Yahoo!ニュース

レンジャーズでWS優勝を惜しくも逃したスラッガーが、レンジャーズ初優勝の直後に引退を表明する

宇根夏樹ベースボール・ライター
ネルソン・クルーズ OCT 27, 2011(写真:ロイター/アフロ)

 11月2日、ネルソン・クルーズは、アダム・ジョーンズがホストを務めるポッドキャストの番組に出演し、ドミニカン・ウィンター・リーグに出場後、選手生活にピリオドを打つつもりでいることを明かした。7月1日に43歳の誕生日を迎え、その数日後にサンディエゴ・パドレスから解雇された後は、どの球団にも在籍していなかった。

 ジョーンズは、オリックス・バファローズでもプレーした、あのAJだ。ジョーンズとクルーズは、2014年にボルティモア・オリオールズでともにプレーした。この年、クルーズは、本塁打王のタイトルを獲得している。通算本塁打は464本だ。ジョーンズの通算本塁打は282本なので、オリックス時代の16本と合わせても、300本に少し足りない。

 ジョーンズは、2021年に日本シリーズでプレーしたが、ワールドシリーズには一度も出場していない。クルーズは、テキサス・レンジャーズ時代に2度出場した。だが、2010年も2011年も、優勝したのは相手のチームだった。

 2010年は、現レンジャーズ監督のブルース・ボウチーが指揮を執るサンフランシスコ・ジャイアンツが、4勝1敗でシリーズを制した。クルーズは、第5戦の7回裏にホームランを打ち、点差を3点から2点に縮めたが、9回裏の2死から空振り三振を喫し、シリーズ最後の打者となった。

 2011年のレンジャーズは、セントルイス・カーディナルスに3勝4敗。先に王手をかけて臨んだ第6戦は、優勝まで1アウトに2度迫った。その1度目は、2点リードの9回裏、2死一、二塁だ。三塁打となったデビッド・フリーズの打球を、ライトを守るクルーズが捕っていれば、レンジャーズの初優勝は、今年ではなく12年前だった。

 それについては、こちらでも書いた。

「ポストシーズンのホームランを4チームで打った選手のうち、ワールドシリーズ優勝を経験していないのは…」

 ちなみに、クルーズは、2011年のワールドシリーズ第6戦も、ホームランを打っている。ポストシーズンの通算本塁打は、歴代10位タイの18本。トップ10にランクインしている13人のうち、ワールドシリーズ優勝が皆無は、クルーズだけだ。

 なお、クルーズもジョーンズも、WBC優勝は経験している。クルーズは2013年、ジョーンズは2017年の優勝メンバーだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事