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「11ドルの男」と呼ばれる11戦全勝9KOのスーパーライト級期待の星

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Stephanie Trapp/SHOWTIME

 高校時代、フットボールの花形選手として脚光を浴びたカート・スコービー(27)。最終学年次にはランニングバックとして、2206ヤード、35タッチダウンを記録し、複数のNCAAディビジョン1に属する大学から誘いを受けた。

 刑法を専攻しながらフットボールに賭けようと入学したフレゾノ大学では思うように事が運ばなかったが、ロスアンジェルスの南東に建つアズサパシフィック大に転校すると、輝きを取り戻す。2015年から2017年の間に 2703ヤード、16タッチダウンをマークした。

 その後、NFL選手を夢見て4チームのテストに挑んだものの契約には至らなかった。

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 そんなスコービーが、パンデミックの最中にプロボクサーを目指し、片道11ドルの格安チケットを握りしめて空路ニューヨークに渡る。辿り着いたのは、数々の名チャンプが汗を流し、映画『ミリオンダラーベイビー』の舞台となったグリーソンジムだった。

 アスリートとしての確かな才能はボクシングにも生かされ、ジムのスタッフたちはスコービーを「11ドルマン」と呼ぶようになる。2020年9月26日のデビュー以来、10連勝。4回戦と6回戦で一度ずつ判定まで縺れたが、8度のKO勝ちで期待を集めた。

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 このほど、7勝(4KO)無敗1分けのオーストラリア人サウスポー、ジョン・マンヌと対戦。

 負けなし同士のファイトとして注目されたが、第2ラウンド開始早々、スコービーは、右ストレートでマンヌからダウンを奪う。その後も、得意の右を再三ヒットし、マンヌを計4度沈めて11勝目を挙げた。

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 フットボーラー時代は215パウンドと、ヘビー級の体を誇ったスコービーだが現在はスーパーライト級まで体を絞った。身長175cmのハードヒッターは、話題性も十分である。

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 試合後、スコービーは語った。

 「ゲームプランは常にジャブを出すことだった。自分を支えてくれる強いチームと確固たる信念があれば、ボクシング界で道が開けるだろう。故郷に帰って少し反省し、自分のボクシングを探求したい。それから次の対戦相手を探すよ」

 どこまで階段を上れるか。面白い存在だ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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