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映画にもなった異色棋士・瀬川晶司さんが六段に昇段

松本博文将棋ライター
2018年9月、イベントで将棋を指す瀬川五段(当時):撮影筆者

 2018年11月8日、瀬川晶司五段(48歳)はC級2組順位戦において、大豪の南芳一九段(55歳)を相手に75手で快勝した。瀬川五段はこれでプロ入り通算220勝(190敗、勝率0.537)。五段昇段からは120勝目をあげ、規定により六段昇段を果たした。

 瀬川さんはかつて奨励会に在籍したものの、難関の三段リーグを突破することができずに、26歳の年齢制限で退会。その後は学生、社会人を経て、アマチュア大会で活躍するようになった。

 当時アマだった瀬川さんは、プロ公式戦でも棋士を相手に17勝6敗と、勝率7割を超える異例の好成績を収めた。そして戦後初めて、プロ編入試験受験(六番勝負)を認められ、2005年11月6日に合格。晴れて棋士四段となった。

2005年11月6日、プロ編入試験(六番勝負第5局)に勝利して、棋士四段となった瀬川さん:撮影筆者
2005年11月6日、プロ編入試験(六番勝負第5局)に勝利して、棋士四段となった瀬川さん:撮影筆者

 異色の棋士の六段昇段は、プロ入り13年目の快挙だった。

2005年、編入試験合格後、米長邦雄・将棋連盟会長と握手する瀬川新四段(当時):撮影筆者
2005年、編入試験合格後、米長邦雄・将棋連盟会長と握手する瀬川新四段(当時):撮影筆者

 瀬川新六段の著書『泣き虫しょったんの奇跡』(2006年、講談社刊)はベストセラーとなり、2018年には実写映画も公開されている。

映画のキャッチフレーズは「負けっぱなしじゃ、終われない」:撮影筆者
映画のキャッチフレーズは「負けっぱなしじゃ、終われない」:撮影筆者

 11月8日の対局後、瀬川新六段にコメントをうかがった。

――六段昇段おめでとうございます。対局相手の南芳一九段はタイトル獲得7期、通算800勝以上を誇る大豪です。本日の将棋の内容はいかがでしたか?

瀬川  途中は難しいところもありましたが、攻め始めてからはまずまず上手く指せたかなと思います。南先生とは初めての対局でした。南先生のタイトル戦での対局など、とてもよく覚えているので、教われるのは「嬉しいな」と思っていました。

――プロ入り13年で220勝という歩みについてはいかがでしょうか?

瀬川  うーん、遅いのかどうなのか、わかりませんが・・・。一歩ずつ歩んでこれて、勝ち星昇段というのも自分の足取りというか。積み重ねてきたものが形になるので、嬉しいですよね。

――現在公開中の映画『泣き虫しょったんの奇跡』(豊田利晃監督、松田龍平主演)も話題となっています。

瀬川  とてもいい作品にしていただきました。観ていただいた方たちには、大変好評のようです。

――今後の目標は?

瀬川  竜王戦6組もあと1勝で昇級なので、直近の目標ですね。

――勝ち星規定では七段昇段はこれから150勝です。次の昇段はいつぐらいになりそうですか?

瀬川  今度は(昇級や優勝などの規定を満たして)勝ち星ではなく、と思ってるんですが(笑)。そうですね、早く昇段できるよう頑張りたいと思います。

――ありがとうございました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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