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ふもとは春でも山は冬 寒気を伴なう小さな低気圧と寒冷前線を持つ大きな低気圧に注意

饒村曜気象予報士
福島県 五色沼(写真:アフロ)

ゴールデンウィークは、上空に強い寒気が入り、局地的な雷と突風、豪雨で始まりました。

寒気を伴う小さな低気圧

4月29日9時の地上天気図を見ると、日本海の佐渡島付近に、前線を伴わない小さな低気圧があります(図1)。

図1 地上天気図(4月29日9時)
図1 地上天気図(4月29日9時)

このような小さな低気圧は、上空に強い寒気が入っていることの反映です。

小さな低気圧といっても、大気が不安定となって積乱雲が発達し、局地的な雷と突風、豪雨となりますので注意が必要な低気圧です。

寒冷前線をもつ大きな低気圧

5月1日の予想天気図を見ると、オホーツク海南部に低気圧が弱まりながら進んできます。気象庁では、この低気圧に対して寒冷前線を描いていません。寒冷前線が活発にはならないと考えているからと思いますが、この低気圧は潜在的な寒冷前線を持っています(図2)。

図2 予想天気図(5月1日9時の予想)
図2 予想天気図(5月1日9時の予想)

等圧線を見ると、東北地方南部から中国地方にかけて、気圧が低くなっているところが細長く伸びていますが、ここが潜在的な寒冷前線の位置です。

潜在的とはいえ、通過時には大荒れとなる可能性もあり、新しく発表される気象情報に注意が必要です。

その後、ゴールデンウィーク後半は、雲が多いものの晴れの天気が続きそうです(図3)。

図3 週間天気予報(4月29日20時発表)
図3 週間天気予報(4月29日20時発表)

春山の危険性

春は気が緩み、山頂付近の冬の厳しい寒さも甘く見がちです。その結果、春の感覚のまま軽装で山に登ったり、ゆとりのないスケジュールで行動してしまうことが多く、遭難が多発します。

また春には、強い寒気が頻繁に流れ込み、晴れていても、みるみる吹雪になることもあります。また、雪崩や雪解けによる谷川の増水、雪の残っている渓谷での滑落事故による遭難などの発生がみられます。

春の山は冬の山以上に危険なことが多いにも関わらず、近年は山頂近くまで自動車道があるところが多くなり駐車場から軽装備のまま入山したり、無理に計画通りに行動をとろうして遭難するケースが後をたちません。

ハイヒール登山まで見受けられることがあります。

ふもとは春でも

東京と富士山頂の気象を比較すると、気温は平均でも20℃以上の差があります(図4)。

日によっては、もっと大きな差があります。

図4 東京と富士山頂の気象の比較
図4 東京と富士山頂の気象の比較

風も、最大風速が毎秒10メートル以上を観測した日は、12倍もあります。

このように、ゴールデンウイークで「ふもとは春といっても、山ではまだ真冬」ということがよくあるのです。

ゴールデンウィークは、無事であれば、来年も、その次の年もありますので、気象情報の入手に努め、引き返す勇気が必要と思います。

くれぐれも安全第一です。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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