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アートと音楽の素敵な関係――歴史の中に埋もれた作家、作品を発掘 NAOTOが音楽で彩る番組とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「アートな夜!」で、演奏とナレーションを担当するバイオリニスト・NAOTO

人々の記憶から忘れられ、歴史の中で埋もれてしまった、アートやアーティストに再びスポットに当てる番組「アートな夜!」

昨年、東京都美術館で行われた「若冲展」にはわずか1か月余りの会期中に、約45万人という驚異的な来場者を数え、最高待ち時間はなんと320分という熱狂ぶりだった。それまでは知る人ぞ知る存在だった伊藤若冲とその作品にスポットが当てられ、ブームが沸き起こるきっかけになったのは、2000年の没後200年を記念した展覧会だった。その後2006年に開催された「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」(東京国立博物館)で、さらにそのブームが大きくなり、2か月で約32万人を動員した。

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芸術の世界では、ゴッホのように生前全く評価されなかったにもかかわらず、死後しばらく経って世界的な評価を得るアーティストがいる一方で、逆に生前は高い評価を得ながら、死後忘れられてしまい、その作品とともに埋没してしまうアーティストもいる。そんな、人々の記憶から忘れてられてしまい、歴史の流れの中で押し流され、埋もれてしまった、アートやアーティストに再びスポットに当てる番組がスタートし、注目を集めている。それがBSフジの「アートな夜!」(毎週火曜日23時55分~)だ。

音楽からもアートの世界を感じる、5分間のアートの旅

この番組は、そんな歴史に埋もれてしまったマスターや、マスターワークに光を当て、そのエピソードや背景、作品自体を紹介すると同時に、紹介したアートやアーティストの世界観やエピソードとシンクロする音楽を、毎回1曲セレクトして、人気バイオリニストNAOTOと若手クラシック演奏家らが、パフォーマンスする。音楽からもアートの世界を感じてもらうというコンセプトだ。

注目のバイオリニスト・NAOTOが音楽とナレーションを担当

「アートな夜!」は5分番組で、短い時間の中で、選りすぐりのアートとそのストーリーを、より印象的に視聴者に伝える必要があり、その音楽のセレクト、演奏とナレーションを担当するのがNAOTOだ。NAOTOは、東京芸術大学音楽学部器楽科卒業した、金髪がトレードマークの異色バイオリニスト。クラシックからポップスまでジャンルにとらわれないその音楽センスは、各方面から引っ張りだこで、人気ドラマ「のだめカンタービレ」では、オーケストラの選考から携わり、吹替演奏、楽曲提供、ゲスト出演も果たし一躍注目を集めた。さらに作曲家として、番組やCMなどに書き下ろし楽曲を提供したり、TEAM NACSの主宰公演など多数の舞台音楽を担当している。また、中孝介や押尾コータローのライヴの音楽監督を務め、ポルノグラフィティのライヴサポートなど、アーティストからの信頼も厚い。

「才能があるのに埋もれてしまっている画家に光を当てる、夢があるコンセプトに、音楽で参加できるなんて光栄」(NAOTO)

そんなNAOTOは今回の企画、話を受け、「魅力的なプログラムだと思った。才能があるのに歴史の中に埋もれてしまった画家の素晴らしい作品に、再び光を当てるなんて夢があるし、その画家や作品が持つストーリーに合う音楽をセレクトし、演奏できるなんて光栄な仕事だと思う」と語ってくれた。NAOTOも歴史には興味があり、特に自他共に認める“武将マニア”で、ライヴなどで地方に行った際には、必ずその土地にある城に足を運んだり、美術館を訪れるという。

7月4日の第1回目の放送では、幕末から明治にかけて活躍し、来年没後100年を迎える渡邊省亭をピックアップ。素晴らしい作品を残しながらも、弟子も取らず、画壇にも属さず、それが原因で時代の流れの中で徐々にその存在は忘れ去られ、しかし数年前から再び注目が集まっている画家だ。そんな渡邊の美が凝縮されているといわれている作品「牡丹に蝶」を紹介しながら、バックに流れるのはカルテットとピアノが奏でるバイオリンの名曲、イタリアの作曲家・モンティの作品「チャルダッシュ」。NAOTOのテンポのいい、まるで歌っているようなバイオリンが、人と絵のストーリーの輪郭を、より際立たせる。第2回放送は椿貞夫をピックアップ。「油絵の具を使って、日本の魂を描きたい」と、確かな油彩表現に加え、より濃密で繊細な作品を残している。その魅力が凝縮されているといわれている作品「窓辺早春」他、いくつかの作品を紹介しながら、バックに流れるのは、リスト作曲「愛の夢」。誰もが知っている名曲を、フルートとピアノのアンサンブルユニット「あいのね」と、NAOTOのバイオリンとの演奏で、より優しい表情の音を作り出している。

「若手クラシック演奏家の発掘もテーマ。チャンスなので頑張って欲しい」(NAOTO)

「あいのね」は2016年に結成したばかりだが、この番組は、歴史に埋もれた才能の発掘がテーマであると共に、若手演奏家にスポットを当てる場でもある。NAOTOは「若い人たちと演奏できるのは自分にとっても刺激にもなるし、どんなアンサンブルが生まれるのか、毎回すごく楽しみです。若手の人達も自分達をアピールする場、チャンスでもあるので頑張って欲しい」と、様々なシーンで活躍する自身にとっても、新たな挑戦の場であると同時に、新たな才能の出現を楽しみにしている。

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バイオリンのライヴというと、どこか敷居が高いイメージがあるが、NAOTOのライヴでは、MCを楽しみにしているファンも多い。お客さんにリラックスして音楽を聴いて欲しいという気持ちの表れでもあり、自身もリラックスして演奏したいという思いでもある。「アートな夜!」でもナレーションを担当しているが、どうやら得意の?MCとは勝手が違うようだ。「ラジオのパーソナリティーはやっていますが、ナレーション自体がほぼ初挑戦で、原稿を、ペースを考えて、声のトーンにも気をつけて読まなければいけないのは難しいです。好き勝手にしゃべっているMCとは全く別物です(笑)」。

NAOTOは今年4月に発売した7年ぶり8枚目のオリジナルアルバム『Gift』を引っ提げ、シーズンごとに様々な形式でライヴを展開している。フィレーナとして今冬、「NAOTO LIVE TOUR 2017“White (Christmas) Gift”」の開催が決定している。その抜群のセンスでジャンルを軽々と超え、よりポップにバイオリンを表現するNAOTOに、さらに注目が集まりそうだ。

『アートな夜!』オフィシャルサイト

NAOTOオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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