『#QRコード』発明による社会貢献の評価は? 地下鉄20億円の車両改修費は20億円→270万円
KNNポール神田です。
東京都営地下鉄のホームドア設置率が100%となった。
東京都交通局が管理する都営地下鉄4路線の全駅で2023年、ホームドアの設置が終わった。その推進役を担ったのが、『デンソーウェーブ』の『QRコード』技術であった。
電車のドアにQRコードがあると、ついつい読み込んでみたい…と筆者は考える…。しかし、このこのQRコードは、読み取っても何の反応もしてくれない…。広告ではない、誰が何のための不思議なQRコードかと思っていたが、実はホームドアの開閉に利用されていたことをはじめて知って驚愕であった。
1日あたり224万人が利用している都営地下鉄のホームドアの開閉を『QRコード』によって自動化されていたからだ。しかも従来方法の改修費用を劇的に低減している。
■20億円が270万円となると…19億9,9730万円分!浮いた!
このQRコードを読み取らせるアイデアをひらめいたのが、ホームドアの技術開発を担当する公務員、岡本誠司さん(63)
QRコードを開発した『デンソーウェーブ』に相談したそうだ。
■無線装置の設置よりもQRコードへの発想の転換
東京都都市交通局車両電機部の岡本誠司さんの発想の転換
筆者の公務員さんのイメージでは、新たな事はやりたがらない。失敗を生むきっかけは、個人的にできるだけ避けたいというイメージを抱いていたが、岡本さんの発想は、非常にポジティブであった。そして、『ホームドア』設置の車両改修費が、コストに見合わない民間他社の相互乗り入れであればあるほど、事業性が見込めないと投資判断につながらなかったことだろう。
しかし、『QRコードがあればできるかもしれない』という発想の転換が19億9,9730万円分の節約につながり、ホームドア設置率100%を実現化することができた。
そして、『デンソーウェーブ』も『QRコード』の『特許を開放』しながらも、がっちりとこんなコラボで『QRコード開発』を事業としているところに注目したい。
しかも、京急電鉄、小田急電鉄なども同様にホームドアにこの技術をとりいれ、全国的に伝搬していけば、『デンソーウェーブ』としても旨味がでてくる。
■『デンソーウェーブ』の『tQR』とは?
『tQR』とは、『デンソーウェーブ』と東京都都市交通局と共同開発した新型QRコードを用いたホームドア開閉制御システム。
https://www.denso-wave.com/ja/adcd/info/detail__191003_01.html
https://www.denso-wave.com/ja/adcd/event/aice2019/tqr.pdf
このように、『デンソーウェーブ』は、自社が開発した『QRコード(二次元バー−コード)』の特許を持ちながらも、無償公開で全世界へ普及することとなった。同時に『QRコード』を、さらにシステム開発する業務という新たな分野を開拓することとなった。
業界や業種によって、よりたくさんの精度をあげた『新QRコード』のシステム開発は多様になることだろう。むしろ、このシステム開発技術のベンダープラットフォーマーとしての課金のビジネスもありえそうだ。オープンプラットフォーマーとしての技術公開と協力ベンダーやスタートアップのアクセラレーターによって、『新QRコード』のシステム開発はまだまだ無限にある。
筆者は、『はま寿司』アプリで日常的に予約から、行列レス、座席案内、精算にいたるまで『QRコード』の恩恵を受けている。当然、『はま寿司』側も全国的に売上把握だけでなく食した寿司まで把握することができているはずだ。自社開発ができなくてもある程度のDXは『QRコード』のしくみひとつで改善できることは多々ある。スマホでURLを打ったり、検索することもなくなる。店内無料Wi-Fiのコードなどのログインは簡単にQRコードのプリントアウトで案内できるはずだ。
□意外に知られていないWI-FiパスワードをQRコードで表示する方法
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5a764366717aa6ce8e1aa9a073bfd35e9574987e
■『QRコード』を発明した『原昌宏(Masahiro Hara)』さん
原昌宏さん、および現・デンソーウェーブの立派なのが、特許取得費用をかけて『特許』を取りながらも無償公開するという戦略的な手法だった。おそらく、便利な二次元バーコードでも『QRコード』が特許料という『課税』をしていたら、いろんな方式の使いにくい『二次元バーコード』が乱立していたことだろう。それが『デンソーウェーブ』の戦略だった。そして、『SQRC』のような、『QRコード』を活用した新たなソリューションが登場しているので、新たな爆発的な活用が期待できそうだ。
使う人が多くなればなるほど、新たな『課題』と『ニーズ』が生まれ、『QRコード』で解決できのでは?という『選択肢』について『デンソーウェーブ』は圧倒的な優位なポジションを確率している。
■QRコードの特許を開放したデンソーウェーブの狙い『発明』よりも『商標』
デンソーウェーブの利益はこの戦略どおりでかまわないと筆者は思う。
しかし、発明をしたデンソーウェーブの原昌宏さんや、活用した公務員の岡本誠司さんにも莫大な個人的な利益が恵まれると、企業内でも地方自治体も積極的にアイデアをだしてくれるのではないだろうか? 『アメリカン・ドリーム』ならぬ『イノベーション・ドリーム』のような報酬制度だ。
課税された経済圏からの収益を分配し、理数系、文系に関わらず、イノベーションのキーファクターを生み出した個人にフォーカスを当てる制度だ。
世界に普及した『QRコード』によって、莫大な利益を生み出したIT企業は数ある。
19世紀のフランスでは、写真技術の『ダゲレオタイプ』の技術をフランス政府が買い取り、公共で使えるようにした。その代わり、発明者のダゲレオやニエプス、そしてその息子たちにはフランス政府から終身年金が支払われたという。
科学技術の予算を配分するだけではなく、イノベーションを生み出す、『モチベーションのしかけ』も同時に発明しなければならないのではないか?
また、それらを披露する場も必要なので、4年に一度の国政選挙の時にノミネートされた人たちを投票できるようにすれば、技術大国ニッポンの貢献者を自分たちで選べるとなると、コストをかけずに国民から選ばれるヒーロー、ヒロインも生まれる。ノーベル賞の発表や、学会誌での評価を待つまでももない。名誉と経済支援も同時に獲られることが現在のモチベーションのしかけとなるだろう。
■Appendix
□『なぜ?台湾で3日間でできることが日本では出来ないのか? 飲食店でのQRコード活用』
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f7fcce53bbc699ca3cc7137173b255364d1b0132
□『デンソーウェーブ』 非上場会社
代表相良 隆義
主要株主 株式会社デンソー 75%
豊田通商株式会社 15%
株式会社トッパンインフォメディア 10%
資本金 4億9,500万円
従業員 1,247名(2023年3月31日時点)
売上高 557億円(2022年4月1日~2023年3月31日)
営業利益16億8300万円
経常利益17億6000万円
利益剰余金125億7600万円
総資産373億8700万円
主な取引先 :愛三工業株式会社、株式会社アイシン、イオンリテール株式会社、イビデン株式会社、株式会社NTTドコモ、小田急電鉄株式会社、京浜急行電鉄株式会社、KDDI株式会社、株式会社サトー、株式会社ジェイテクト、シャープ株式会社、セコム株式会社、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、ソフトバンク株式会社、株式会社デンソー、株式会社東芝、トヨタ自動車株式会社、株式会社豊田自動織機、豊田通商株式会社、日本郵便株式会社、日立グループ各社、富士通グループ各社、ブラザー工業株式会社、株式会社ブリヂストン、ヤマハ発動機株式会社、YKK株式会社 他多数 ※敬称略
https://job.mynavi.jp/25/pc/search/corp68707/outline.html
□東京都の高速電車事業(都営地下鉄)令和4年度 決算、収入1,158億円で累積欠損金は2,151億円