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「箱根駅伝ネタ」で新年のスピーチをする場合、どう話すと上手にまとまるか?

横山信弘経営コラムニスト
第92回箱根駅伝は青山学院大が完全優勝を果たした。(写真:アフロスポーツ)

新年の挨拶には「箱根駅伝」ネタが人気

2016年の仕事はじめがそろそろ近づいています。ほとんどの会社は1月5日(火)からでしょうが、はやければ明日(1月4日)からスタートする会社もあると思います。さて、仕事始めのときは、多くの企業で社長や、組織の長による新年の挨拶があるもの。新しい年を迎えるにあたって意気込みや訓示が社長から述べられることにより、社員一同、気を引き締めることでしょう。ところで、年頭のスピーチで引用される最も人気の高いネタが「箱根駅伝」。それはどうしてなのか? 本日は、まず最初にその理由を探ってみたいと思います。

スピーチネタとして人気が高い理由は、何と言っても「箱根駅伝」そのものが人気の高いスポーツイベントであることが第一に挙げられます。歴代視聴率を見ても、1993年の第69回大会以降、往路・復路ともに視聴率「25%」を下回ることが一度もありません。昨年(2015年、第91回大会)の視聴率は、年間ランキングで、第65回NHK紅白歌合戦に次ぐ第2位(復路)、第3位(往路)となっており、正月番組どころか、すべてのテレビ番組の中でも突出した人気を誇っています。多くの人が目にしたであろうTV番組を、スピーチの題材に選ぶのは、安全な選択と言えます。

「箱根駅伝」がドラマチックな理由

次に、「箱根駅伝」が極めてドラマ性の強いスポーツであることも大きな要因として挙げられます。今年は青山学院大が往路から力を見せつけ、復路も独走してしまうチームが出てくると、結果が予想できてしまいます。プロ野球のような「逆転満塁ホームラン」に似た大番狂わせが起こりづらい競技ですので、普通なら途中で関心が薄れてしまうもの。にもかかわらず最後まで視聴率が落ちないのは、「区間新記録」「シード権」「繰上げスタート」といった独特のルールがあるからです。

特に「繰上げスタート」は、私たち視聴者にとって非情かつ理不尽さを感じるルールにも見えます。今年は神奈川大学が「あと5秒」というところで間に合わず、10区から繰り上げスタートになってしまいました。しかしこのルールこそが「襷(たすき)を繋ぐ」という名セリフを生み出し、襷(たすき)を繋ごうとするランナーを力強く応援したいという心理を働かせるのです。

社長が訴えたいのは「チームワーク」

「繰上げスタート」のルールがあることで、見た目の順位と本当の順位がマッチしなくなります。そのため最後の最後まで「シード権争い」の行方がわからなくなり、観る者をくぎ付けにします。シンプルなルールが互いに絡み合い、複雑なドラマを創出します。優勝したい。金栗杯(MVP)を取りたい。区間記録を目指したい。シード権を獲得したい。襷(たすき)を繋げたい……。このような思惑が交錯して大会を盛り上げます。そして何より、そこにあるのは理想形に近いチームワーク。出場するランナーや監督のみならず、給水を手渡しでする部員を含め、出場できなかった人たちとのチームワークがあるからこそ観る者は心を打たれます。

社長や組織の長が、新年の挨拶をする際に「箱根駅伝」をネタとして選んだ場合は、第一にこの「チームワークの大切さ」を訴えたらよいでしょう。新しい年にどんなドラマがあるかはわからない、想定外のことも、不条理なこともあるだろう、それでも組織一丸となって乗り越えていこう、襷(たすき)が途切れることなく、力を合わせて繋いでいこう――。このようなメッセージを新年の挨拶に込めると、ほどよくまとまるに違いありません。ご参考まで。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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