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ロドリゴとファティの活躍。リーガエスパニョーラに吹き込む「新風」

森田泰史スポーツライター
ドリブルを仕掛けるアンス・ファティ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

「若さ」というのは、ひとつの価値なのかもしれない。リーガエスパニョーラに、新風が吹いている。今季、バルセロナでアンス・ファティが16歳298日でトップデビューを飾った。

勢いをそのままに、アンス・ファティは16歳304日で初得点を記録。クラブ史上最年少得点記録保持者となった。一方、レアル・マドリーでは、ロドリゴ・ゴエスが爆発の時を迎えた。今夏、移籍金4500万ユーロ(約54億円)でマドリーに加入したブラジルの至宝は、チャンピオンズリーグ・グループステージ第4節ガラタサライ戦(6-0)で3得点1アシスト。その試合で開始から6分14秒で2得点を挙げ、チャンピオンズリーグの記録を更新した。

■19歳の選手に破格の値段

アトレティコ・マドリーは、この夏に移籍金1億2600万ユーロ(約150億円)を支払い、ジョアン・フェリックスを獲得した。アントワーヌ・グリーズマンの抜けた穴を、19歳のアタッカーの加入で埋めようとした。それだけではない。アトレティコは今季開幕前に複数のベテランプレーヤーが去って、世代交代の時期に差し掛かった。守備陣の平均年俸は30.7歳から25.7歳になった。

トータルフットボールで一時代を築いたヨハン・クライフは17歳で、ブラジルの「王様」ペレは15歳でトップデビューを果たしている。1958年のスウェーデン・ワールドカップで優勝を経験したペレだが、その当時17歳だった。ペレはキャリアを通じて1363試合に出場して1284得点を記録。金字塔を打ち立てた。

現在、リーガで5位に位置しているレアル・ソシエダを牽引しているのは、マルティン・ウーデゴールだ。彼は16歳でレアル・マドリーと契約したものの、スター選手が揃うチームで出場機会を得るのは難しかった。ヘーレンフェーン、フィテッセを経て、ソシエダで輝きを放っている。

■貼られるラベルとの戦い

若い選手の存在はチームに活力を与える。だが、成功が保証されているわけではない。バルセロナのカンテラーノであるボージャン・クルキッチは、育成年代で800ゴール以上を挙げたといわれている。そしてフランク・ライカールト当時監督の下、17歳19日でトップデビューを飾った。クラブ史上3番目の記録だ。

「有名になんて、なりたくなかった。一時は、デパートにさえ行けなかったんだ。バルセロナで下部組織でプレーしていた頃、周囲からの嫉妬を感じることがあった。プロになれば、それは変わる。そう自分に言い聞かせていたけど...。実際には、レベルが高くなればなるほど、エゴを剥き出しにしなければいけなかった」とは、ボージャンの弁だ。

「若い頃から、バルセロナでたくさんゴールを決めてきた。すると、ラベルが貼られるようになる。僕の場合は、『新たなメッシ』というラベルだ。その期待に応えられなければ、失敗したと言われてしまう」

偉大な選手と比較され、アイドルのように持て囃(はや)されたら、自分を保つのは難しい。ファティやロドリゴたちの挑戦は始まったばかり。彼らは輝かしいキャリアを描けるのかーーそれは時間が教えてくれるはずだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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