コロラドアバランチの盟友決別 !? パトリック・ロワヘッドコーチが突然の辞任発表
今季のNHL開幕まで、あと2ヶ月となりましたが、昨日(現地時間)コロラド アバランチが、3季前からチームを率いてきたパトリック・ロワ ヘッドコーチ(HC)の辞任を発表しました。
他の北米メジャースポーツと同様に、NHLでもHCの解任や辞任は、珍しいことではありません。特にシーズン終了後は、トレードやFA。さらにドラフトなどによって、大きく戦力が入れ替るのに伴って、新たなHCを招くチームが毎年見られ、今オフもHC交代のニュースが、4チームから届きました。
しかし、いずれのチームも6月までに新たなHCと契約し、アイスホッケーの新年度となる7月を迎えています。それだけにコロラドが、8月に入ってからHCの辞任を発表するのは、異例中の異例だと言えるでしょう。
▼コロラド黄金期を築いた立役者
辞任発表の時期に限らず、さらに驚きの声が上がっている背景には、コロラドのチーム体制があります。
チームづくりを担うジョー・サキックGMは、コロラドが1996年と2001年に優勝した時、いずれもキャプテンを務めていたチームの元看板FW。現役を引退した3季後からは、再びフロントスタッフとしてコロラドへ戻り、2013年5月10日には副社長(アイスホッケー部門)に就任。その13日後には、カナダのジュニアチームで共同オーナー兼HCをしていたロワを、コロラドの指揮官に任命しました。
白羽の矢を立てられたロワは、現役時代に史上2位となる通算551勝を記録し、アイスホッケーの殿堂入りを果たしたほどのGK。モントリオール カナディアンズ在籍時に、2度の優勝に輝き、いずれもプレーオフMVPを受賞しています。
しかしながら、1995年12月に大量失点をした試合で交代を命じられ、不満をあらわにする行動をとったのが引き金になり、コロラドへトレード・・・。
ところが、事実上の放出と言えるトレードは、コロラドとロワに「吉」と出ました。
移籍直後から守護神に君臨したロワの働きが原動力となり、その年のプレーオフを制して初優勝。さらに2001年にも2度目の優勝に輝くとともに、自身3度目のプレーオフMVPを受賞するなど、看板FWのサキックとともに、コロラドの黄金期を築いた立役者となったのです。
▼盟友に何が起こったのか?
しかし、ロワが2003年に、サキックも2009年に引退したことも響き、黄金期にも終焉が訪れます。3季続けてプレーオフ進出を逃すなど、一転して低迷期に・・・。
そこで、前述したとおり副社長に就任したサキック(現GM)は、黄金期を知る かつての盟友にHCを託すと、ウエスタンカンファレンスで最下位に沈んだチームが、一気に2位へ躍進し、4季ぶりのプレーオフ進出。盟友の期待に応えたロワは、最優秀コーチ賞に選出されました。
ところが、その後は、一昨季、昨季ともレギュラーシーズンで敗退。それだけに、今季は巻き返しを期すシーズンと位置付けられていたのですが、HCの突然の辞任発表で、青写真を描き直さなくてはならなくなりました。
地元メディアによると、ロワは昨季の試合が残り2試合になった際、「オフには積極的な補強が必要だ」とコメント。しかしながらサキックGMは、一昨季に最優秀新人賞に輝いたネイサン・マッキノン(20歳)と7年契約延長を結ぶなど、現有戦力の流出阻止に注力。その反面、サラリーキャップ(チーム年俸総額制限)との兼ね合いから、「積極的な補強」までは至らずにいます。
「HCに就任して以来、チームをより高いレベルへ導くために、懸命に考えてきた。これを達成するには、コーチとチームの針路を定める者の方向性は、完全に一致しなければならない」
このようなコメントを残して、コロラドに別れを告げたロワ。しかも退団のコメントを、チームからのリリースではなく、民間の広報企業を通じて発信したのも、本人の無念さの表れでしょうか?
一方、指揮官不在の事態に陥ったサキックGMは、「期限を設けるつもりはないが、(1ヶ月半後に始まる)トレーニングキャンプまでには、新たなHCを決めなければならない」と話しましたが、開幕2ヶ月前の ”ロワショック” を拭い去り、チームを上昇気流に乗せることは、できるでしょうか?
黄金期に攻守の主役を担った盟友が、袂(たもと)を分かつことになったコロラドが、どのようなシーズンを送るのか注目されます。