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メッシの一段上がる「ギア」にペドリとデ・ヨングの存在感。解決策を探し求め続けるバルセロナ。

森田泰史スポーツライター
ドリブルするメッシ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

リオネル・メッシが、ギアを上げてきている。

バイエルン・ミュンヘン戦の2-8の大敗、退団騒動、ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長の辞任...。思えば、この半年の間、メッシとバルセロナを取り巻く状況は混沌としていた。

筆写作成
筆写作成

■クーマン監督の就任

2020年1月13日。バルセロナがエルネスト・バルベルデ元監督と契約解除を行った日付だ。それは実質上の解任だった。

だがキケ・セティエン前監督の就任は問題を解決するものではなかった。当時、バルセロナのトップターゲットはシャビ・エルナンデス監督(現アル・サッド)で、その次がロナルド・クーマン監督だった。3番手で登板した指揮官には荷が重かった。

そして、先述した「バイエルン戦の2-8」があり、監督交代が行われた。満を持して、クーマン監督が就任する。

オランダ人指揮官は、まずシステムチェンジに取り組んだ。伝統の【4-3-3】を一旦あきらめ、【4-2-3-1】を選択。フレンキー・デ・ヨングを中心に据えるためにダブルボランチを採用した。一方で、メッシの守備の負担を軽減するため、ファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)を復活させた。

シーズン序盤こそ新システムに苦労したが、気付けばメッシはリーガエスパニョーラで11得点をマークしており、得点ランキングでルイス・スアレス(11得点)と首位を争っている。

新加入のペドリ
新加入のペドリ写真:なかしまだいすけ/アフロ

■布陣の再変更

メッシの得点ペースが上がってきた。その背景には、布陣の再変更がある。クーマン監督は【4-3-3】にシステムを戻した。

思えば、クーマン監督としては難しいシーズンだった。夏の段階で、メンフィス・デパイ、ジョルジュ・ワイナルドゥム、エリック・ガルシアらが補強候補に挙がったものの、到着したのはセルジーニョ・デストのみであった。

「たられば」になるが、デパイを獲得できていれば、アトレティコ・マドリーに移籍したスアレスの代わりになり、攻撃で深みを与える存在になっていたはずだ。ワイナルドゥムが加入していたら、彼をインサイドハーフに入れ、当初から【4-3-3】を維持できていただろう。

しかしながら新型コロナウィルスの影響バルセロナの財政は圧迫されていた。現有戦力で戦うしかない。それがクーマン監督の決断だった。

チームの中心にいるデ・ヨング
チームの中心にいるデ・ヨング写真:ロイター/アフロ

■指揮官の信頼と新たなパートナー

ただ、時として禍は転じて福と為す。バルセロナの場合、大型補強ができなかったため、ペドリ、アンス・ファティ、ロナウド・アラウホ、オスカル・ミンゲサが活躍する場が整った。

とりわけ、ペドリの「発掘」は大きかった。トップ下、ボランチ、インサイドハーフでメッシのポジションを見ながら立ち位置を決定でき、メッシが欲しいタイミングでボールを預けられる。技術と知性を兼ね備えた18歳はスアレスが去ったバルセロナでメッシの良きパートナーとして攻撃を共創している。

「チームがメッシに合わせるのではない。メッシがチームに合わせるんだ」とクーマン監督は主張してきた。「クーマンの就任は正しかった」とメッシが語るように、彼らの関係は良好だと言える。先のスペイン・スーパーカップ決勝のアスレティック・ビルバオ戦では、キャリア初の退場を経験したが、最近のメッシは総じて快適にプレーしている。そして、メッシが楽しそうにプレーしている時のバルサは強い。

筆写作成/数字はリーガのもの
筆写作成/数字はリーガのもの

■会長選の行方

また、バルセロニスタが気を揉んでいるのが会長選の行方だ。

バルトメウ前会長が辞任してから、カルレス・トゥスケッツ氏が暫定的に会長を務めている。当初の予定では1月24日に後任を決定する会長選が行われるはずだった。だがコロナ禍の現状を配慮して、郵送での投票もできるようになる可能性があるが2月の後半(2月28日)あるいは3月の前半(3月7日)に投票は先送りされることになりそうだ。

そのなかで日程変更に不満を漏らしたのがジョアン・ラポルタだ。会長選に正式に出馬するためには、2257 名の署名を集めなければならない。この「予備選」で、ラポルタは10257名の署名を集めた。ビクトル・フォン(4710名)、トニ・フレイシャ(2821名)を大きく上回る数字だ。無効票があったとはいえラポルタの集めた署名は1万名に近かった。仮に1月24日に会長選が行われていた場合、ラポルタが当選していた可能性は高い。

それが仕切り直しになった。加えて、現在、騒がれているのがE・ガルシア獲得の可能性だ。ジェラール・ピケが負傷で長期離脱を強いられているなかで、E・ガルシアを今冬の移籍市場で獲得すべきかという問題だ。これについて、「現理事会ではなく新会長が決めるべき」と語るラポルタ、「次の夏に向けていま確保すべきだが現理事会が決めること」と話すフォント、「次の夏にフリーになるのでこの冬に獲得すべきではない」と述べるフレイシャ、異なる主張がなされている。

補強だけではない。現行契約が2021年夏までのメッシの残留、クーマン監督の進退問題、解決すべき課題は山積みだ。時間に追われながら、バルセロナはソリューションを見つけなければならない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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