Yahoo!ニュース

国際宇宙ステーションの補給船にトラブル発生、シグナスはエンジンを正常に動かしISSまで到達できるか

拡張型シグナス補給船 出典:Wikipedia

8月4日、国際宇宙ステーションへの物資補給に向け、アメリカの無人宇宙船「シグナス」がファルコン9ロケットによって打ち上げられました。しかし、ロケットから分離後にトラブルが発生している状況です。本記事では、不具合の詳細をはじめ、シグナスはどんな補給船なのかについても解説していきます。

毎週土曜21:00~宇宙ニュース配信中!!

■エンジンに不具合発生?シグナスはISSにたどり着けるのか

Demo-2ミッションのファルコン9打ち上げの様子 出典:Wikipedia
Demo-2ミッションのファルコン9打ち上げの様子 出典:Wikipedia

ファルコン9により打ち上げられたシグナスは、ロケット分離後に宇宙船自身のエンジンでISSへ向かうための軌道へのコントロールを行う必要があります。しかし、シグナスは最初のエンジン燃焼に失敗してしまい、新たに計画された燃焼も中止となる事態となっています。現時点では、エンジン自体に問題がある兆候は見られていないとのことです。推測の段階を出ませんが、運用ソフトウェアなどの問題などが考えられるかもしれません。

シグナスは、3720kgの貨物を8月6日にISSへ届ける予定でした。現時点では、軌道上で不具合は発生していますが到達目標時期に変更はないとのことです。無事にトラブルが解消され、物資が宇宙飛行士まで届いて欲しいですね。

■無人補給船「シグナス」はどんな宇宙機?

シグナス標準型 出典:Wikipedia
シグナス標準型 出典:Wikipedia

シグナスは、2013年に初めてISSへの物資補給に成功した無人宇宙船です。標準型で2トン、拡張型で2.7トンの貨物を国際宇宙ステーションに運ぶことができます。オービタル・サイエンシズ社により開発されました。

シグナスの大きな特徴は、既存の技術を組み合わせて開発された点です。これにより、低コストで信頼性の高い補給機を実現しました。物資を収納するスペースは、スペースシャトルで使われていた技術が流用されています。また、太陽電池やバッテリー、エンジンなどが搭載されている衛星本体部分は、静止衛星で使われていた技術が使われています。

そして、実はシグナスには日本の技術も多く使われています。まず、エンジンはJAXAの技術を基に開発された世界最高性能の推進装置が搭載されています。更に、バッテリーも日本製のリチウムイオン電池が採用されているのです。

ISSとドッキングするシグナス 出典:Wikipedia
ISSとドッキングするシグナス 出典:Wikipedia

ISSとのドッキング時や離脱時には、日本の宇宙ステーション補給機「HTV(コウノトリ)」と同様、ロボットアームを使います。このとき、高精度に機体の姿勢制御を行わなければならないのですが、その際に使用する「近傍通信システム」も日本製のHTVと同じものが搭載されています。ISS側も日本の宇宙ステーション実験棟「きぼう」に搭載されているものと同じ装置を使うため、シグナスの運用時にはJAXAもリアルタイムで監視・運用をして支援しているのです。シグナスは国際協力の上に実現した宇宙船なのですね。

【関連動画】

【関連記事】

スペースXがロケット打ち上げ失敗 300回以上連続成功していたファルコン9に何が起こったのか?

欧州の新型ロケット、軌道上で不具合発生 「アリアン6」打ち上げに成功するもエンジンを再点火できず

宇宙ニュースを毎日お届け!YouTubeでは毎週土曜21:00~宇宙情報をLIVE配信中! ロケット打ち上げ計画や惑星探査機・科学情報を、初心者の方にも分かりやすく解説します!皆さんからの気になる質問や熱いコメントもお待ちしています!

スペースチャンネルの最近の記事