年収別に大きく異なるカップ麺やインスタントラーメン、ハンバーガーの購入度合い
カップ麺やインスタントラーメン、ハンバーガーのようなファストフード系・レトルト系食材は、厳しいお財布事情の人が良く利用するイメージが強い。それが事実か否かを総務省の家計調査の公開値を元に確認していく。
今回対象とする食品項目は、冒頭にもある通りインスタント系の代表食品ともいえる「カップ麺」「即席麺」、そして最近何かと話題の外食として「ハンバーガー」、さらには「ハンバーガー」以外の他の外食を意味する「他の主食的外食」、加えて食事そのものの動向を把握するため「食費(食料)」。これらの項目が具体的にどのような食品を示しているかは、次の通りとなる。
・カップ麺……カップ状のものに麺や具材が入り、お湯を注ぐだけで飲食できるもの。主食的に食べるもの。カップラーメン以外にカップそば、カップうどんも該当する。
・即席麺……製造過程において調理味付けされ、保存可能の状態に加工されたもの(メンマ、あげ玉、わかめ程度を付加したものも含む。カップ麺は除く)。即席うどんや即席そば、即席ラーメン、インスタント焼きそばなどが該当。焼きビーフンなどは該当せず。レトルト食品、冷凍食品も該当しない。
・ハンバーガー……セットも含むが、ファストフード店提供のものに限る。
・他の主食的外食……そば、うどん、ラーメン、パスタ、寿司、和食・中華・洋食各種、ハンバーガー「以外」の外食。例えばドーナツセット、お好み焼き、ピザパイ、お子様ランチ、会社での食事代など。ファミリーレストランにおける食事も該当する。学校給食や喫茶代、飲酒代は含まない。
また2015年版の家計調査では世帯の年収について「~244万円」「244万~359万円」「359万~500万円」「500万~731万円」「731万円以上」の5段階区分がなされている。毎年変化しているこの区分額は、「五分位データ」と呼ばれている。「所得の低い世帯から順に並べ、その上で全世帯を数的に5等分にした結果」による区分となっている。なお家計調査における収入(実収入)は税込収入であり、世帯単位の場合は世帯員全員の現金収入を合計したものとなる。
「簡単に調理ができてお安めな食事群」と「ファミレスなど比較的安価な外食」の利用額に関して、年収区分別の支出額をまとめたのが次のグラフ。年収区分別の違いを知るのが本旨であることから、各項目で「最低年収区分世帯の支出額を1.00」とした場合の相対値を算出、グラフに盛り込んだ。
年収の増加と共に「食費」の出費額そのものは増加している。そしてベースとなる「食費」の増加と比べると、「カップ麺」はほぼ同率、「即席麺」は緩やかな増え方に留まっている。最高年収区分では、「食費」そのものが2.36倍なのに対し、「カップ麺」は1.98倍、「即席麺」にいたっては1.72倍しかない。
これら食品群、特に「即席麺」は元々単価が安く、さらに高級品との価格差もそれほど大きくは無いため、食費全体の増加分と比べて上昇幅が抑えられている。また「年収の増加と共に購入頻度が減っている」可能性も十分に考えられる(が、年収別の項目別購入頻度は公開されていないため、確認はできない)。
「他の主食的外食」は「食費」以上の伸び率を示している。しかも年収が上になるほど伸び率も大きくなる。外食機会が増える、利用時のメニューが高額なものとなる、入る店のランクが上がるなど、色々と理由は容易に考えられる。実情を想像すれば多分に「利用頻度の増加」が主要因と見てよいだろう(上位年収では最下位年収の3倍強の金額の支出が行われている)。
興味深いのは「ハンバーガー」。一見すると「所得が低い層の味方」なイメージが強い。しかし「食費」の比率をはるかに超えて増加している。特に高年収層の伸びが著しい。シンプルなセットのみか、あるいはセットにプラスαのメニューを追加するか。もちろん利用頻度そのものの違いもあろう。いくらワンコインのメニューが用意されていたとしても、それしか注文しない客は多くは無い。
余談になるが各年収毎に、「カップ麺」「即席麺」「ハンバーガー」の「食費に対する」支出額の比率を算出すると次のグラフの通りとなる。「他の主食的外食」は該当する外食の内容が雑多すぎるので省略する。
一概に「低年収層ほどカップ麺や即席麺、ハンバーガーへの支出金額が多いわけではない」のは上記の通りだが、食費全体に占める比率でも同様のことがいえる。「ハンバーガー」は「500万~731万円」層の比率が一番高く、「即席めん」では「~244万円」層が一番だが次いで「244万~359万円」「359万~500万円」「500万~731万円」が横並びとなっている。これらはあくまでも「”ファスト”フード」であり「”ロープライス”フード」ではないことを再認識させられる次第ではある。
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