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田中大貴のアグレッシブなプレーが復活。アルバルク東京の命運を握るのはやはりこの男!

青木崇Basketball Writer
渋谷との2戦目で積極的なプレーを見せチームを牽引した田中 (C)B.LEAGUE

 Bリーグでは昨シーズンMVPを受賞し、日本代表でも欠かせない選手としても認知されている田中大貴。オールラウンドなオフェンス能力と質の高いディフェンスができることに加え、表情をあまり変えることなく黙々と仕事を成し遂げる冷静さを持ったガードだ。

 アルバルク東京が2シーズン連続でB1制覇を成し遂げ、途中でキャンセルとなった昨シーズンも最高成績を残せた大きな理由の一つが、『タナカーク』と呼ばれるアレックス・カークとのピック&ロール。タナカークが今シーズンも東京の大きな武器になっていることに疑いの余地はない。

 しかし、対戦相手は何としてでも王者を倒そうという強い意識で挑んでくる。試合序盤で受け身になってしまうと、12月2日の富山グラウジーズ戦や9日の秋田ノーザンハピネッツ戦のように19点差の大敗という結果が出ても不思議ではない。12日にサンロッカーズ渋谷に2点差で競り負けると、東京は5試合で4敗という不調に陥った。

 ルカ・パヴィチェヴィッチコーチがチームを率いるようになって以降、東京が5試合で4敗を喫したのは2018-19シーズン以来2度目。富山戦で104点を献上するなど負け試合の平均失点が88.3という数字は、ディフェンスの出来が悪かったことを示している。しかし、個人的により気になったのは、チームの核である田中がオフェンス面でアグレッシブさを欠いていた点である。

 ピック&ロールからディフェンスとのズレを作り出しても、得点を狙ってゴールへアタックするよりも、ペイントの外からチームメイトへキックアウトのパスを出すシーンがしばしば見られた。パヴィチェヴィッチコーチのシステムを熟知している田中が、チームのためにしっかりオフェンスを遂行しようとしているのは間違いない。しかし、負け試合のプレーを見た印象は"Too unselfish"、意訳すれば『あまりにも自分を出していない』と思えたのだ。

 アグレッシブさに欠けると感じさせるスタッツの象徴は、この期間の負け試合における田中のフィールドゴール試投数がいずれも8本以下だったこと。先週末に対戦した渋谷との初戦では、29分58秒の出場時間でわずか5本しか打っていない。その点についてパヴィチェヴィッチコーチに質問すると、次のような答えが返ってきた。

「私がこのチームに来て以来、彼はフランチャイズを代表する選手であり、リーグのMVPにもなった。オフェンスでもディフェンスでも、システムを熟知しているのが強みだ。しかし、新しい選手が加わったこともあり、システムの遂行がうまくいかなくなって心地よいプレーができなくなると、大貴は少し後に引いてしまうところがある。Bリーグ、アジア、世界のどんな相手であろうが、決して引くべきじゃないと私は言い続けている。しかし、彼の本性として、我々が悪いプレーをし始めるまでちょっと引いてしまうところがあると思う。彼がアグレッシブに持ち味を出さなければいけないと認識しなければ、我々は勝てなくなる」

渋谷との2戦目でアグレッシブさを発揮して16点を記録した田中 (C)B.LEAGUE
渋谷との2戦目でアグレッシブさを発揮して16点を記録した田中 (C)B.LEAGUE

 田中自身も「負け続けていたので、ファンの皆さんには情けない姿を見せてしまった」と語ったように、もどかしさがあったのは明らか。パヴィチェヴィッチコーチが『生きる死ぬかに値するゲーム』と口にした渋谷との2戦目、田中は1Qからアグレッシブにゴールを狙う姿勢を見せ、試合開始から6分33秒間で4本のシュートを打って6点をマークし、主導権を握るきっかけを作る。その後もドライブでアタックする姿勢を何度も見せた結果、11本中6本のフィールドゴールを決めるなど16点、6アシストを記録し、東京が104対80で快勝する要因になった。

 試合後、得点を狙うこととゲームメイクとのバランスがよくないという印象を持っているかと質問すると、田中はこのように答えた。

「自分がうまくやりたいことをやらせてもらえていない状況だと思います。負けが込んで精神的にきついものもありますし、調子のいい体の状態でもないと感じます。いろいろなところに正直問題を抱えています。そういった中でも主力である自分だったり、安藤だったり、アレックスだったりがしっかり仕事をしないと勝てないレベルだと思う。本当に負けが続いて結構きつい状態なんですけど、その中でも最低限今日みたいにチームへ何かをもたらさないと、この後も負けが込んでいくと思うので、そこは踏ん張りどころかなと。自分に発破をかけて、きつい中でもいいパフォーマンスができるように、次も栃木(宇都宮ブレックス)との試合がありますけど、自分自身へのチャレンジとして、ここから上向いていけるようにやりたいと思います」

 決して万全な体調でないにせよ、田中がアグレッシブに攻め姿勢を出し続けることは、東京が勝利するうえで欠かせない要素。それがなくなってしまうと、3度目のB1タイトル獲得は難しくなる。渋谷に快勝した後、パヴィチェヴィッチコーチが残した言葉は、田中のパフォーマンスがチームにとっていかに重要かを象徴するものだった。

「彼がいかにアグレッシブだったかわかるはずだ。それが続くことを私は強く望んでいる」

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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