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「第2波が来てもロックダウンしない」強気なトランプ氏も、裏ではマスクをつけていた!

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
フォード社の工場でマスクを手にするトランプ氏は「裏ではマスクをつけた」と発言。(写真:ロイター/アフロ)

 最近、とみに気になることがある。以前ほど、道行く人々がマスクをしていないと肌で感じる。

 筆者が住むロサンゼルスでは、4月8日、市長のガルセッティ氏がスーパー入店時や公共交通機関利用時のマスク着用を義務化し、屋外でもマスクを身につけるよう奨励した。確かに、その直後はマスク姿の人々をよく見かけた。マスク嫌いなアメリカ人もようやくマスクをするようになったかと感心したものだ。

 しかし、外出規制が長引くとともに、マスク姿の人々が徐々に減っているように思う。

マスク着用令が出てもつけない市民

 アメリカ各地で外出規制措置の緩和が進む流れの中、5月8日、ロサンゼルスも一部緩和に踏み切り、5月13日には50日間閉鎖されていたビーチも解放されたが、同時に、5月15日からはマスク着用も義務化された。

ロサンゼルスでは屋外でのマスク着用が義務化されたが、ビーチや公園にはマスクなしの市民が大勢いる。筆者撮影
ロサンゼルスでは屋外でのマスク着用が義務化されたが、ビーチや公園にはマスクなしの市民が大勢いる。筆者撮影
公園には“FACE COVERING REQUIRED
公園には“FACE COVERING REQUIRED"(フェイスカバー必須)と呼びかける電光掲示板も登場。筆者撮影

 しかし、解放されたビーチや公園を歩いても、義務化されたマスクをしていない人々が大勢いる。市民の間からは「ビーチには、人のことを気にしない自己中心的な人々でいっぱいだ。マスクをつけず、ルールに従っていない」という憤りの声もあがっている。

 最寄りの公園には、“FACE COVERING REQUIRED”(フェイスカバー必須)と訴える大きな電光掲示板まで出された。

 死者数10万人到達を目前に、アメリカで進む一部緩和。そして、緩和により人々が市中に姿を現し始めたにもかかわらず、義務化されたマスクを着用していない人々が大勢いる実情。この状況から聞こえて来るのは、第2波の音だ。

ロックダウンはもうしない

 トランプ氏も第2波到来の可能性を感じている。しかし、それを恐れてはいないようだ。

 5月21日、トランプ氏が人工呼吸器の製造を開始したフォード社の工場を訪問した時のこと、ある記者に「第2波を懸念しているか?」と問われた同氏はこんな強気発言を返した。

「(第2波が来る)可能性は非常にあると言われている。(第2波の)火は消すよ。国は封鎖しない。それが残り火であっても燃え上がる炎であっても、火を消すよ。しかし、国は封鎖しない」

 “第2波が起きてもロックダウンしない”と豪語するトランプ氏。米感染症研究の大家、ファウチ博士に叱られそうなゆゆしき問題発言だが、トランプ氏は感染の恐怖を感じていないのか?

 実際、CDC(米疾病予防管理センター)が米国民にマスク着用を奨励しても自身は「マスクをしない」と言い張り、ホワイトハウス内で感染者が出ても着用を拒み続けてきたトランプ氏は怖いもの知らずのように見える。

 5月23日は、自身所有のゴルフ場で2ヶ月半ぶりにゴルフに興じる姿も報道された。CNNによると、警備チームたちはマスクをしていたが、トランプ氏は相変わらずのマスクなしだったという。

裏ではマスクをつけていた

 マスクをしないトランプ氏だが、本当のところ、マスクをしたいのではないかと筆者は察している。トランプ氏は不動産王時代、ビジネス関係者と握手をしないほどの“黴菌恐怖症”で知られていたからだ。

 当時、トランプ氏と交渉したというニューヨークのビジネス関係者が、以前、筆者にこんなエピソードを話してくれた。

「トランプ氏のオフィスを訪ねた時、彼はデスクの向こうから“ハロー”というだけで、挨拶に出てきませんでした。出て来ると握手をかわさなければならなくなるからです。彼には“黴菌恐怖症”なところがあったんです」

 そう感じさせる節はある。トランプ氏は、裏では、マスクをつけているからだ。

 例えば、4月にアリゾナ州にあるN95マスク製造工場を訪問した際、トランプ氏はこう漏らしている。

「(マスクをつける)必要がないと言われるまで、マスクをつけたよ。舞台裏でね」

 さらに、先のフォード社の工場を訪ねた際も、同様の発言をしている。

「裏ではマスクをつけたよ」

 マスクをつけていないことが批判されている言い訳にも聞こえるが、トランプ氏は、カメラがないところではマスクをつけているというのだ。

 そして、カメラの前でマスクをつけない理由も吐露した。

「記者たちを喜ばせたくないんだ」

 メディア嫌いのトランプ氏らしい回答だ。

 ちなみに、トランプ氏の側近たちは、彼がカメラの前でマスクを身につけない理由について「マスク着用は“経済を再開しても安全”というトランプ氏のメッセージと矛盾するからだろう」と話している。マスクをつけないのは、“安全アピール”のためのパフォーマンスというわけだ。

“強いアメリカ”に反する

 また、思えば、トランプ氏は一貫して「強いアメリカ」を取り戻すと主張してきた。リアリティー番組のホストを長年務めた経験から、イメージ作りも重視している。感染を恐れているかのようなイメージを与えるマスク姿の大統領は、「強いアメリカ」という、トランプ氏が国民に誇示したいイメージに反しているとも言える。

 しかし、外出規制緩和により、第2波の音は、今にも聞こえてきそうだ。

 トランプ氏はマスク姿で堂々カメラの前に登場し、マスク着用の模範を示すことで、マスクをしていない米国民の感染予防意識を高める必要があるのではないか。

 米国民の命あっての「強いアメリカ」なのだから。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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