛けです。入り口受付が済んだ人には目隠しのパネルの脇を歩いていただき、最後に会った異性としばらく一緒に行動してもらいます。その4人2組でメイン会場まで3分ほど歩いて行くことになるので、会場に着くころには知らない人とも話しやすい雰囲気ができ上がっています。何も仕掛けがないと最初のうちは異性に話しかけにくくて気まずい空気になりかねません。それでは時間がもったいないのです。このランダムマッチングはメイン会場内にも設置してあり、並ぶだけで自動的に異性の組と出会うことができます。

男女それぞれ2人1組で参加する。男性は30歳前後、女性は25歳前後の参加者が多い
男女それぞれ2人1組で参加する。男性は30歳前後、女性は25歳前後の参加者が多い

――それは便利ですね! どんな異性とマッチングされるのかがわからないというドキドキ感を楽しめそうです。

イベント前から出会える仕掛けもあります。「マッチングボード」と呼んでいる参加者限定のSNSです。イベント開催の2日前から5日間だけ使えるようになっており、参加料の決済が終わった人にはアカウントが付与され、自分のプロフィールをアップしたり、他の参加者とつながったりすることができます。

参加者の6割ほどの方はマッチングボードを積極的に利用して、「当日は12時にメイン会場のここで待ち合わせましょう」などと約束しているようです。開催日の数時間で何千人の異性と会って話すことは不可能ですが、マッチングボードを使うと出会いの幅を広げることができますよ。

――東海地区以外でも「東海コン」を実施できそうですね。

11月8日には香川県のNEWレオマワールドでの開催が決まっています。男女合わせて2000人規模です。初めて東海エリアの外に出ます。これが成功すればどんなエリアでも開催できる自信がつくでしょう。

――若い客層を増やしたいテーマパークや動物園などは全国各地にあるので、引き合いはますます増えそうですね。話は変わりますが、野入さんご自身のことを教えてください。彼女がいるかいないかも含めて(笑)。

彼女はいません。私自身には出会いが全くないからです(笑)。出身は岐阜で、20代半ばまでは友だちと音楽イベントを企画・運営していました。数千人が集まる野外フェスを開催したこともあり、そのときの経験がいま大いに役立っています。

しかし、若いメンバーだけで運営していたこともあり、あるときメンバーの一人が多額のお金を持ち逃げしてしまいました。そのときに最も迷惑をかけて、なおかつ助けてもらったのが今の会社です。それが縁で入社したのが25歳のときです。

――いい話ですが、「出会いがないので彼女がいない」というセリフがひっかかります。職場である東海コンでスタッフやお客さんと「出会う」のもありじゃないですか?

それはあり得ません。仕事は仕事だからです。朝早くから準備して、がんばって運営して、遅い時間まで片づけをして終わりですよ。確かにかわいい女性のお客さまもいらっしゃいますが、私が気になるのはむしろ消極的な男性だったりします。せっかく参加したのだから出会いを楽しんでほしいのです。

――自分自身には出会いは必要ない、恋人も結婚相手も今は要らない、ということですか?

いえ、めちゃくちゃ必要です(笑)。遊びたい願望はないのでいい人がいたらすぐにでも結婚しますよ。趣味はなくて、会社から徒歩2分の部屋で一人暮らしをしています。休日も何もすることがないのでつい会社に行ってしまいますよ。イベントを開催しているときは、現場のスタッフに任せられる場合でも気になって顔を出しちゃうことが多いです。うちの会社は男性社員が多く、仲もいいので男ばかりで飲みに行っています。出会い、ですか? 合コンに参加し続けていくしかないと思います。親からは「早く結婚しろ」と言われているので……。

東海コンについては前のめりで語りまくるのに、自分自身のことになると急に伏し目がちになる野入さん。ワーカホリック気味に仕事熱心で真面目な人なのだと感じた。

素人が開催する合コンに行くぐらいならば、他社主催の街コンに視察を兼ねて参加すればいいと思うのだが、「東海コンと同じ規模の街コンは存在しない。だから視察先はない」との返事。傲慢になっているわけではない。注目を集めている今のうちに東海コンをさらに改善し、「たくさんの人が素敵な異性に効率的に出会える」仕組みを確立して、全国に広めていきたい――。無駄な視察をしている暇はないのだ。トップランナーは常に孤独なのかもしれない。

東海コン幹事の野入栄祐さん。「私自身にも出会いがほしいです」とつぶやいた
東海コン幹事の野入栄祐さん。「私自身にも出会いがほしいです」とつぶやいた
フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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