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酒さ(赤ら顔)に効く治療薬と治療法|皮膚科医が選ぶベスト治療2024

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
Ideogramにて筆者作成

【酒さとは?赤ら顔の原因となる慢性炎症性皮膚疾患】

酒さは、顔面に持続的な赤みや血管拡張、吹き出物などが現れる慢性の炎症性皮膚疾患です。

世界の人口の約5%が罹患している比較的一般的な皮膚疾患で、日本でも患者数が増加傾向にあります。

主な症状として、以下の4つが特徴的です:

・顔が赤くなる(紅潮)

・持続的な赤み(紅斑)

・にきびのような吹き出物

・細い血管が浮き出る(毛細血管拡張)

また、患者さんの約58%で目の症状を伴うことも明らかになっています。

【最新の治療薬と治療効果】

近年の研究で、様々な治療薬の効果が科学的に証明されてきました。

▼外用薬

特に効果が高かった外用薬を、効果の高い順に紹介します:

1. スルファセタミド10%+硫黄5%配合薬

・赤みの改善率:83.0%

・抗菌作用と皮脂分泌抑制効果を併せ持つ

・主な副作用:軽度の乾燥、かゆみ

2. プラジカンテル3%

・赤みの改善率:71.9%

・抗炎症作用が特徴

・免疫系への作用で症状を改善

3. メトロニダゾール0.75%

・赤みの改善率:78.5%

・抗炎症作用と抗菌作用を持つ

・長年の使用実績がある信頼性の高い薬剤

4. B244(ニトロソモナス・ユートロファ)

・赤みの改善率:67.1%

・善玉菌の一種を利用した新世代の治療薬

・自然な作用機序が特徴

▼内服薬

内服薬では、以下の薬剤が効果を示しています:

1. パロキセチン

・改善率:42.9%

・血管収縮作用と抗炎症作用

・主な副作用:眠気、食欲低下など

【治療の実際と日常生活での注意点】

酒さの治療では、症状の程度や種類に応じて適切な治療法を選択することが重要です。

日本人の場合、欧米人と比べて症状が比較的軽い傾向にあるため、まずは副作用の少ない外用薬による治療から開始し、効果不十分な場合に内服薬を追加することをお勧めします。

治療効果を最大限に引き出すために、以下の生活習慣の改善も重要です:

▼環境因子への対策

・強い紫外線を避ける(日焼け止めの使用)

・極端な温度変化を避ける

・風への露出を最小限に

▼スキンケア

・刺激の少ない保湿剤を使用

・優しい洗顔料を選ぶ

・こすり過ぎない

▼生活習慣

・熱い飲み物は冷ましてから

・辛い食べ物を控えめに

・適度な運動でストレス管理

・十分な睡眠

治療開始から効果が現れるまでの平均期間は約8週間です。すぐに効果が現れないからと諦めずに、医師と相談しながら継続的な治療を行うことが大切です。

また、最近の研究では、酒さが患者さんの心理面に大きな影響を与えることも明らかになっています。顔の赤みによる社会不安や自尊心の低下を感じる方も少なくありません。このような心理的な影響にも配慮した総合的なケアが求められます。

参考文献:

Hua, N. J., et al. (2024). Efficacy of Treatments in Reducing Facial Erythema in Rosacea: A Systematic Review. Journal of Cutaneous Medicine and Surgery, 1-8. doi:10.1177/12034754241287546

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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