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賞味期限切れの水は飲めるので台風など非常時に捨てないで!消費者・行政・メディア みな賞味期限を誤解

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

千葉県富津(ふっつ)市で、台風15号の被災者にペットボトル水が配られた。そのうち約1800本が賞味期限切れだったため、市民からの指摘を受けて富津市がお詫びし、「飲用ではなく生活用水として使ってほしい」と呼びかけていると、2019年9月12日付の東京新聞夕刊が報じている。

『賞味期限切れ「飲料水」配布 富津市、生活用水用を誤って1800本』

ペットボトル水の賞味期限は飲めなくなる期限ではなく、通気性のあるペットボトルから水が蒸発し内容量が変わるための「期限」

2019年7月29日付の熊本日日新聞では、熊本市が、ほぼ賞味期限切れの130トンの備蓄水に困っており、花壇の水やりや、足を洗うなどに使っていると報じていた。

その際、筆者は、「なぜ賞味期限切れの水は十分飲めるのに賞味期限表示がされているのか?ほとんどの人が知らないその理由とは」という記事を書いた。

ペットボトルの水に表示されている賞味期限は、飲めなくなる期限ではない。

長期保管中に水が蒸発し、表記してある内容量を満たさなくなるため(計量法に抵触するため)、規定の内容量をきちんと満たすための期限である。

もちろん、直射日光や高温・高湿を避けるなど、保管がきちんとしていたことは、飲用するための前提条件である。

が、ただでさえ水が不足する非常時には、五感で味を確かめて、飲用として使うことは十分可能だ。

2018年7月3日付の産経新聞の記事「賞味期限を過ぎたペットボトルの水は飲めるか、飲めないか?」の中でも、日本ミネラルウォーター協会事務局長が、「水の賞味期限は、表示された容量が確保できる期限です」回答している。

前述の東京新聞の記事によれば、ペットボトルに表示されている期限は2018年4月とのこと。まだ過ぎてから1年4ヶ月程度だ。

賞味期限は、品質が切れる日付ではない

ペットボトルの賞味期限については、関係者しかわからないのは仕方ないかもしれない。筆者も、食品メーカーに長く勤めていたのに、ペットボトル水の製造メーカーと契約して仕事をするまでは、まったく知らなかった。

だが、それ以外の食品や飲料に関しても、「賞味期限」のことを、「品質が切れる期限」だと誤解している人があまりにも多い。

たとえペットボトルの水の賞味期限が切れていたとしても、それは「美味しさの目安」が過ぎていたにすぎない。

品質が劣化しやすい、日持ちがおおむね5日以内のものに表示される「消費期限」とは違う。

賞味期限(黄)と消費期限(赤)のイメージ(農林水産省HPより)
賞味期限(黄)と消費期限(赤)のイメージ(農林水産省HPより)

消費者も、行政も、メディアも、賞味期限を誤解している現実

今回、千葉県富津市に「期限を過ぎたものを配ったのでは」と指摘したのは市民だった。

そして、それを受けて、「このような事態を招き申し訳ない」とお詫びし、「飲用しないで」と呼びかけたのは行政(市)だ。

その事態を報じたのがマスメディア。

消費者(市民)も、行政も、マスメディアも、全員、「賞味期限が何たるか」を誤解している、ということになる。

本来は、消費者自身が、賞味期限の意味を理解していなければならない。

消費者が理解していなかったとしても、行政が、市民から指摘を受けたときに「この賞味期限というのは、品質が切れる日付ではなく、美味しさの目安なんですよ」と説明できなければならない。保管条件さえきちんとしていれば、職員が確認の上で、水不足の事態の際、飲用として使うことはできる。

賞味期限が過ぎたものを「誤って配った」と報じたメディア。記事を書いた記者も、この記事を通した責任者も、賞味期限の意味をきちんと理解しておられないのだろう。

災害時は、停電や、需要と供給の齟齬(そご)などにより、どうしても食品ロスが出ざるを得ない。

だからこそ、限りある水や食料は、できる限り、人が飲食するために使ってほしい。

マスメディアが十分に報じているとはいい難いが、千葉県の台風15号の被害は甚大で、飲食品も十分にあるとはいえない。まだ十分に飲める水は、飲むために使ってほしい。

そして、世界を見渡すと、真水を使えない人が、まだ8億人近くもいるのだ。

SDGsの6番では「安全な水とトイレを世界中に」と目標を定めている(国連広報センターHPより)
SDGsの6番では「安全な水とトイレを世界中に」と目標を定めている(国連広報センターHPより)

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なぜ賞味期限切れの水は十分飲めるのに賞味期限表示がされているのか?ほとんどの人が知らないその理由とは

賞味期限を過ぎたペットボトルの水は飲めるか、飲めないか?(2018年7月3日付 産経新聞)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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