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「KinKi Kids」の傑作新曲をイヤホンではなくスピーカーで聴くべき理由【月刊レコード大賞】

スージー鈴木音楽評論家、ラジオDJ、小説家
(写真:イメージマート)

 KinKi Kidsの新曲『The Story of Us』について、ここから、いろいろと書いていきますが、一言でいえば「こういう曲がめっちゃ売れてくれると日本の音楽シーンが変わる、いい方角に」と思わせる曲。

 文化放送の推し曲「プラスチューン」として取り上げられていて、一目惚れ、ならぬ一耳惚れ。KinKi Kidsということで、サブスクに乗らないことを見越して、大学時代から行きつけの新宿区早稲田にあるレコード屋さん「サウンドショップ ニッポー」に向かう。

 発売前日のことだったのですが、すでに「フラゲ」した人が多かったらしく、「朝から売れてくれてうれしい」という女性店主の弁。

 サブスク・ヘビーユーザーとしては、すべての曲がサブスクに乗ってほしいと思うものの、それでもこういう店主の声を聞くと、ちょっとうれしくなるのも、正直なところ。

 そして「CDで買ってよかった」とも思ったのです。「サブスク×スマホ×イヤホン」で聴く音ではなく「CD×CDプレイヤー×スピーカー」で、空気を震わせて聴く音だったから。

 雄大、壮大、そして肯定的な音――。

 繊細なアコースティックピアノに始まり、リズムが乗ってきて、流麗なストリングスが重なり、さらに分厚いコーラスで決まり。ドーン!ドーン!という感じでめっちゃ盛り上がる(アホみたいな言い方で恐縮)。

 こんなにドーン!と気持ちいい音、久々に聴いたと思ったのです。いや別に、最近のJポップの音がチマチマしているとは言ってませんが(いや、ちょっと言ってる)。

 まずはディズニーの映画音楽を想起しましたが、私世代的にさらには、懐かしのドリーム・アカデミー『ライフ・イン・ア・ノーザン・タウン』(85年)や、リマール『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』(84年)を思い出したのです。そう、80年代中期MTVから流れてきた、あれ系の気持ちいい音の流れをくむ。

 何と、作曲はKinKi Kids自身。さすがタクロー(吉田拓郎)とタツロー(山下達郎)に愛された人たちです。音楽好きが作った音という匂いがプンプンします。繰り返しますが、「こういう曲がめっちゃ売れてくれると日本の音楽シーンが変わる、いい方角に」と強く思います。

 この1月は豊作で、もう1曲。一昨年あたりからのOfficial髭男dismはもうゾーンに入っています。彼らのシングル曲にハズレなし。『ホワイトノイズ』も実に良作。特に2分41秒からのダメ押し感には、もう本当に恐れ入りました。

 キンキとヒゲダン、この2曲に通じるのは、理屈抜きで気持ちいいサウンドだということです。だから騙されたと思って、スピーカーで、できれば大音量で、空気を震わせて聴くことをおすすめします。2023年は、こんな2曲から始まりました。

  • 『The Story of Us』/作詞・作曲:KinKi Kids
  • 『ライフ・イン・ア・ノーザン・タウン』/作詞・作曲:Gilbert Gabriel・Nick Laird-clowes
  • 『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』/作詞・作曲:Giorgio Moroder・Keith Forsey
  • 『ホワイトノイズ』/作詞・作曲:藤原聡
音楽評論家、ラジオDJ、小説家

音楽評論家。ラジオDJ、小説家。1966年大阪府東大阪市生まれ。BS12『ザ・カセットテープ・ミュージック』、bayfm『9の音粋』月曜日に出演中。主な著書に『幸福な退職』『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』(ともに彩流社)、『恋するラジオ』(ブックマン社)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。東洋経済オンライン、東京スポーツなどで連載中。2023年12月12日に新刊『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)発売。

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