【JNV】ロレス・アレキサンドリアはジャズの革新とともに歩んだ“埋もれる逸材”だった
ジャズ・ヴォーカルを取り上げて、そのアーティストの特徴や功績、聴きどころなどを解説するJNV(Jazz Navi Vocal編)。今回はロレス・アレキサンドリア(ロレツ・アレキサンドリアとの表記もあり)。
アメリカのジャズ評論界でも“ダイナ・ワシントン、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエ、エラ・フィッツジェラルドに並ぶ逸材”と言われながら、知名度がイマイチなのがロレス・アレキサンドリア。
1929年米イリノイ州シカゴに生まれた彼女は幼いころから教会の聖歌隊で歌い始め、教会を巡るツアーの一員にもなっていたようだ。
1957年にレコード会社と契約、2枚目のアルバム『Lorez Sings Pres: A Tribute to Lester Young』が好評を博し、ロレス・アレキサンドリアの名前を広めることになった。続く『The Band Swings, Lorez Sings』ではフル・オーケストラをバックに、サラ・ヴォーンやカーメン・マクレエを凌ぐ歌唱力でファンを魅了。
1964年にロサンゼルスに移った彼女は、ここで代表作となる『ザ・グレイト』と『モア・ザ・グレイト』を制作。
1993年『Star Eyes』をリリースした直後に脳血管障害で倒れ、完全には回復せずに引退を余儀なくされ、2001年に亡くなった。享年74歳。
♪Lorez Alexandria- My One and Only Love
ジョン・コルトレーンを擁して次々に革新的なジャズ・アルバムをリリースしていたインパルス・レーベルに迎えられたロレス・アレキサンドリアが最初に手がけた『ザ・グレイト』から「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」。
♪Send In The Clowns- Lorez Alexandria
「悲しみのクラウン」は1973年のミュージカル「A Little Night Music」の挿入歌。ロレスがモダンなアレンジで、道化師の悲しい心のうちに対する新たな解釈を見せてくれる。
まとめ
ゴスペル・シンガーとしての基礎がしっかりとしたアーティストへの評価が比較的高いとされるアメリカにおいても、彼女の評価は低すぎると思っている人が多いようだ。
ディスコグラフィを見ると精力的にトリビュートなどテーマ性の強い企画を取り上げているので、それがマニアックであるとポピュラリティを阻害してしまったのかもしれない。
シンガーには、影響を受けた人を自分に取り込んで昇華してしまうタイプと、逆にその人のなかに入り込んで伝えきれなかったものを引き出そうとするタイプがいる。ロレス・アレキサンドリアはおそらく稀な後者のタイプだったのだろう。それができるほどの洞察力と技量を備えていたことが、皮肉にも彼女の評価を限定してしまったのではあるが。
こういうタイプのシンガーは、時間をかけて再評価していくべきだと思う。
See you next time !