なぜ倒れなかったのか 井上尚弥が8ラウンドTKOも反省「メンタルやられた」
14日、両国国技館でボクシングWBAスーパー&IBF世界バンタム級タイトルマッチが行われ、統一王者の井上尚弥(28=大橋)が、挑戦者のWBA10位&IBF5位アラン・ディパエン(30=タイ)と戦った。
試合の展開
約2年ぶりの国内世界戦は、大観衆の中行われた。
試合開始のゴングが鳴ると、お互い探りながら様子を見る。会場も静まり返り1分間はお互いに見合っていた。
2ラウンドになると井上がジャブを起点に攻め始める。ディパエンもパンチを振るうが、井上のステップが速く当たらない。
井上がヒットアンドアウェイで、主導権を握っていた。
次第にディパエンの顔が赤く染まり井上の独壇場となる。ストレート、ボディとパンチを繰り出しダメージを蓄積させていく。
試合前は早いラウンドで決着がつくと予想された。しかし、ディパエンは打たれ強く、4ラウンドには井上が左アッパーの三連打で畳み掛けるが、驚異的な粘りを見せた。
中盤以降は、サンドバッグ状態になったディパエン。
8ラウンドには井上がパンチを集め、返しの左でダウンを奪った。なんとか立ち上がったディパエンだが、井上が追撃したところでレフリーが試合をストップ。
井上の8ラウンドKO勝利で、WBAスーパー&IBFのタイトル防衛に成功した。
なぜ倒れなかったのか
見事防衛に成功した井上。試合後の勝利者インタビューでは「戦前の予想、期待を遥かに下回る試合をしてしまい、大変申し訳ありませんでした」と謝罪を口にし、頭を下げた。
対戦相手のアラン・ディパエンは、ムエタイで60戦の経験があり、パンチより3倍強いと言われるキックを体に浴び続けてきた。
井上尚弥が試合中に「メンタルをやられた」と話すほど打たれ強い選手だった。
井上が攻めても前半は効いた素振りも見せなかったが、確実にダメージは蓄積される。最後はたまらずダウンした。
井上も試合後のインタビューで「手応えあったんですけど、やってる最中「これ効いているのか?」っていうくらい、表情も出さず、やってるこっちがメンタルやられそうで、「あれ、俺パンチないのかな?」と感じてしまうくらいタフでしたね」と話している。
相手が積極的に攻撃してくれば、その分隙が生まれるが、今回のディパエンのようなディフェンシブな相手を崩すのは難しい。
特にボクシングの場合は、強いパンチより想定してないパンチで倒れる。守りを固められてしまうと、いくら攻めてもなかなか倒れない。
一方的な試合内容ではあったが、ディパエンへの評価も上がっただろう。
観に来たファンとしては、井上の試合が長く見られて満足だったのではないだろうか。
井上も「この2年ぶりの日本のリングで楽しく戦えてよかったと思います」と話した。
4団体統一戦へか階級変更か
現在バンタム級には以下の王者たちが君臨している。
WBC王者のドネアは、12日に行われた世界戦で暫定王者のレイマート・ガバリョ(フィリピン)に4ラウンド、ボディへの一撃KOで仕留めている。
WBO王者のカシメロは、11日に同級1位のポール・バトラー(イギリス)との試合が予定されていたが、体調不良で試合をキャンセルし、中止となった。
4団体統一戦を狙う井上の次なるターゲットはドネアだろう。
「ドネアの試合も見ていました。スーパーバンタム級での戦いも視野に入れて、色々とこれから話し合っていきたいと思います」
ドネアも、井上との対戦を望んでいるため再戦の実現は大いにあり得る。
しかし、希望の相手との対戦が実現しない場合は、階級変更も示唆した。
「来年の春は、ビッグマッチを大橋会長に組んでいただくつもりなので、また更に盛り上がる試合を組んでもらい、ファンの皆さんが見たいようなカードをやっていきたいと思います。来年また期待して応援してください」
階級変更か統一戦か、2022年も井上尚弥に注目したい。