Chageと三浦和人(元雅夢)が語る、"名曲”ライヴ「僕らのポプコンエイジ」の魅力
70年代~80年代後半、ヤマハポピュラーソングコンテスト=「ポプコン」は、プロのアーティストデビューへの登龍門として、井上陽水、中島みゆき、小坂明子、長渕剛、八神純子、世良公則&ツイスト、チャゲ&飛鳥、雅夢、クリスタルキング……音楽シーンを牽引するアーティスト達を数多く輩出してきた。「ポプコン」が、若いアマチュアの才能を積極的にフォローアップし、日本の音楽史上に残る名曲の数々を残したその功績は計り知れない。そんな「ポプコン」出身者が一同に会するライヴ『僕らのポプコンエイジ ~Forever Friends, Forever Cocky Pop~』が、2016年からスタートし、徐々にスケールアップしながら、今年も第3回目が、5月5日の神戸公演を皮切りに東京、神奈川、埼玉で行われる。第1回目から出演し、同ライヴでMC役も務めるChageと三浦和人(元雅夢)に、このライヴの魅力について語ってもらった。
「お客さんのキラキラした笑顔を見て、やって良かったと思った」(Chage)
――『僕らのポプコンエイジ』は2016年にスタートし、今年で3回目になりますがChageさんと三浦さんは皆勤賞です。
三浦 この人がこのライヴの言い出しっぺです。
Chage こういうライヴをずっとやりかたかったので、言い続けました。第1回目の時、お客さんの顔を見たら笑顔がキラキラしていて、その当時に戻っているのが伝わってきたので、みんな待っていてくれたんだ、やってよかったと心から思いました。
三浦 色々なイベントがありますが、このポプコンからデビューしていったアーティストが一同に会するという、独特のカラーのイベントは他にないし、今までやらなかった事が不思議なくらい、しっくりきています。お客さんも「そうだよ、ポプコンがあったよ」という感じで気付いて、“戻ってきている”感じもします。
――このライヴには、40代~60代を中心に、その前後の層の普段あまりライヴには足を運ばないお客さんが集まってきています。そういう人たちが「ライヴに行きたい」と思う場を作ってくれています。
Chage そうなんですよ。もうライヴには足を運んでくれないだろうなぁ、と思っていた世代の人たちが、このポプコンの名のもとに、ライヴ会場に戻って来てくれて、それだけでありがたいです。
――アーティストにとっても、お客さんにとっても“いい場所”なんでしょうね。
Chage ポプコンというアイコンがなければ集まらなかったし、それぞれポプコンに出場した年は違いますが、この企画があるから集まってきて、大部屋と呼んでいる楽屋で全員一緒で、話が盛り上がりすぎます(笑)。楽屋の様子を映像化したら、面白いと思います。病院の待合室みたいですよ(笑)。
三浦 毎回、楽屋で笑い過ぎてステージに影響がでないように気を付けています(笑)。近況報告はもちろんですが、やっぱりみなさんいい歳ですから健康の話題が多いです(笑)。オススメのビタミンを教えてもらったり(笑)。
「楽屋もリハもとにかく楽しい。みんなが楽しんでいるその感じを、本番でも出す事ができれば」(Chage)
「アーティスト同士の仲の良さがこのライヴの魅力のひとつ。上質な部活のような感じです」(三浦)
――リハも賑やかそうですね(笑)。
Chage それはもう(笑)。でも全員ベテランで基礎がしっかりしているので、そんなにシャカリキになってやっている感じもなくて、むしろお客さんと同じくらい楽しんでいる感じが、リハからも伝わってきます。その楽しい感じを本番でも出せればいいなと思って。
――前回の横須賀公演(2017年5月)を観させていただいて、それは十分伝わってきました(笑)。
三浦 それがこのライヴの一番の特徴で、アーティスト同士の仲の良さが、ステージ上でのコミュニケーションの取り方をひとつとっても出ているし、いい意味で上質な部活のような感じです(笑)。
Chage 三浦君が各アーティストとのクッションになってくれて、場の空気をほぐしてくれます。
――先ほどChageさんもおっしゃっていましたが、お客さんもアーティストも一瞬にして当時に戻れるというのが、このライヴの空気を温かく、素晴らしいものにしてくれています。
Chage 色々なイベントに出させていただいていますが、このライヴだけはまさに原点回帰の場です。当時はプロを目指していたアマチュアでした。でもそんな場所と時間を共有した仲間が今も集まる事ができるというのが、凄いと思う。
「当時、ポプコンのスタッフに叩き込まれた理論が、今も自分の音楽活動の礎になっている」(三浦)
――三浦さんも「ポプコンは音楽の可能性を教えてくれた場所」とおっしゃっていますが、やはり“同じ釜の飯を食った仲”という感じが強いのでしょうか?
三浦 そうですね。僕は自分では知る事ができなかった可能性を教えてくれた場所で、半分学校のような感覚です。自分の引き出しの少なさも教えてもらい、でも何度もスタッフとやりとりを繰り返しているうちに、納得のいく曲が書けるようになって。そこで得た理論は、今も僕の音楽活動の中での礎になっています。
「アマチュア時代、同じ目標に向かっていた仲間がそれぞれプロになり、切磋琢磨し、今また集まるこのライヴは、ただの同窓会ではない」(Chage)
――その時、全国大会での優勝に向けて、がむしゃらに頑張っていたその熱さがあったからこそ、このライヴもあるという事ですよね。
Chage そうですね。アマチュア時代にひとつの目標に向かって、汗と涙を流した同志がそれぞれがプロになって、切磋琢磨して、今また集まってステージに立っているので、やっぱりこのイベントは特殊だし、ただの同窓会ではないです。今回が3回目で、まだまだ出ていないアーティストもたくさんいるので、もっともっと広がっていくと思う。
――今回も初参戦のアーティストがいますね。
三浦 元アラジンの高原兄、クリスタルキングのムッシュよしざき、伊丹哲也&Side by Sideの伊丹哲也、伊藤敏博等が、今回登場してくれます。僕はポプコンの決戦大会で伊丹哲也に負けました(笑)。リハで彼らの歌を聴いた瞬間「負けた」と思いました(笑)。その大会には杉山清貴君のバンド、きゅうてぃぱんちょすも出ていました。
Chage 「街が泣いてた」(1980年発売の伊丹~のデビュー曲)ならぬ、「雅夢が泣いてた」(笑)。
三浦 泣きました(笑)。その時のゲストアーティストが、チャゲ&飛鳥(当時)でした(笑)。
Chage ポプコンって、地区大会で自分達の実力を認識して、で、本選でそれがまだまだだという事を思い知らされる(笑)。でも俺達なんて、ポプコン出身アーティストの相撲番付表みたいなものを作ったら、下の方ですから(笑)。入賞止まりなので、十両ですよ(笑)。
「お客さん一人ひとりが、それぞれの想い出を抱えてライヴに来てくれるので、イントロを含め、アレンジを変えないで歌いたい」(Chage)
――前回のこのライヴを観て感じたのが、アレンジも原曲に忠実で、まさにイントロであの頃に戻れるという感じでしたね。
三浦 あまり変わっていたら嫌だし、僕も「愛はかげろう」はあのイントロじゃないと歌えないです(笑)。でもあの曲も実はテンポは少し落としていて、それは今はより言葉が大切な時代になっているので、原曲の“間”がないテンポでは早すぎるからです。ただ音像的には変えないようにしています。
Chage お客さん一人ひとりの、その曲に対する思い出が違うので、イントロは絶対に変えてはいけないと思う。だからイントロが流れた瞬間、お客さんの表情が変わるんです。
「それぞれのアーティストのファンも多いけど、ポプコンから生まれた"歌”を聴きにきてくれるお客さんが多い。だから拍手が温かい」(三浦)
――それぞれのアーティストのファンではない人でも、全員が口ずさめる曲が、このライヴでは次々と登場します。
三浦 第1回目の時に感じたのは、お客さんに、誰々のファンだから来ました、という雰囲気がなくて、だから全員への拍手が惜しみないというか、温かいんです。ここも他のイベントとの大きな違いだと思います。ポプコン発信の曲の数々は、本当にきっちりと練られたものが多いです。ちゃんと理論があるし、アレンジもしっかりアプローチしているし、僕達の音楽にリスペクトを持って、当時大人たちがやってくれたという事が、後になってわかりました。
「音楽メディア、聴く環境は変わったけど、ライヴは絶対に変わらない究極のアナログの場所。ライヴをずっと続けているアーティストは強い」(Chage)
――ポプコンは70年代~80年代を代表するアーティストと歌を多く輩出していますが、これまで音楽活動を続けてきたお二人は、最近の音楽はどう捉えていますか?
三浦 音像的に余裕、空間がないものが多いとは思いますが、そういう時代なので、それでいいと思いますが、僕は反面教師として捉え、そこにはいかずに、これまでやってきたものを突きつめようと、より強く思うようになりました。自分は、曲の中に隙間と余裕がないと、聴き手に想いを渡す事ができないタイプなので。
Chage 今の人たちはデジタルしか知らずに育ってきたのに、逆にアナログレコードやカセットテープに興味を持っています。その質感を楽しんでいるし、音楽以外でも「写ルンです」とか、80年代~90年代に流行ったインスタントカメラが流行しているみたいで、結局ないものねだりという感じがしています。そういう意味で、やっぱり時代は回っているんだなと思います。それと、このライヴに出演するアーティストのラインナップを見ると、皆さん長年ライヴをしっかりやってきた方達ばかりです。時代によって、どんなに音楽メディアの形態が変わろうと、ライヴというのは絶対に変わらない究極のアナログの場所なので、そこでずっとやり続けているアーティストは強い。そんなアーティストが集まるこのライヴが、楽しくないわけがない(笑)。ライヴは行くまでが面倒くさいですけど(笑)、でも来てくれたら絶対にいいものを僕達は提供できますので。集大成はやっぱり日本武道館でやりたいですね。「世界歌謡祭」をもう一度で、出られなかった俺を出させて(笑)。武道館に連れてって(笑)。あの時の事がトラウマになっていたので、CHAGE&ASKAとしてはしばらく武道館でライヴをやっていなくて、だから代々木競技場第一体育館がやる事が多かったんです。
三浦 僕は武道館に出る権利を持っていましたが、諸事情があり、お断りしました。いま思うと、なんてもったいないんだと思います(笑)。なので「世界歌謡祭」に出場できなかった人達だけで、武道館でライヴやりたいですね(笑)。
「続けていき、しっかりとした"器"を作り、ポプコン出身アーティストが戻って来れる場所にしたい」(三浦)
――今回、初めての神戸公演もありますが、地方のお客さんもこのライヴをすごく待ってくれていると思います。
三浦 そうなんですよ、よく言われます。そのためには回数を重ねていって、しっかりとした“器”を作っていきたい。まだまだたくさんいる、色々なところで頑張っているポプコン出身アーティストが戻ってくる事ができる、出演できる場所にしたいですね。
Chage いつか全国を回りたいですね。俺達の移動は人数が多くてお金がかかるので、路線バスの旅ですけどね(笑)。