Yahoo!ニュース

間も無くゴング! 元統一ヘビー級チャンプの再起戦

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 2019年6月1日にWBA/IBF/WBO統一ヘビー級タイトルを獲得しながら、半年後のリターンマッチで王座を手放したアンディ・ルイス・ジュニアの再起戦ゴングが、間も無く鳴る。

 相手はメキシカンの先輩であるクリス・アレオラ。前日計量で、ルイスは256パウンド(116.1kg)、アレオラは228.6パウンド(103.69kg)で秤に乗った。

31歳の減量を成功させたルイス  Photo;Frank Micelotta/FOX Sports
31歳の減量を成功させたルイス  Photo;Frank Micelotta/FOX Sports

 ルイスがアンソニー・ジョシュアを下してメキシコ人初の世界ヘビー級王者となった時の体重は、268パウンド(121.56kg)。リターンマッチで王座を失った際が284パウンド(128.8kg)。確かにスリムになったが、ジョシュアと比較すれば、まだまだ贅肉が目立つ。

 アレオラもまた、腹がダブついている。

3度世界戦を経験しているアレオラ Photo:Frank Micelotta/FOX Sports
3度世界戦を経験しているアレオラ Photo:Frank Micelotta/FOX Sports

 最終記者会見で、33勝(22KO)2敗の元統一王者は言った。

 「キャンプに入った時、俺は310パウンド(140.6Kg)ほどあった。ゆっくりと、でも真剣に体を絞っていったんだ。『太っていた頃と同じパワーがあるのか?』と疑問を感じている人もいるようだが、全く問題ない。

 王座から転落した後、周囲にも自分自身にも俺が何者であるかを示さねばならないと思ってきた。その為に必死でトレーニングした。最高の仕上がりだよ。

 同じメキシコの血が流れたヘビー級のクリス・アレオラのことは、ずっと認めていた。強い選手だし、前に出てくるだろうね。ついに拳を交える日が来たんだと、心が躍るよ。互いにベストコンディションでリングに上がりたい。スピードは俺の方が上だろうな。

 現在のヘビー級選手の中でハンドスピードが一番あるのは、俺だ。以前の自分よりも、更に速くなっている。今回、それを証明しようじゃないか」

Photo:Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 「正直な話、新トレーナーであるエディ・レイノソと組む前は、ボクシングに対する姿勢に問題があった。彼と出会って、心を入れ替えたよ。かつての自分は死に、生まれ変わったんだ。ボクシングは遊びじゃないからね。常に戦える状態にしておかねば。

 今回はエディの教えをリングで披露するさ。一つ一つの動きを完璧に行いたいね。コンビネーションの練習を積んだので、俺の正確なパンチを楽しみにしていてくれ。エディは俺のモチベーションを上げ、自信を植え付けてくれた。メキシコ人のヘビー級ファイターとして、2度世界王座に就く男になってみせるよ」

Photo:Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 ルイスが絶賛するトレーナー、レイソノも話した。

 「非常に意欲的に練習をこなしました。彼は日々、ボクシングを学びましたよ。その攻撃力をお見せするのが楽しみです。アンディにとって、5月1日は新たなスタートです。  必ず世界チャンプに返り咲かせますよ。私たちはアレオラを尊敬していますが、仕事を成し遂げるのは、こちらですね」

Photo:Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 アレオラは、2009年9月26日にビタリ・クリチコの持つWBCヘビー級タイトルに挑み、10回終了TKO負け。2014年5月10日には同タイトル空位決定戦に出場し、バーメイン・スタイバーンに6ラウンドでKO負け。2016年7月16日は、同チャンピオンだったデオンテイ・ワイルダーに挑戦して8回終了時にTKO負けと、黒星を重ねながらもリングから離れられずにいる40歳である。

 2003年のデビュー後、38勝(33KO)6敗1分けのアレオラも、試合3日前の記者会見で語った。

 「この試合に向け、俺は若返った。早くリングに上がりたいぜ。今日は単なる会見だが、アンディの姿を見たら血が湧き上がって来た。俺は常に、アンディのようにボクシングで何かを成し遂げた選手に勝つことを目指してきた。ああいうトップ選手を倒すことに価値があるんだ。

 俺たちは200パウンド(90.7kg)を超えるヘビー級だ。一発一発のパンチが深いダメージにつながる。そういう危険なビジネスなんだ。アンディは技術のある選手だが、その対応も十分にやっているよ。確かに、あのハンドスピードは今のヘビー級で最速だろう。でも、ヤツのパンチを食わないように頭を動かすさ。アンディの動きを理解したうえで対策を立てた。

 厳しいトレーニングを重ねて来たが、体重を落とすために、どうこうした事なんか無い。普通に練習してりゃあ、コンディションは作れるよ。それを当日、ご覧に入れたいね」

Photo:Sean Michael Ham / TGB / Premier Boxing Champions
Photo:Sean Michael Ham / TGB / Premier Boxing Champions

 「俺はアンディをリスペクトしているからこそ、いつも以上に練習した。リングに上がったら友情は捨て、食うか食われるかだ。激しい打ち合いが展開され、人々を魅了する素晴らしい一戦になるだろう。俺が勝って、歴史に名を刻むぜ。

 一瞬一瞬、一つ一つの動きを、トレーナーであるジョー・グーセンの指示通りにやってきた。ノンストップ・ディフェンスを身に付けた。我がチームのアドバンテージさ。そのうえでカウンターで仕留めようと考えている。ジョーはいつも俺を注意深く観察してくれた。心から感謝しているよ」

Photo:Frank Micelotta/FOX Sports
Photo:Frank Micelotta/FOX Sports

 ゴングまで残すところ半日。どんな結果が待ち受けているか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事