GREE、Supercellとの特許権侵害訴訟で和解(おそらく事実上の勝訴)
2021年8月17日付けで、グリー株式会社(以下、GREE)が、フィンランドのゲーム会社Supercellを米国における特許権侵害で訴えていた件の和解が成立したとのプレスリリース(IR情報)を出していました。
「和解の諸条件につきましては、和解契約の守秘義務の対象になるため開示は差し控えさせていただきます」ということですが、2021年5月10日付けの同社リリースでも触れられているように、7件の訴訟のうち3件について、9,210万ドル(約100億円)の損害賠償金支払いをSupercell社に命じた陪審員評決が出されています。これを考えると、100億円を超える和解金によりグリーが大勝利した可能性は高いと思います(ちなみに、一般論として、特許権侵害訴訟の損害賠償金額は日米で一桁以上違いますので、任天堂とコロプラの和解における33億円と比べるのはあまり意味がないと思います)。
Supercell社は、「クラッシュ・オブ・クラン」や「クラッシュ・ロワイヤル」等で有名なフィンランドのモバイルゲーム会社です。かつては、ソフトバンクグループだったこともありますが、現在は、中国のSNS企業テンセントの傘下です。テンセント社は訴訟においてSupercellを全面的に支援しており、GREEに対する反訴のために自社の特許を貸出(一時譲渡)したりしています(関連過去記事)。すなわち、この特許訴訟はGREEとテンセントの戦いと見ることもできます。
テンセントは現時点で時価総額世界第7位の超巨大企業です(時価総額で比較するとGREEの70倍くらいです)。したがって、このケースは(グローバルに見れば)小規模な企業が自社開発技術の特許で巨人に勝ったというパターンなので、もっと称賛されてもよいのではと思います(日本のネット世論は心なしかGREEに冷たい気がします)。そもそも、このプレスリリースも日本国内ではあまり記事化されていないようです。
なお、GREEとSupercellは日本においても特許権侵害訴訟を行っていましたが、それは、2019年2月9日に和解で終了しています(参照リリース)。こちらも和解の内容は秘密保持義務の対象となっており不明です。
さて、訴状から、今回の評決に関係するメインの特許のひとつが10,328,346 であることがわかりました。出願日(優先日)は2013年5月31日、登録日は2019年6月15日、発明の名称は”Storage medium storing game program, game processing method, and information processing apparatus”です。日本の特許出願(特願2013-116039)に優先権主張しており、日本における同等特許は、6125128号です。
本記事では、US10,328,346 の内容を見てみましょう。本特許は、カードを使ったオンライン対戦ゲームのUI関連の特許です。訴状ではSupercellの「クラッシュ・ロワイヤル」が少なくともクレーム1を侵害すること、および、Supercell社が事前に特許権侵害の警告を受けていたことから、この特許権を故意に侵害したことが主張されています(米国の特許権侵害訴訟では、故意の侵害を立証できれば、いわゆる懲罰的賠償制度により、損害賠償金を増額できますので故意の認定は重要です)。
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