新築分譲マンションで単身者用住戸の比率高まる。価格は?現実的な人気立地は?
4月9日、不動産経済研究所が「首都圏・近畿圏コンパクトマンション(専有面積30平米以上50平米未満)供給動向」を発表。2023年、新築分譲マンションで小さめの住戸が増えていることがわかった。
同調査によると、コンパクトマンションの比率は昨年、首都圏で発売された新築分譲マンション全体の13.5パーセントになった。
分譲マンション3LDKの広さは狭くても60平米以上。2LDKは50平米以上だ。そのため、コンパクトマンションと定義される「専有面積30平米以上50平米未満」の間取りは1K(ワンルームタイプを含む)〜1LDKとなる。主に単身者が購入する住戸である。
ちなみに、「30平米以上」となると、首都圏の場合、投資用ワンルームはまず該当しない。首都圏で投資用、つまり購入した人が賃貸に出して家賃を稼ぐ目的でつくられるワンルームはもう少し狭い。販売価格を抑えるため、ワンルームの広さは26平米以下になるのが普通で、20平米に満たないものもある。20平米は約6坪なので全体で12畳大の住戸である。
これに対し、30平米ならば約9坪で18畳大の広さがある。それならば、ワンルームでもクローゼットや下足入れなどの収納が設けられ、ベッドの横に小さなダイニングテーブルとソファを置くこともできる。だから、「多少のゆとりをもって暮らすことができる住戸」となる。
従来、分譲マンションの間取りは3LDKを中心にしたファミリー向けの間取りが大半を占めていた。しかし、近年は世帯構成が多様化したことに合わせて、単身者向けに工夫を凝らした間取りが増加。コンパクトマンションの比率が高まる状況が生まれているのだ。
コンパクトマンションが増えたのは2000年以降
首都圏でコンパクトな間取りが増え始めたのは「都心マンションブーム」が起きた2000年頃から。といっても、比率は小さく、2000年の東京23区でも比率は2.6パーセントに過ぎなかった(東京23区以外ではほとんどゼロだった)。
23区内でコンパクトマンションの比率が初めて10パーセントを超えたのは2016年のこと。その頃から首都圏では23区の外側エリアでもコンパクトマンションが増え始め、2020年には首都圏全体においてコンパクトマンションの比率が初めて10パーセントを超えて12.8パーセントとなった。
そして、昨年2023年に23区内では15.7パーセント、首都圏全体で13.5パーセントがコンパクトマンションとなり、首都圏全体では2000年以降最も高い比率となった。
では、単身者向けコンパクトマンションは、今、新築でどのくらいの価格で販売されているのか。
残念ながら、必ずしも「狭いから大幅に安い」というわけではなかった。
今、4000万円までの予算でコンパクトマンションを探すと……
不動産経済研究所の発表によると、2023年、首都圏全体でのコンパクトマンション平均価格は5111万円だった。23区内に絞れば、さらに高く平均で6173万円。10年前の2013年、23区内で販売されたコンパクトマンションの平均価格は3766万円だったので、10年で1.6倍になったことになる。
女性の単身者がマンションを買おうとする場合、「便利な場所で、3000万円以内の新築マンション」を希望することが多い。23区内であれば予算が上がるが「できれば4000万円以内」となる。その希望を実現できたのは、2014年(23区内の平均価格3983万円)までだった。
では、不動産経済研究所が発表した昨年のデータから、コンパクトマンションが4000万円までの予算で購入可能な場所はどこか調べてみた。
首都圏の場合、東京都下は平均4064万円なので、わずかにオーバー。神奈川県も4101万円で、予算オーバーだ。その点、埼玉県ならば平均3875万円、千葉県も平均3547万円なので、予算内に収まる。
そのため、首都圏ではここ数年、埼玉県や千葉県で、短期間に完売するコンパクトマンションが目立ち始めた。ファミリー向けマンションと同様、単身者用コンパクトマンションの人気立地も都心から郊外に移る傾向が出ているわけだ。
近畿圏では、もう一段安く購入可能
コンパクトマンションといえど、新築ならば4000万円以上の物件が目立つ首都圏に対し、もう一段安い価格の物件をみつけやすいのは近畿圏。昨年近畿圏全域で新規発売されたコンパクトマンションの平均価格は3651万円だった。
地域別にみると、大阪府が平均3591万円、兵庫県平均3851万円、京都府平均3956万円、奈良県平均2786万円、滋賀県3080万円だった。
大阪府の平均価格が兵庫県より低くなっているのは、近畿圏のデータでは投資用ワンルームを含んでいるからだろう(首都圏のデータは投資用ワンルームを除いている)。大阪の中心部には投資用ワンルームマンションが多く、それが大阪府のコンパクトマンション平均価格を下げていると考えられる。
ちなみに、近畿圏のコンパクトマンションは首都圏ほど多くない。それでも、コンパクトマンションの比率は年々高まっており、2013年に新築分譲マンション全体のうち3.6パーセントに過ぎなかったのが、2023年は8.1パーセントまで上昇している。
近畿園においてコンパクトマンションが多く販売されている場所は、本町駅や心斎橋駅がある大阪市中央区、御堂筋の西側に位置する大阪市西区、梅田駅エリアに隣接する大阪市福島区が上位となった。
近畿圏のコンパクトマンションは、今も都心立地のものが多い。首都圏に住む単身者からしたら、うらやましい状況が続いていることになる。