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1人1日あたりのごみ排出量 少ない自治体ランキング(人口3区分トップ10)

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
プラスチックごみ(写真:ロイター/アフロ)

年間のごみ処理費に2兆1,519億円の税金を費やしていることを講演で話したところ、国立大学の名誉教授から「国立大学の年間予算は、さきほどお話しされたごみ処理費の半分です」と言われた。

それを記事に書いて(1)SNSで投稿したところ、ごみ焼却を正当化する意見が見られた。

食品ロスを含む生ごみは、重量の80%以上が「水」である。水を多く含むものは燃えにくい。京都市のデータによれば、プラスチックの燃えやすさに対して、生ごみは1割しかない。燃えにくいものを燃やすために膨大なエネルギーと多額の税金を使うのはもったいない、ということを述べている。

ごみの燃えやすさ(カロリー)の比較(京都市)
ごみの燃えやすさ(カロリー)の比較(京都市)

1人1日あたりのごみ排出量少ない自治体ランキング

環境省は、毎年3月末に、一般廃棄物の量および処理費用、1人1日あたりのごみ排出量が少なかった自治体を発表している。自治体は、人口別に3区分され(10万人未満、10万人以上50万人未満、50万人以上)それぞれの区分のトップ10が発表される。

2025年3月末に、新たなデータが発表されるが、ここであらためて、現在の最新のランキングを見ておきたい。2024年3月末に発表された、2022年度のデータに基づくものである(3)。

人口50万人以上の自治体 トップ10

まず、人口50万人以上の自治体から紹介する。

環境省のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作
環境省のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作

1位 東京都八王子市

2位 愛媛県松山市

3位 京都府京都市

4位 神奈川県川崎市

5位 神奈川県横浜市

6位 埼玉県川口市

7位 静岡県浜松市

8位 広島県広島市

9位 埼玉県さいたま市

10位 千葉県船橋市

以上

1位の八王子市と2位の松山市は、ほぼ毎回、1位と2位を競っている。松山市は、かつて9年連続で1位を保っていた。3位の京都市は、コロナ禍に入った年には大幅にごみが少なくなり、1位を獲得した。

人口10万人以上50万人未満の自治体 トップ10

次に人口10万人以上50万人未満の自治体を見てみよう。

環境省のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作
環境省のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作

1位 東京都日野市

2位 静岡県掛川市

3位 東京都小金井市

4位 東京都西東京市

5位 東京都小平市

6位 東京都府中市

7位 東京都東村山市

8位 東京都立川市

9位 東京都国分寺市

10位 静岡県藤枝市

以上

東京都の西部と静岡県の自治体がトップ10を占めている。これらの自治体のこれまでの取り組みについては、行政のごみ政策に詳しい山谷修作先生(4)の著書に詳しく書かれている。

人口10万人未満の自治体 トップ10

最後に、人口10万人未満の自治体について見てみたい。

環境省のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作
環境省のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作

1位 長野県川上村

2位 長野県南牧村

3位 徳島県神山村

4位 長野県北相木村

5位 北海道更別村

6位 宮崎県高原町

7位 長野県泰阜村

8位 長野県阿南村

9位 長野県下條村

10位 長野県中川村

以上

長野県、徳島県、北海道、宮崎県の小さな自治体がランクインしている。1位の長野県川上村と2位の長野県南牧村は、自治体が生ごみを回収していない。すべて住民が自宅の庭や畑でコンポスト(堆肥)などとして処理している。

また、事業者のごみが出ない、あるいは少ないことも、平均排出量を少なくするのに貢献している。

ごみを減らすには食品ロスを減らすこと 

以上、全国の自治体のごみ少ないランキングを見てきた。東京都23区については別にランキングがあるが、最新のデータで最も少ないのが杉並区である。杉並区からは2024年に講演に呼んでいただき、3回講演した。住民の意識が高く、ごみを減らすためならごみ袋有料化も厭わない、といった意見が印象的だった。

1980年から家庭ごみの中の食品ロスについてデータをとっている京都市(および京都大学)のデータによれば、家庭から出る燃やすごみのうち、およそ40%が、食品ロスを含めた生ごみ(厨芥類)である(2)。

家庭から出る燃やすごみのうち約40%が生ごみ(京都市の生ごみデータ)
家庭から出る燃やすごみのうち約40%が生ごみ(京都市の生ごみデータ)

京都市の場合、食品ロスのうちのおよそ半分が、まったく手がつけられていない「手つかず食品」で占められている。

手つかず食品の賞味・消費期限切れ状況(京都市)
手つかず食品の賞味・消費期限切れ状況(京都市)

生ごみ重量のうち、80%以上が「水」だ。

したがって、ごみ重量を減らそうと思ったら、食品ロスを含めた生ごみを減らすこと。

食品ロスと生ごみを減らすだけで、ごみは激減する。

筆者は2017年から家庭用生ごみ処理機でごみを減らし、乾燥前後の重量を1800回計測してきた。その7年間の平均でも、生ごみは乾燥させることで70%以上、重量が減った。

全国でごみ削減に取り組む自治体の方は、ごみを減らすためには食品ロスを減らすこと、生ごみを減らすことに注力していただきたい。

燃えにくい「水」を燃やすために巨額の税金を使うくらいなら、それを減らした分、教育や福祉、医療、雇用などに充当してほしい。

参考資料

1)食品ロスを含むごみ処理、国立大学90法人運営交付金の2倍費やしていた 教育予算がごみ焼却費の半分とは(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2025/1/6)

2)京都市の生ごみデータ(京都市)

3)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について(環境省、2024/3/28)

4)山谷修作先生ホームページ

5)助成金で半額購入した生ごみ処理機を7年間、1800回使ってみた結果(井出留美、パル通信、2025/1/6)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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