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藤井聡太竜王(19)全勝で突き抜けるか? 永瀬拓矢王座(29)意地を見せるか? 王将リーグ最終戦開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月24日10時。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ最終戦の3局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。対戦カードは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)

△藤井聡太竜王(5勝0敗)-▲永瀬拓矢王座(3勝2敗)特別対局室

▲羽生善治九段(3勝2敗)-△糸谷哲郎八段(0勝5敗)高雄

▲近藤誠也七段(3勝2敗)-△豊島将之九段(2勝3敗)棋峰

※広瀬章人八段(2勝4敗)はすでに全局終了

 最も格の高い特別対局室では藤井-永瀬戦がおこなわれます。

 藤井竜王は床の間を背にして上座、永瀬王座は下座に着きました。

 現在の将棋界の席次(序列)は藤井1位。永瀬3位。そして渡辺明王将(名人・棋王)が2位です。

 すでに王将挑戦を決めている藤井竜王は四冠。渡辺王将は三冠。四冠VS三冠のタイトル戦は史上初となります。

 七番勝負の組み合わせはすでに決まりましたが、リーグ最終戦は変わらずおこなわれます。

 藤井-永瀬戦はもちろん注目の一番。両者ともにいつもと変わらず、全力を尽くしての戦いとなるでしょう。

 すでに残留を決めている永瀬王座にとっては順位をめぐる戦い。勝てば次期リーグで2位が確定します。

「それでは時間になりましたので、永瀬先生の先手番でよろしくお願いいたします」

 定刻10時。記録係が対局開始の合図をして両者一礼。持ち時間4時間の対局が始まりました。

 永瀬王座は初手▲2六歩と飛車先の歩を突きます。

 藤井竜王はいつもの通り、紙コップに注いだお茶を口にします。そしてデビュー以来まったく変わらない後手番での2手目、△8四歩を指しました。

 戦型は相掛かりに進みました。

 永瀬王座は2筋の歩を交換するモーションで飛車を縦に走り、7筋の歩を取るモーションで飛車を大きく横にすべらせました。先手の永瀬王座は歩を得するメリットがある一方、飛車の形が不安定になり、それを元に戻すには手損をするなどのデメリットがあります。損得勘定はほぼイーブン。現代将棋の最前線です。

 31手目。永瀬王座は7筋の飛車を再び2筋に戻しました。

 10時45分の時点では、藤井竜王が32手目を考えています。

 藤井竜王の今年度成績は43勝8敗(勝率0.843)です。

 藤井竜王は3日前、日本シリーズ決勝で豊島将之九段(前竜王)に敗れ、公式戦の連勝は9でストップしました。勝率も史上最高ペースからは少し後退です。とはいえ、依然目をみはるような恐ろしい成績であることに変わりはありません。

 永瀬王座の今年度成績は21勝16敗(勝率0.568)です。

 永瀬王座の直近の対局はA級順位戦で、斎藤慎太郎八段に敗れています。

 A級は5回戦まで終わり、斎藤八段が独走態勢に入りつつあります。永瀬王座はこちらでは当面、残留を目指しての戦いとなりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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