アップル、iPhone Xは予想を下回るも世界スマホ市場で首位
米アップルが昨年市場投入した「iPhone X」については、同社が生産量を大幅に減らしたと報じられている。
当初、今年1〜3月期におけるiPhone Xの予定生産台数は、約4000万台だった。しかし、アップルはこれを約2000万台に減らすと米ウォールストリート・ジャーナルは伝えた。こうしたiPhone Xの生産削減に関する話題は、日本経済新聞も報じている。
ただ、昨年10〜12月期の統計データを見る限り、iPhone Xを含む新型iPhoneシリーズは、おおむね幸先の良いスタートを切ったと言えそうだ。
例えば、米IDCがまとめたデータによると、昨年(2017年)10〜12月期におけるメーカー別出荷台数は、米アップルが韓国サムスン電子を追い抜いて、首位になった。
アップル vs. サムスンの歴史
各社の10〜12月期出荷台数を見ると、アップルが7730万台で、これにサムスンが7410万台で次いだ。
3位以降は、中国ファーウェイ(華為技術)の4100万台、中国シャオミ(小米科技)の2810万台、中国オッポ(広東欧珀移動通信)の2740万台という順。
このうち、アップルの出荷台数は、1年前に比べて1.3%減少した。それでも同社が首位となったのは、サムスンの出荷台数が同4.4%減少したためだ。
もっとも、アップルは毎年、10〜12月期に強いという傾向がある。
- 図1:アップルとサムスンのスマートフォン出荷台数推移(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)
例えば、2016年10〜12月期は、アップルの出荷台数がサムスンのそれを若干上回り、同社は首位に返り咲いた(図1)。
しかし、それもつかの間。翌年1〜3月期になると、再びサムスンが台数を伸ばし、アップルとの差を広げている。
こうして、アップルは10〜12月期に盛り返し、それ以外の四半期はサムスンが首位の座を維持するという状況が続いている。
3モデルの同時投入が奏功
IDCによると、昨年10〜12月期におけるアップルの勝因は、9月15日と11月3日に発売した、iPhone 8、同8 Plus、iPhone X。
発売10周年モデルと位置付けた高額なiPhone Xは、予想されていたほど伸びなかった。しかし、3モデルを同時投入したことで、さまざまな価格帯の製品がそろった。
これにより、新興国、先進国の両市場で、幅広い顧客層に訴求することができたと、IDCは分析している。
「高額な端末でも成功することを証明」
このIDCの統計結果は、アップルが2月に開示した販売台数データとも一致している。
この四半期のiPhone販売台数は、7731万6000台で、1年前から1.2%減少。iPhoneにとって10〜12月期の前年割れは、初めてのことだ。
しかし、こうして台数が減少したにもかかわらず、投資家のアップルに対する懸念は払拭されたと、ウォールストリート・ジャーナルの記事は伝えている。
価格が999ドルからと、高額になったiPhone Xによって、iPhoneの平均販売価格は約796ドルと過去最高になり、販売台数の減少を補った、というのがその理由だ(図2)。
- 図2:iPhoneの平均販売価格・販売台数・売上高の推移(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)
これに伴い、アップルの10〜12月期の売上高は、882億9300万ドル(約9兆4000億円)と、過去最高の四半期売上高を記録した。
iPhone Xは、まだアップル製品のファンのみに受け入れられているという状況。だがこのことは、高額な端末でも成功することを同社が示したことを意味すると、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
なお、iPhoneの昨年1年間の販売台数は、2億1578万2000台で、前年から0.18%増加した。伸び率はわずかなものにとどまったが、2016年の前年比7%減から、プラス成長へと回復している。
(このコラムは「JBpress」2018年2月6日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報などを加えて編集したものです)