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アフガニスタン相次ぐ大地震 死者2千人超 タリバンが女性抑圧で支援にも影響 現地緊急インタビュー

堀潤ジャーナリスト
ピースウィンズパートナー団体メンバーが現地に入った

今月7日、アフガニスタン西部を襲った2度の大地震は多くの人たちの命を奪った。

現地で実権を握るイスラム主義勢力タリバンの暫定政権は8日、2,455人が死亡し、負傷者は2,000人超、1,320棟の住宅が損壊または倒壊したことを明らかにしたと、ロイター通信などが報道した。

被害の大きいヘラート州では「倒壊率100%」と言われ、集落のすべての建物が倒壊し、住民全員が被災したという場所もある。

緊急支援を続けるNGOピースウィンズ・ジャパンのパートナー団体が、11日、深刻な被害が出ている地域に到着し、支援のための調査を開始した。

現場で何が起きているのか。どのような支援のニーズがあるのか、ピースウィンズアフガニスタン事業責任者の加藤真希さんにリモートで現状を伺った。

タリバンの支配によって支援を遅らせる様々な影響も明らかになった。

堀)

地震発生から時間が経ち、今も現地では余震が続いていて、今日もまた地震の1報なども入ってきていましたけども、状況はいかがでしょうか。

加藤)

今回のアフガニスタンの西部地域でイランの国境地帯にあたるんですけれども、西部で大きい地震がもう複数回発生していて、10月11日、本日の早朝、向こうの時間でいうと本当にもう真っ暗な未明の時間に余震が起こったと一報が入りました。

調べてみるとマグニチュード6.3を記録しているということで、これも余震ではなくて、もはや本震で最初に起こった地震よりも大きい可能性もあるということで、その後もそれに続く何度も何度も揺れているみたいで、まだ予断を本当に許さない状況が今も続いていると見ています。

加藤さんは10年以上アフガニスタに関する支援に携わってきた
加藤さんは10年以上アフガニスタに関する支援に携わってきた

堀)

まさにちょうど昨日からパートナー団体も入られたと聞いているんですが、現状どうでしょうか?

加藤)

この数日間は、週末を挟んで関係者皆、情報収集に奔走している状況です。私たちは地震が起こった翌日から連絡をとり始めて、最短でとにかく現場入りして情報収集に努めようということで、パートナー団体に向かってもらいました。

私たちは普段の支援はアフガニスタンの東部を拠点に活動をしているのですが、大地震の被災地は西部のヘラート州という場所で、ここからは遠く離れているのですが、今、スタッフ3名が現地入りしたところです。

余震が続いている中で、1日ごと、もしくは数時間ごとに情報がアップデートされていて伝えられる被害は深刻です。国連のリポートなどもありますが、現時点で亡くなったと確認できた方は、2000人を超えているんじゃないかと言われています。正式な数字は刻々と変わっているので、今日の地震も含めますとますます被害が増大していくという懸念を抱いています。

西部ヘラート州は深刻な被害が拡大している 提供:ピースウィンズ・ジャパン
西部ヘラート州は深刻な被害が拡大している 提供:ピースウィンズ・ジャパン

今、現地の支援として必要とされている分野は、食料であり、シェルターと呼ばれる仮の住居。一番深刻だった群においては、公の情報源で確認しても、家屋の100%が倒壊しているというデータも公表されています。

地震の規模の大きさがそれで伺えると思います。

その地域では住民全員が被災している可能性が極めて高いということですので、やはり必要になってくるのは家屋、シェルターですね。

仮の避難場所、水、衛生面での支援、そういったものも必要です。

ニーズといえば忘れてはいけないのは精神的なケアです。子供たちも被災していたり、親しい人を亡くされたという方の長期的なケアも必要になります。ニーズはあらゆるところにあります。

ですので、大事なのは各団体がいかに強みを活かして分担していくかという調整です。そうしたことが現場では忙しく行われているんですね。

堀)

ヘラート州とは、具体的にはどういった特徴の場所になるんですか?

加藤)

ヘラート州はアフガニスタンの国の中でも大都市の一つで、首都カブールに続く、人口的にも、商業的にも大きい地域です。イランと接していますので、イランの文明や文化もすごく近しいものがあります。

Google earthより
Google earthより

今回、ヘラート州の中心都市は大きな被災はなかったということで、今現在派遣しているスタッフの安全も確認していますし、まずはそこを拠点により地方部の被害が深刻です。

一見、土でできた家屋が多い、そういう地域では少しの揺れでも被害が大きく出てしまいますので、まさに今回「家屋倒壊率100%」と言われている、そういう地域が深刻な被害に遭われています。

重要なポイントとしては、この地震が起こる前から、アフガニスタンではタリバン暫定政権という「政変」が起こったことで、経済や社会がすごく混乱しているという状況がまず前提としてあります。

ヘラート州 11日撮影 提供:ピースウィンズ・ジャパン
ヘラート州 11日撮影 提供:ピースウィンズ・ジャパン

実はこの地震が起こる直前に、私たちが拠点としている東部、東側の方で新たな問題が発生しております。

東側の地域は、パキスタンと国境を接している地域で、その国境沿い、パキスタン側に長らく居住していたアフガン難民が、パキスタン政府によって帰還を強いられる事態に陥っています。BBCなども報道してましたけれども、170万とも言われる大変多くの難民が一気に国境からアフガニスタンに帰還する事態への対応が緊急で必要になっていました。

人道危機に陥る可能性があるので、私たちも支援の準備を始めていたところです。突然家を追われてアフガンに帰ってきても、住む場所も、生活の糧もない人が一気に増えるので、そういったことにも対応しなければならない。ですから色々な人道支援関係者がそちらにも気をとられていた中で今回の地震が発生しました。

堀)

ピースウィンズでも先月、まさに「タリバン政変から2年」をテーマにしたシンポジウムなども開いていらっしゃったと思います。

特に女性たち、女子たちの権利、そうしたものがタリバンによって抑圧されていく中で、どのような支援や、課題解決に向けた人々の注目をアフガニスタンに集められるか発信されてきました。災害が発生すると「災害弱者」と呼ばれる方々の中には、女性や子供たちが含まれますよね。その辺の危機感はいかがでしょうか?

9月に開かれたシンポジウム ピースウィンズ・ジャパンFacebookより
9月に開かれたシンポジウム ピースウィンズ・ジャパンFacebookより

加藤)

実は、タリバン暫定政権によって、女性のNGOスタッフも働くことが禁止されてしまいました。これも私たちNGOスタッフとしても衝撃でして、現地パートナー団体の女性のスタッフは現在オフィスに来ることが一切できていないんです。なので実質的に働くことを認められなくなってしまったんですね。

女性の医師など例外的に許されている分野はあるんですけれども、例えば私のように、女性のNGOスタッフが事務所でパソコンでいろんなデータを分析するとか、そういう仕事をすることができなくなってしまったので、現場は本当に困っています。

女性が女性の対象者の方、支援を受ける方、村の方と話すことって、アフガニスタンでは特に大事なので、そこが禁じられてしまったことで本当に苦労しています。

堀)

災害に遭われた方々の心理的なケアだけではなくて、具体的なニーズをヒアリングしたり、そうしたことに女性のNGOスタッフの皆さんや職員の方々が関わることができないとなると、ニーズが埋もれてしまったりとか、支援が遅れてしまったりとか、さらなる孤立を生んだりとかいろいろなことが懸念されますね。

パートナー団体3名が現地に入った 提供:ピースウィンズ・ジャパン
パートナー団体3名が現地に入った 提供:ピースウィンズ・ジャパン

加藤)

はい。そのとおりです。女性が女性と会えることができたらより迅速にものが進むのに、という歯がゆい思いでやっているのが現状です。

堀)

今回現地に入られているパートナー団体の方は、私も以前お話を伺ったことがある方です。

https://gardenjournalism.com/feature/jvc_afghanistan/

サビルラさんという代表ですが今回の支援ではどのようなことをお話しされていましたか?

加藤)

今回の地震の支援にかかわらずなんですけれども、当たり前ですが彼らもやはり、夫であり、父親である一人のアフガン人です。私たちが思うような歯がゆさっていうのを何100倍も悔しさを感じてらっしゃるはずですし、そう伝えてくれます。

サビルラさん 堀潤撮影
サビルラさん 堀潤撮影

サビルラさんも娘さんがいます。大学ですごく一生懸命勉強されていたんですけれども、タリバン暫定政権から「女性は学んではいけない」という「御触れ」が出て以来、学校に通えなくなってしまいました。

そうした絶望も経験しましたし、今は家で何とかして独学でも勉強を続けたいとおっしゃってるんですけど、勉強することが禁じられるっていうのはどう考えても、人間の権利として、基本的人権、人として学ぶ権利を奪われていることにすごく怒っています。長期的にこうした状況で人々を支えていきたいという思いで、日々のこととされていますね。

堀)

改めてですが、今日本にいる一人一人が何ができるのか、そして日本国政府としても何をするべきだと思われますか?

加藤)

今は確かにできることが限られているかもしれないですが、私たちは緊急支援として西部での支援活動を立ち上げたところです。「寄付」という形で思いを寄せていただきたいです。私たちはアフガニスタンでの信頼できるパートナー団体と共に今までも活動してきた実績があるので、そこに思いを託していただきたいというのが一つ大きいお願いになります。

Yahoo!ネット募金を活用している
Yahoo!ネット募金を活用している

地震が起きても、起きなくても、今現在、アフガニスタンではもう何年も、何十年も社会的な課題にずっと取り組んでいる現地の人たちの姿もあります。

世界中でいろんなことが起こり過ぎていて、私自身もアフガニスタンを見つつ、他の地域で起こっていることに、言葉にならない思いを抱いていますけれども、ニュースにならないところでもそうした方々の活動があるということ、何が起きているのか沢山アンテナを張っていただければと思います。

堀)

加藤さんご自身、アフガニスタン支援に関わってもう長いと思いますけど、どれぐらいになられるのですか?

加藤)

私は最初にアフガニスタンを訪ねたのが2012年でした。それからずっとアフガニスタンの支援に「いちNGO職員」として関わってきていますけれども、その当時から先ほどお話ししたサビルラさんをはじめとしたアフガニスタンの仲間、同僚同士、友達、何と言っていいんでしょうね、人として毎日のように付き合ってきて、いろんな課題に一緒にあーでもないこうでもないと取り組んできました。

真ん中が加藤さん、左隣にサビルラさんがいる 加藤さん提供
真ん中が加藤さん、左隣にサビルラさんがいる 加藤さん提供

私は一人一人「地球人」だという認識を持っています。たまたま出会った人たちはアフガンで生まれた。その人たちと一緒に活動してきたこの期間に、彼らの逞しさやしぶとさ、どんな困難があってもやっぱり泣いて終わるのではない姿に私自身が勇気を持ってもらってきました。

私は長い目でこれからも関わっていければと思いますし、今回の地震支援、例えば終わりがあったとしてもそれ以上、それその先にも関わっていきたいなという思いはずっと持っています。

堀)

ありがとうございました。

ジャーナリスト

NPO法人8bitNews代表理事/株式会社GARDEN代表。2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員研究員。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。2016年(株)GARDEN設立。現在、TOKYO MX「堀潤モーニングFLAG」キャスター、Amazon Music「JAM THE WORLD」、ABEMA「AbemaPrime」コメンテーター。2019年4月より早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。2020年3月映画「わたしは分断を許さない」公開。

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