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出走馬を間違えて失格!オリンピックと縁深い名トレーナーがまさかの凡ミス

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
2018年、英ロイヤルアスコット開催で優勝経験もあるジェシカ・ハリントン師(左)(写真:ロイター/アフロ)

2勝の3歳馬が2歳馬と間違えて出走し、失格

 27日、アイルランドのゴールウェイ競馬場で2歳戦に3歳馬が間違えて出走して1着に入線したが失格、という珍事件が起きた。

 現地時間午後5時10分発走の2レース。このレースでジェシカ・ハリントン厩舎の2歳牝馬"アリザリン"がデビューした。

 このレースで"アリザリン"道中は好位につけ、直線で馬群を割って抜け出して直線3番手からレースを進め、後続に2馬身ほど差をつけ1着でゴール板を駆け抜けた。

 しかし、実際に走っていたのは、なんと3歳牝馬でキャリア9戦2勝のオーロラプリンセス。本来なら彼女は5レースのハンデキャップ競走に出走する予定だったが、この件が発覚したため、本来走るはずだったレースは失格となった。

 英レーシングポストの報道によると、レース後に馬がパドックに引き揚げてくる際、埋め込まれたマイクロチップをスキャンして馬の身元を確認した後に勝者と確定するが、そこで読み取られたデータが出走した馬のものではなかったことから事件が判明した。

■問題の7月27日、ゴールウェイ競馬場2レース。2歳戦のレースにアリザリンとして出走したはずの馬は、実は3歳で2勝のキャリアを持つオーロラプリンセスだった。

レース後、マイクロチップで識別確認し事件が判明

 アリザリンとオーロラプリンセスはともジェシカ・ハリントン調教師の管理馬で、両馬とも27日のレースに出走するために競馬場へ入った。その際、各馬の体内に埋め込まれたマイクロチップによって識別されていたが、次にマイクロチップを確認するタイミングはレースを走り終えて勝利を確認する直前。レースを走る前にマイクロチップで本当に出走馬かどうかを確認する手順はなかった。

 レースを運営するIHRBの判断で、アリザリンが1位入線したレースは2着入線のトゥインクルが繰り上がって優勝したが、この事件は発走前にもマイクロチップで個体識別を再確認する手順を加えることで未然に防げたのではないか。

 競馬場到着からレースまでのあいだ、多くの関係者が目視でその馬を確認したであろうが、このようなかたちで珍事件になってしまったことが残念だ。

 なお、このオペレーションミスはハリントン師が直接行ったものではないが、レースまでのあいだに目視で確認できる立場にいたことは間違いない。管理者である責任を表明し「人的ミス」としながらも、「馬体の同じような場所に白い模様があるが、2頭とも同じサイズでとてもよく似ている」と話しているという。

ジェシカ・ハリントン師はオリンピックと縁の深い人物

 ジェシカ・ハリントン師は74歳のベテラン女性トレーナー。ロンドンに生まれ、父はイギリスのポロの選手で1936年のベルリンオリンピックで銀メダルを獲得している。自身も2回オリンピック選手に選出されたが、1980年のモスクワオリンピックはボイコットのため、1984年ロサンゼルスオリンピックは自馬の不調により出場は叶わなかった。

 いま、オリンピックが開催しているこのタイミングでまたしても自らの直接の行動ではないかたちで難儀を背負うことになったのは何とも皮肉である。

 彼女は競走馬の調教師に転身したのは1989年で、主にアイルランド、イギリス、フランスに参戦し、障害・平地ともに成功をおさめている。クラシックレースを優勝したこともある名トレーナーだ。

 今後、二度とこのような珍事が起きないことを祈りたい。

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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