ハリケーン・イダリア、過去最強の強さでフロリダ州北部に上陸へ
ハリケーン・イダリアが、観測史上最強の勢力でフロリダ州北部に接近しています。
現地時間30日(水)未明時点での強さは、最大風速58メートル、中心気圧942ヘクトパスカルで、カテゴリーは上から2番目に強い「4」に達しています。
まもなくフロリダ州北部に上陸する見込みです。フロリダ州北部にカテゴリー4のハリケーンが上陸したことは、観測開始以降一つも例がありません。
一般にカテゴリー4のハリケーンは、次のような甚大な被害を出すおそれがあるとされています。
予想される雨量など
前例のない強さのハリケーンの上陸で「壊滅的な高潮」と「破壊的な暴風」のおそれがあると、気象局は語気を強めて警戒を促しています。
具体的に予想される雨量と高潮は下記の通りです。
最大瞬間風速:63メートル
雨量:最大300ミリ
高潮:最大4.9メートル
高潮4.9メートルというのは、海から約5メートルの高さの水の壁が押し寄せてくることを意味します。その上に高波が加わります。
さらに、上陸地点は高潮に非常に脆弱な地域です。
というのもフロリダ州北部の海岸線は、南西に面し、ほぼ直角に曲がっており、ハリケーンがもたらす南西からの強風で吹き寄せられた海水が、一気に海岸に流れ込みやすいのです。
タイミングの悪さ
イダリアは観測史上最強の勢力で上陸しようとしているばかりか、上陸のタイミングも非常に悪いのです。
まず、現地時間30日(水)は満月で、潮位が高い時期にあたります。さらに悪いことに、その日は1年でもっとも月が地球に接近する日であり、空には今年最大の「スーパームーン」が昇っています。
そして今夏、フロリダ周辺の海水温は記録的に高い状態です。フロリダ半島沖では一時約38度まで上昇し、観測史上最高水温を記録しました。州北部の海水も31度あり、ハリケーンが勢力を強める環境が整っています。
悪名高き「I」ハリケーン
ところで、ハリケーンにはできた順番にアルファベット順で名前が付けられています。イダリアはIdalia、つまりIから始まる今年9号目の熱帯低気圧です。
イダリアのようにIから始まるハリケーンは、過去もっとも被害を出しやすいことで知られています。統計上、Iハリケーンは8月後半から9月初めに発生しやすいのですが、この時期は海水温が高く、ハリケーンが強くなりやすいうえに、アメリカに上陸しやすい時期なのです。
下記が過去の例ですが、イダリアもまたIストームを悪名高きものにする可能性が高くなっています。
- 2022年Ian(イアン)…死者約150人
- 2021年Ida(アイダ)…100人
- 2017年Irma(アーマ)…150人
- 2004年Ivan(アイバン)…100人
- 1966年Inez(イネス)…300人
*追記(8/30)*
イダリアは現地時間30日の朝、フロリダ州北部のビッグベンド地域に上陸しました。上陸時の最大風速は55メートルで、カテゴリーは「3」でした。The Weather Channelによると、1851年の統計開始以降、この地域における観測史上1位タイの強さでの上陸だったもようです。