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北朝鮮のミサイル発射と核実験阻止の「禁じ手」「斬首作戦」が復活する!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
「人狩りマシン」で知られる米特殊部隊「ネイビーシールズ」の訓練(米海軍HPから)

 北朝鮮のミサイル発射が止まらない。井野俊郎防衛副大臣が言うまでもなく1週間に4度の発射は過去になかったことだ。

 米韓両国は北朝鮮のミサイル発射や7度目の核実験を阻止するため米韓合同軍事演習「乙支フリーダムシールド)」(8月22―9月1日)、米原子力空母「ロナルド・レーガン」も加わった米韓海上合同演習(9月26-29日)、そして日本の護衛艦「あさひ」も参加した日米韓3か国による「合同対潜水艦戦演習」を実施し、圧力を掛けているが、北朝鮮はミサイル発射を自制するどころか、逆に拍車を掛けている。

 北朝鮮のミサイル発射は、昨年は8回の延べ12発だったが、今年は10月1日現在ですでに21回の計40発に上っている。直近の4回はいずれも短距離弾道ミサイルだったが、これは「序曲」に過ぎず、今後さらにエスカレートし、潜水艦弾道ミサイル(SLBM)から長距離弾道ミサイル、さらに偵察軍事衛星の発射、そして7度目の核実験などが予想されている。

 軍事的威圧が通用しないとなると、ミサイル発射と核実験を抑止する「禁じて」として北朝鮮が最も警戒している最高指導者の首を狙った「斬首作戦」を本格的に始動させることも密かに検討されているようだ。 

 駐韓米軍特殊部隊司令部が昨日(30日)明らかにしたところによると、29日午後に京畿道平沢市にある米軍基地の飛行場で「チークナイフ」訓練が行われたようだ。

 「チークナイフ」は米韓両軍の特殊部隊が緊急時に北朝鮮の内陸部に深く浸透し、要人の拉致、暗殺のほか、主要施設を破壊し、連合軍の爆撃を精密に誘導する訓練のことである。

 北朝鮮が昨年9月11日と12日に2日続けて新型長距離巡航ミサイルを発射し、さらに15日にも貨物車両から短距離弾道ミサイル計2発を発射した時も日本のEEZ(排他的経済水域)内に着弾したこともあってこの時も米軍特殊部隊による「「チークナイフ」訓練が行われていた。

 今回の訓練は米空軍第353特殊作戦飛行団、第1特殊作戦飛行大隊、第320特殊戦術飛行団、空軍機動偵察司令部及び第259特殊任務大隊が投入され、夜間に行われたが▲飛行場の掌握及び人質救出訓練▲高高度潜入訓練▲近接航空支援及び精密火力支援訓練などが実施された。

 興味深いのは駐韓米軍特殊戦司令部が韓国で夜間訓練を行った事実を極秘扱いせず、SNSを通じて公表していることだ。それもこれも北朝鮮のミサイル乱射への警告メッセージとみられている。

 核ボタンを握っている金正恩総書記に対する「斬首作戦」は軍事衝突一歩手前まで突き進んだ2017年に全面戦争を回避し、核・ミサイルを除去する手段の一つとして真剣に検討されていたことがあった。どうやらそれが再び復活したようだ。事実、米国は今春からそのための訓練を実施していた。

 例えば、駐韓米陸軍第2歩兵師団は今年4月に有事時に地下にある北朝鮮の司令部を打撃するための訓練を実施していた。当時、第2歩兵師団のツイッターには「Ready First兵力が地下施設で訓練を行った」との一言が記され、具体的な訓練の時期、場所、目的などについては明らかにされていなかったが、4月23日に公開された写真を見ると、師団将兵らは特殊防毒マスクと防護服を着用したまま地下坑道に侵入し、捜索訓練を行っていた。駐韓米軍が地下坑道訓練写真を外部に公開するのは2017年3月以来、実に5年ぶりのことであった。

 また、5月にも米空軍基地で韓国軍特殊任務旅団が浸透用輸送機MC―130Kを利用し、米軍特殊部隊と共同訓練を実施していた。韓国の特殊任務旅団が米軍特殊部と共に米国の基地で合同訓練をやるのはこれが初めてであった。

 この特殊任務旅団は有事時に敵の指揮部に深く浸透し「斬首作戦」を遂行し、核施設を掌握する任務を遂行するため2017年に特殊戦司令部の要員らで創設された部隊であり、そのモデルとなっているのが「人狩りマシン」で知られるネイビーシールズ「チーム6」である。

 ネイビーシールズ「チーム6」の正式名称は米海軍特殊戦研究開発団(NSWDG)である。略して「DEVGRU」とも呼ばれている。航空機や潜水艦で敵地後方に侵入し、要人暗殺や敵施設への破壊工作などを行う。隠れ場所に潜んでいたサダム・フセイン大統領を奇襲攻撃した「Big One Operation作戦」などで知られるが、特に2011年にイスラマバード郊外のアボタバードにある邸宅でビン・ラーディンの隠れ場を奇襲し、殺害したことで世界にその名を轟かせた。

 ネイバーシールズやデルタフォースなど特殊部隊専用の訓練施設として知られている米ミズーリ州のローズ・クランス州空軍基地内の航空輸送戦術訓練センター(AATTC)で行われた米韓合同特殊任務訓練にはアカンソ州のダマスカスにあるリトルロック空軍基地とテキサス州のダイエス区軍基地から派遣された米側の要員らが訓練に参加していた。

 実際に米空軍のホームページには韓国のMC―130K輸送機と米軍のMC―130輸送送機が滑走路に並んでいる写真が公開されていた。MC-130輸送機は熱追跡ミサイル回避機能のある赤外線地形回避レーダーと衛生位置確認システム(GPS)など特殊戦装備を搭載し、悪天候の中でも75m以下の低高度で浸透が可能である。

 バイデン大統領が「金正恩暗殺命令」を下せば、偵察・情報収集機や偵察衛星、レーダーなど監視・追跡ネットワークを総動員し、金総書記の動静を追跡、捕捉し、居場所が確認されれば、特殊部隊を北朝鮮に送り込み、暗殺を企てるという「オプション2」が発動される。

 問題は、北朝鮮が8月に開いた最高人民会議で法律化した「核戦力政策」の中に 国家指導部への攻撃が強行されるか、あるいは差し迫ったと判断した場合、北朝鮮が核で対応することを定めたことだ。

 トランプ政権下で真剣に検討されていた「先に殴って、出血させることで震え上がらせ、反撃する気を喪失させる「鼻血作戦(戦略)」も含めて「斬首作戦」もそう簡単なことではない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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