アニメーション作家の松本力を応援する展示会が開かれているのは何故か?
吉祥寺のArt Center Ongoingで、「松本力さんを応援する展示会」が始まった。
松本力とは、映像クリエーターにして、アニメーション作家である。映像クリエーターとはいっても、最新の3DだのVRだのとはまったく無縁なのが松本力の特徴だ。たとえば手製の映像装置だったり、コツコツとつくった手描きのモノクロ・アニメーションだったり、素朴でユーモラスな作品で知られる。
手回しの映写装置やブラウン管テレビでアニメを見せる
なお、松本力は国内外で活動を展開し、最近では今年の1月に東京・京橋のブティックで個展を開催して間もない。手回しの映写装置やブラウン管テレビでアニメを見せた。また、きったない段ボール箱を積み上げ、洗練された雰囲気のブティックにまったく配慮しないマイペースぶりを発揮した。
さらにいえば、素朴なのは作品だけではない。人柄も素朴というか無垢そのもので、やわらかな表情も相まって妖精系のキャラでもある。そのうえ天然もかなり入っていて、たとえば非常勤先の卒業式の日、式が終わってから「遅くなりました」とやってくる大物ぶりである。
そんな松本力を何故、応援する必要があるのか?
大田区南馬込の住宅で火災が発生、消防車25台が駆けつけたほど
1月31日に大田区南馬込の住宅で火災が起きた。消防車25台が駆けつけたほどの規模で、テレビ各局、新聞各紙で取り上げられたほどである。
この住宅には、親子二人が住んでいたが、この火災によって、90歳の女性は逃げ遅れて亡くなった。その息子はなんとか脱出できたものの、意識不明となり長く入院する羽目となった。
その息子が、松本力なのである。
2月末にようやく退院し、いまはリハビリの日々を送る。
「松本力さんを応援する展示会」の会場のArt Center Ongoingでは、今月2月に松本力の個展を開催する予定だった。だが、開催がかなうわけもない。
そこで急遽、松本力をよく知るアーティストたちに呼びかけ、今回の展示会に至ったという次第である。なお、作品の売り上げは、すべて松本力に寄付される。
参加者は、ひとつのフェスが成り立つくらい豪華ラインナップ
本展には、約30人近いアーティストたちが参加。しかも、ひとつのアートフェスが成り立つくらいの豪華ラインナップだ。
そして本展では、普段はあまり見られないアーティストの一面も見られる。たとえば爆音のパフォーマンスや音響装置で知られる宇治野宗輝は、その装置の絵画化を発表。彼の平面作品を目の当たりにできるのはレアな機会だ。
また、屋外の大型インスタレーションの発表を続ける青木野枝は、ちっちゃなオブジェを展示。だが、鉄の素材と丸い造形は大型作品と共通する。
それから、今回のために作品を作りおろしたのは遠藤一郎である。決して旧作で勝負しないのは、さすがは未来美術家といったところだ。
一方、パルコキノシタは小型の仏像を並べて発表。おだやかな表情を浮かべる仏像は松本力の復帰を祈るかのようだ。
その他にも、青山悟や淺井裕介、大木裕之、笠原出らそうそうたる面々が作品を寄せる。
ついでにいえば、「前もって知っていれば、絶対に参加したはずなのに」という、あの顔、この顔が次々と思い浮かぶ。
なお、本展の開催初日は、オープンして間もない時間から、多くの観客が駆けつけた。中には宮城県塩竈市からやってきた方もいるほどで、いかに多くの人たちが松本力の回復を待ち望んでいることがありありとうかがえる。
会期:2023年3月1日(水)〜3月12日(日)
時間:水木金18時~21時
土日12時~21時
入場無料
参加作家:青山悟、淺井裕介、部阿彩葉子、飯川雄大、市川平、宇治野宗輝、遠藤一郎、大木裕之、大久保あり、岡﨑彩加、大洲大作、笠原出、小林耕二郎、小林大賀、後藤理絵、三角みず紀、髙澤日美子、滝沢達史、十一、永畑智大、西原尚、原口勉、パルコキノシタ、永岡大輔、はまぐちさくらこ、村田峰紀、山本高之、青木野枝、 kvina(小林エリカ、田部井美奈、野川かさね、前田ひさえ)、Boat ZHANG、Rita Ponce de Leon、Artists from Mexico City、VOQ、and more!!
イベント:VOQライブ
日時:3月11日(土)、18時〜
料金:5000円
※当日の入場料の合計と同額をVOQが追加し、松本力へのドネーションとなる。
会場:Art Center Ongoing
東京都武蔵野市吉祥寺東町1-8-7