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「洗剤を注文する洗濯機」「トナーを注文するプリンター」、アマゾンが開発中の消耗品自動注文サービス

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米アマゾン・ドットコムは先週、「Dash Replenishment Service(DRS)」と呼ぶ同社サービスの提携企業に、新たに11社の機器メーカーが加わったと発表した。

注文は機器におまかせ

これにより、残量が少なくなると自動で洗濯洗剤をアマゾンに注文する洗濯機や、同様にトナーカートリッジを注文するプリンターなどが市場に登場するという。

このDRSは直訳すると「Dash補充サービス」。

同社には「Dash Button(ダッシュボタン)」という商品の再注文を簡便にする機器がある。利用者は、このダッシュボタンを1回押すだけで、洗剤やひげそり刃といった消耗品をアマゾンに注文できる。

DRSに対応する機器はこの仕組みを利用するという。機器には消耗品の残量や使用期限を感知するセンサーなどが組み込まれており、ボタンを押すことなく、あるいは洗剤などの残量が減っていることを気付かなくても注文が完了し、そのことをスマートフォンに知らせるという。

アマゾンのデバイス部門バイスプレジデントによると、「顧客は消耗品の注文を機器に任せればよく、日常生活をスムーズにできる」という。

また「機器のメーカーは自社製品に再注文の機能を容易に組み込むことができ、差別化した商品を顧客に提供できる」と同氏は説明している。

ブラザー、サムスン、GEがパートナーに

アマゾンの発表によると、今回DRSのパートナーに加わったのは米ゼネラル・エレクトリック(GE)や韓国サムスン電子、米シールドエアー、米オーガストホームなど。

これにより洗剤を注文するGEの洗濯機、トナーカートリッジを注文するサムスンのレーザープリンター、石けん液を注文するシールドのハンドソープディスペンサー、交換電池を注文するオーガストホームのスマート電子錠などが発売されるという。

このほかにも、アマゾンは数社と提携している。ペットフードの残量を測定し、あらかじめ選んだ商品を適切なタイミングで注文するペット用食器や、自動で水質浄化剤を注文するプール/スパ用の水質管理装置なども登場する見通しだという。

アマゾンはこのDRSを今年4月に発表していた。当初のパートナー企業として、日本のブラザー工業や、米国の白物家電メーカー、ワールプール(Whirlpool)、ドイツの浄水器メーカー、ブリタ(BRITA)などがすでに加わっている。

米ウォールストリート・ジャーナルによると、ブラザー工業はインクカートリッジを自動注文するプリンターを、ワールプールは洗剤と柔軟剤を自動注文する洗濯機と乾燥機を、ブリタは交換時期が来るとフィルターを注文するポット型浄水器を、それぞれ開発中。

また米シーネットによると、これらDRSに対応した機器は年内にも登場するとアマゾンの広報担当者は話しているという。

ネット通販の注文、さらに簡素化

こうした商品注文を簡素化する仕組みについて、同社はこれまでも様々な試みを行っている。

例えば昨年は、生鮮食料品のネット通販「アマゾンフレッシュ」の会員を対象に、懐中電灯大の端末「アマゾンダッシュ(Amazon Dash)」を提供した。これは商品パッケージをスキャンすると、その商品がショッピングカートに入るというバーコードリーダー端末。

また同社の音声アシスタント端末「Amazon Echo(エコー)」には、音声で商品をショッピングリストに追加する機能がある。

これらに共通しているのは、スマートフォンやパソコンを使うことなく、希望の商品を探したり選んだりできること。だが、前述のダッシュボタンはショッピングカートを経由せずに注文を完了するという点で、これらとは一線を画す。

そして今回のDRSはその一歩先を行くサービスと言えそうだ。

家事を手助けしてくれる人型ロボットの一般家庭への導入はまだ遠い未来の話。だが在庫切れになりそうな日用品を注文してくれるロボットのような機器は、もう手の届くところに来ているのかもしれない。

JBpress:2015年10月8日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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