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「通算800長打」の記念球が、それを打たれた投手の怒りを呼ぶ

宇根夏樹ベースボール・ライター
マディソン・バムガーナー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)Jun 6, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月6日、ジョーイ・ボトー(シンシナティ・レッズ)は、1回裏に二塁打を打ち、通算長打を800本とした。その内訳は、ホームランが335本、三塁打が22本、二塁打は443本だ。

 800長打以上は、1477本のハンク・アーロンを筆頭に、120人以上が記録している。1000本を超える現役選手も2人いて、1373本のアルバート・プーホルス(セントイルス・カーディナルス)は歴代4位、1125本のミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)は歴代17位に位置する。

 ただ、レッズで800長打以上は、868本のピート・ローズに続く2人目だ(他チームで打った長打も含めると、ローズは1041本。ボトーはレッズ一筋)。また、カナダ生まれの選手も、ボトーの他には、916本のラリー・ウォーカーしかいない。

 ボトーの打球は一塁手の左を抜け、ファウル・ライン際を転がっていった。そのボールがライトから二塁手を経由し、遊撃手に戻ってくるよりもかなり前に、ボトーは滑り込むことなく二塁に達した。

 マウンドにいたマディソン・バムガーナー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)は、遊撃手から受け取ったボールを、そのまま、次の打者に投げるつもりでいたらしい。ボトーが到達したマイルストーンの記念球であることに、気づいていなかったようだ。

 球審に渡すように言われ、バムガーナーは何か叫びながら、ボールを球審に放った。さらに、球審がバムガーナーに投げた新たなボールを、これじゃないとでも言うように、三塁と本塁の間に向かって投げ捨てた。

 その前から、バムガーナーは苛ついていたのかもしれない。ボトーの2人前の打者にホームランを打たれ、すでに1点を取られていた。

 バムガーナーは、ボトーの次の打者を4球で歩かせ、その次の打者には、3球目をぶつけた。これによって生じた2死満塁のピンチは切り抜けたものの、2回裏に2点目、5回裏に3点目と4点目を取られ、黒星を喫した。

 一方、バムガーナーと球審がボールをやりとりしている間、ボトーはその後方で、二塁の近くまで来ていた一塁塁審と談笑していた。こちらも、記念球の行方には無関心だったように見えた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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