食品ロスを含むごみ処理、国立大学90法人運営交付金の2倍費やしていた 教育予算がごみ焼却費の半分とは
先日、東京の築地本願寺で開催された、おてらおやつクラブ(1)のイベントで食品ロスの講演をおこなった。
その際、日本の一般廃棄物処理費の年間予算が2兆1,519億円に及ぶ(2)ことを話した。
この廃棄物に含まれる食品ロスや生ごみは、重さの80%以上が「水」であり、燃えにくいものに膨大なエネルギーやコストをかけて燃やしている、貴重な税金を浪費している、だからこそ減らさなければならないのだと伝えた。
すると、講演の後、ある国立大学の名誉教授の方が、名刺交換に来てくださって、こう言った。
「国立大学の予算って、全部でいくらぐらいか知っていますか?」
わからない、と答えると、「さきほど説明された、ごみ処理費の半分ですよ」とおっしゃった。
え?
全国、北海道から沖縄まである国立大学の全部の予算が、ごみ処理に使っている予算のたった半分しかないの?
調べてみたら本当だった。
文部科学省の資料(3)を見てみると、令和2年度(2020年度)の国立大学90法人の運営費交付金予算額は年間で1兆1,070億円しかない。
しかも、その配分は、東京大学がもっとも多く、それ以外の大学は、1校をのぞいて東大の半分以下しか予算が割かれていない(4)。
筆者は、今も国立大学に仕事で関わっているので、先生方から「予算がない」「雑用ばかりで研究ができない」という言葉は聞いていたが、実際にデータで見てみると衝撃だった。
日本のごみ焼却率は世界ワースト1位
日本は、ごみ焼却率が世界のOECD加盟国と比べてもワースト1位だ(5)。令和4年度(2022年度)のごみ焼却率は79.5%(2)。ほぼ80%を燃やしている。
そして、重量の80%以上が「水」であり、燃えにくい生ごみや食品ロスも、他のごみと一緒にして燃やしている。
年間2兆1,519億円の税金を、ごみを燃やすことと、ごみ処理施設の維持管理費に費やしている。
ごみを減らせば、さらに言えば、その中に含まれる食品ロスや生ごみを減らせば、こんなに巨額の税金を使わなくて済むのではないか。
未来の世代を育てるための教育費に、ごみ処理費のたった半分しか投資していない。
国立大学の名誉教授が嘆くのも無理はない。
これを知ってもなんとも思わない、だれも何もしない、となれば、せっかくの日本は悪くなっていくばかりだろう。
生ごみを乾かそう
政治に期待できないとなれば、まず自分たちでできることを今すぐしなければならない。日本の自治体の中には、生ごみを分別回収し、資源として活用しているところが複数ある。食品ロスや生ごみのような有機廃棄物は、燃やしたり埋め立てたりする処理の過程で温室効果ガスを排出し、気候変動の要因にもなっている。世界中で自然災害が頻発し、平均気温が上昇している。そのような状況を改善するため、燃やしたり埋め立てたりせず、資源として活用するのが、世界の潮流となっている。
せめて、食品ロスを含む生ごみは、乾かすだけでも重量が激減する。
筆者は、家庭用生ごみ処理機を7年間、1800回以上使い、その前後の重量変化を計測してきた(6)。
生ごみ処理機を使う際は電力を使うが、石油系由来のエネルギーではなく、100%自然エネルギーを提供する電力会社と契約し、再生可能エネルギーを使っている。
国立大学90法人の年間予算の合計金額より、ごみを燃やすための予算が2倍も多いなんて、どう考えても、貴重な財源である税金の使い方がおかしいと思う。
参考資料
2)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について(環境省、2024年3月28日)
3)国立大学法人運営費交付金を取り巻く現状について(文部科学省、2020年10月30日)
4)国立大学法人運営費交付金の配分状況(文部科学省、2020年11月17日)
5)世界のごみ焼却ランキング 3位はデンマーク、2位はノルウェー、日本は?(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2021/4/20)