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ジャニーズ性加害問題、再発防止特別チームの会見はなぜ違和感だらけだったのか―全文と解説―(前編)

石川慶子危機管理/広報コンサルタント
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会提供

 6月12日13時からジャニーズ事務所の性加害問題の再発防止チームによる記者会見が突如として開かれました。ジャニーズ事務所が会見を開いていない状態で、なおかつ、再発防止チームはまだ検証もしていない、中間報告や結果でもない段階での異例な会見でした。しかも3名の再発防止チームのうち1名は名前も組織も未公表で欠席。二人だけの会見。この記者会見は説明責任の場としての役割を果たしたのでしょうか。一方、報道陣は国民の知る権利を背負って「質問責任」を果たしたのでしょうか。

 最初に問題点をまとめておきます。

  • 会見の位置づけ、目的がわからない。説明できないことだらけで会見を開く意味が不明。1名欠けているため3人の顔見せの場ともなっていない。しっかり調査するという決意表明のわりには、意気込みはあったもののスケジュールもなく、終始受け身の姿勢だった。
  • ジャニーズ事務所が会見を開いて説明したかのような誤解を世の中に与える。再発防止チームがこの時点で会見を開くことそのものがジャニーズ事務所のダメ対応に加担することになっているように見えた。
  • 報道陣の質問が、事実認定方法や法的責任に偏り、社会的責任への決意を引き出していなかった。被害者や国民の気持ちを背負った質問が少なかった。

なぜ、そう思うのか、質疑応答の全文を掲載して上記の理由を説明します。

(前編、中編、後編と3回に分けて掲載します)

■動画解説 リスクマネジメント・ジャーナル(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会)

会見の位置づけがわからない

会見の趣旨は、司会から説明がありました。

司会:本日の司会を務めさせていただきます、ボックスグローバルジャパンのクロダと申します。事前にご案内してあります通り生中継はご遠慮いただいております。会見終了後に報道をお願いいたします。本日はご協力よろしくお願いいたします。さて、本日の会見の趣旨を改めてご説明させていただきます。ジャニーズ事務所は2023年5月26日、外部専門家による再発防止特別チームを組成することを公表いたしました。本日は、この特別チームの今後の調査の進め方や取り組み状況について、チームの座長より、直接皆さまにご説明させていただきます。それでは、外部専門家による再発防止特別チームのご紹介をさせていただきます。

 皆さまより向かって左より、座長の林眞琴弁護士でございます。続きましてお隣は、精神科医の飛鳥井望医師でございます。本日は登壇していませんが、もう1名チームメンバーが就任いたします。発表にもございましたが、性暴力等の被害者支援を実践し、臨床心理の研究も行っている専門家でございますが、本日欠席させていただいているのは、現在所属している組織内での手続きの関係でございます。大変申し訳ございませんが、氏名の公表も、現段階では差し控えさせていただきます。ご容赦ください。それでは、最初に林座長より説明をし、その後、皆さまからのご質問にお答えさせていただきたいと思います。それでは林座長、よろしくお願いいたします。

 冒頭説明であれっと思った違和感は2点。司会の名乗り方。司会がジャニーズ事務所との関係を明確にせず、別会社の名前を出したことで、主催はどこなのかがわからなくなりました。クロダさんなる人物の所属会社はわかりましたが、どの立場で司会に立っているのかわかりません。ここで名乗るのであれば、ジャニーズ事務所の危機対応事務局、あるいは再発防止チーム事務局支援のボックスグローバルジャパン、と名乗るべきでした。あるいは、自分達の社名を出すのではなく、ジャニーズ事務所に出向する形式をとり、ジャニーズ事務所社員として司会進行を取り仕切れば、余計な混乱を引き起こさなかったといえます。

 2点目の違和感は3名がチームであるなら、手続きが済んでから3名で行えばよいはずです。なぜ、手続きが済んでいない状況での会見なのか。ここで中途半端な印象が残りました。というのも「調査の進め方や取り組み状況について、チームの座長より、直接皆さまにご説明させていただきます」と司会が言っているのに、会合は顔合わせの1回しか開催されておらず、手法についてもこれからだとしているからです。ここから推測できることは、ジャニーズ事務所として会見を開催せよ、の声に対して、一刻も早く会見を開く必要があると認識しつつ、社長がどうしてもやりたくないと言い張り、自社主催ではやりたくないため、1名の所属と名前が公表できない段階でも、前検事総長の睨みを利かせた会見で記者会見を開いた、という事実を作りたい、といった思惑があるように見えます。

 この会見の位置づけに関して「司会のあなたはどのような立場なのか、関係性を明らかにしてほしい」「手続きが済んだ時点で3名の名前が公表できる段階で記者会見をすればいいのに、なぜ今なのか。」と質問をした記者はいません。報道資料には書かれていたかもしれませんが、見ている人からは全くわかりません。そもそもここが被害者、国民目線に欠如しているといえます。

林弁護士(以下、全員敬称略):チームの座長を務めております林でございます。本日どうぞよろしくお願いいたします。株式会社ジャニーズ事務所は、2023年の5月26日に「外部専門家による再発防止特別チーム」を組成することを公表しました。本チームは5月29日に第1回の会合を開催し、その後、資料の徴求、検討、またヒアリング対象者の選定などを行う、そのような活動を開始しております。本チームでございますが、検事総長経験者、精神科医、性暴力等の被害者支援の実践を行っている臨床心理の研究者から構成されておりまして、いずれもジャニーズ事務所とは、これまで関係を一切有しておりません。

 本チームはジャニーズ事務所から独立した外部の第三者といたしまして、ジャニーズ事務所代表であった故ジャニー喜多川氏からの性被害を申告されている方々に寄り添って、直接お話を伺い、またジャニーズ事務所の役職員にヒアリングを実施するなどして、ジャニーズ事務所の過去の対応にどのような問題があったのか。これを厳正に検証して、検証結果を踏まえて、ジャニーズ事務所のガバナンス上の問題に関する再発防止策を提言し、事務所に対して、その実行を求めていくものでございます。

 なお、被害の申告の有無にかかわらず、ジャニーズ事務所に所属経験のある全ての方への心のケアのために、ジャニーズ事務所が心のケア相談窓口を設置しております。本チームは、ご要望がある場合に、心のケアに支障を及ぼさない範囲で直接お話を伺うなど、所属経験者の方々のご希望に応えていきたいとも考えております。また、本チームによる検証の結果および再発防止策の提言につきましては、これをジャニーズ事務所に伝えまして、再発防止策の実行を求めるとともに、それについて適切な時期および方法において、お知らせをしたいと考えております。

 林さんからの説明では、何のために会見を開催するのか、この会見の主催者は誰なのか、どのような観点からの質問に回答するつもりなのかの説明がありません。これではどういった角度から質問するか、質問する側は戸惑ってしまうでしょう。また、「検証」という言葉は使っていますが、事実の検証ではなく「ジャニーズ事務所の対応を検証する」と説明しています。かくして、報道陣からの質問は、事実の検証なくしてどう再発防止をするのかの質問が多く出てしまうことになります。

 以下、報道陣とのやりとりは、意味が通る程度に多少言葉を整えましたが、ほぼそのままとし、筆者の考察コメントを入れました。

尾形:Arc Timesの尾形と申します。林さんに伺いたいんですけれども、再発防止チームということですが、再発というからには事実が必要だと思うんですけれども、どういう事実があったのか、その解明なくして再発防止という段階には進まないと思うんですが。その事実はどうやって解明するのか、何の再発防止なのか、その点を聞かせていただけないでしょうか。

林:再発防止というものに対して、どこから出発するのかということでございますが、今回、故ジャニー喜多川氏による性加害、性暴力、こういったものが、被害が申告されているわけでございます。こういったことがこの事務所の中で起きたということを出発点にして、それを前提といたしまして、これに対するジャニーズ事務所の過去の対応についての問題点を厳正に検証して、その結果に基づいて、このようなことが起きないような再発防止策。これはジャニーズ事務所のガバナンスの問題点にも関わりますが、そういった再発防止策を提言していくということでございます。

尾形:藤島ジュリー景子社長は性加害について認めていないんですけれども、その点は、ジャニーズ事務所に対して聴取したり、調べたりはしないんでしょうか。そこに大きい齟齬(そご)が生じていると思うんですが。今ジャニーズ事務所の性加害についてと、その再発防止とおっしゃいましたけれども、ジャニーズ事務所としては性加害自体を認めてないんですけれども、そこのギャップはどう埋めていくんでしょうか。

林:ジャニーズ事務所に起きたこと、そういった性暴力のことについて、これまでどのようにジャニーズ事務所が対応してきたのか、こういったことを検証してまいります。その過程でわれわれは当然、過去のジャニーズ事務所の対応およびその前提となるいろんな事実関係については、私たちの特別チームの立場で検証していくわけですね。その時に、その事実がどのような形でなされたのか、あるいはあったのかっていうことを認定するのは、われわれの特別チームの専権であると考えておりますので。その時にそれを認めているのか、認めてないかっていうことは、それにかかわらず、われわれが事実認定をしていくということでございます。

 記者側は事実認定の行い方について聞いているのですが、林さんは、社長や幹部を聴取するのかどうかについて回答していません。途中で不誠実だと考えたのか、事実認定についてはチームの「専権」といった言葉で強い意志を示しています。しかし、司会は会見の目的を「手法について説明する場」だとしているのですから、幹部への聴取方法について全員行うのか、辞めたマネジャーまで行うのかどうか方針について回答する責任があったのではないでしょうか。最初に会見の位置づけについても質問をしてほしかったと思います。そもそもこの問題について記者会見をしないまま再発防止チームがこの場で会見をしていることに事務所としての対応に問題があるように見える。ジャニーズ事務所が説明責任を果たす前にこのような会見を開いているということは、ジャニーズ事務所のダメな対応に林さん達が加担していることにはなりませんか、と言ってしまってもよかったのではないでしょうか。

村瀬:TBS「報道特集」の村瀬と申します。喜多川氏による性加害については1960年代から週刊誌でも報じられ、さらには『週刊文春』との裁判でも判決で認められています。それにもかかわらず、こういう問題が続いてきた背景に、事務所側が少年たちを合宿所と呼ばれるようなところに送り届けるとか、そういった組織的な関与があったのではないかというふうに疑われる事案だと思うんですけれども。特別チームとしては、ジャニーズ事務所の組織的な関与について、どのようにご覧になっていますか。

林:まず、どういった事実があったかっていうのはもちろん前提でございますが、われわれが主として今後検証していくのは、そういった事実に対して事務所がどのような対応をしてきたのか、そして、それがどのような問題があったのか、これが1点でございます。また、そのような事実が仮に頻発といいますか、複数回行われていたとすれば、それを起こしやすいような組織の風土でありますとか、いろんなガバナンスの在り方とか、そういったところにどんな問題があったのかといったことが、まさしく私たちが検証すべき対象だと思っているんです。

 マネジャーが送り届けているという情報提供まではよかったのですが、「どのようにご覧になっていますか」という質問は相手が自由に回答できてしまう詰めの甘さがあります。ここで求められるのは、「1960年代から何名のマネジャーがいたのか、ジャニーズ事務所に所属した少年達は総勢何名なのか、デビューした少年は何名なのか、数字の把握は当然するのですよね」と圧力をかける質問をしてほしかったと思います。

望月:『東京新聞』記者でArc Timesキャスターの望月衣塑子と申します。今林さんは検証するということですけれど、過去40年に遡るということで、かなり長期間の検証になります。検証結果の報告のめどはいつ頃を対象にしていますか。ジャニーズ事務所だけでなくメディア側の黙殺ということが大きかったと思います。新聞、テレビ、通信、こういったところがなぜ黙殺しなければならなかったのか。

 一部では、NHKさんとかテレビ朝日ではジャニーズJr.さんの練習場を提供していて、その場所で喜多川さんがやっている行為そのものが少年に対する性愛的な行為もあったと。私たちがインタビューしている人たちの中には、ジュニアさんの中には、今テレビがきちんと報じられない、一部のメディアが報じられない大きな理由として、事務所のやっていることを、場所を提供することで、一部当時の幹部たちが黙殺していた故に入り込めないんじゃないかということで。メディアに対する検証ということも考えているのかという点をお願いいたします。

林:検証を終える、そして提言をする、また公表したりしていくめどという点については、全く今まだスケジュールは定まっておりません。その上でメディアの対応について、これをどう取り上げるのかというのは、私たちの特別チームのミッションは、ジャニーズ事務所の対応にどのような問題があったのか。それに応じて、こういうことがないようにするために、再発防止策をどのようなものとして提言していくのか、ここにあるわけですから、直接的にメディアがこれまでにどのような対応してきたかっていうことは、私たちの検証の対象にはなっておりません。

 林さんはスケジュールについて全く定まっていなかったとしても、危機管理広報の観点からすると、目標はあった方がよかったといえます。期間がわからなければまだかまだかと問い合わせ対応に追われてしまうからです。少しでも対応を減らしていくのもクライシスコミュニケーションの役割です。そもそも方針の説明なら目標スケジュールくらいは発表する責任があったのではないでしょうか。

 一方、メディア側の黙殺についての望月さんの質問はずれてしまっています。メディア側の黙殺についての検証はメディアが自ら行うべきことです。「黙殺」ではなく、「ジャニーズ事務所がメディア側へ圧力をかけたのかどうかを検証するのですか」といった質問にすれば検証の対象になる、といった回答を引き出せたでしょう。

オダ:『産経新聞』のオダといいます。よろしくお願いします。質問の趣旨は、タレントに罪はないというような認識は現在お持ちかということ。これお二方にお伺いしたいと思います。というのは、先般いろんなテレビ局の社長会見で、性加害は許さないとしながらも、しかしタレントに罪はないといって、そして番組をずっと続けるというようなことをしてるわけですね。しかし先般タレントではないですけれども、マネジャーによる性加害ということも報じられましたし、今後あるいはタレント間とかいうことも出てこないとも限らない。何とも分からない状況でありますけれども、今の段階でタレントに罪はないというようなご認識があるかどうか、お伺いしたいと思います。

林:今回私たちが解明し、また検証するのは、先ほどから申し上げました性暴力の事象、事件がございます。それを前提にして、それに対して、ジャニーズ事務所でなぜこれが起きたのか、あるいはそれに対する対応がどのような事務所側の問題があったのか、またガバナンスがどのように不十分だったのか、こういったことを検証していくわけでございます。ですから今回の事案に、どちら側に罪があるのか、どちら側に問題があったのか、そういう観点では、私たちはこの検証はいたしません。もちろんそれは検証していく過程で初めて分かることであって、そういう意味で今出発点として、どちらに白黒、問題があったのかというようなことをあえて意識はしておりません。

飛鳥井:飛鳥井のほうからも少し今のご意見についてお答えします。私、被害者支援に関わっている精神科医という立場からです。タレントとスタッフ、あるいはスタッフ間、タレント間での性加害行為の問題というのも、これだけの歴史と組織規模のある事務所ですので、いろいろ出てくる可能性はあると思うんです。そこに何か共通しているような性加害に対する甘さのような組織風土といったようなものがありましたら、当然このチームとして検討して、必要な防止策を考えていくべきであろうと考えております。

 今回の事態は、通常の性加害に加えて、加害者と被害者との関係の特殊性がご指摘のようにあると思います。もちろんタレントとして夢や希望を持って、それをかなえたいという思いがあって、指導者であるジャニー氏への思いもあります。一方で、性加害を耐え忍ばなければならないといったような状況があり、当然少年たちに心の葛藤が生じたと思うんです。当然それについては、被害者である少年たちに責任はありません。そういう状況を生み出したということが問題なんでありまして、それに対して検討し、またそうならないような予防策を考えていくべきだろうと考えております。

 オダさんの「タレントに罪はないと思うか」といった質問は、ファンの感情を背負ってのことだろうと思いますが、「罪」という言葉が感情を背負いすぎているように見えます。「罪」ではなく「責任」の言葉の方が適切であったと思います。林さんの回答は「白黒はっきりさせない」という回答でやや冷たい印象になりました。しかし、飛鳥井さんのフォローがよかった。「被害者に責任はない」と非常に温かい言葉でフォローした点はよいチームワークだったと思います。「罪」を「責任」と言い換えている点も質問の意図をくんでいると思います。

 検証内容を引き出す質問にするなら「ジャニーズ事務所は性加害問題を起こしながら、タレントを使って利益を出し続けている現在の状況について批判の声があります。不祥事を起こした企業は通常、営業自粛といったことを行うからです。事務所が記者会見をしないから、タレントが批判の矢面に立ち、罪や責任論が浮上しています。タレントを人質にしたようなこの状況についてもジャニーズ事務所の対応問題として検証対象になると考えてよいですか」とすれば聞いている方もすっきりとします。

被害の大きさを追求しない方針であっていいのか

ナンバ:TBSテレビ「Nスタ」のナンバと申します。よろしくお願いいたします。頂いた資料には、性被害を申告されている方々に寄り添ってお話を伺うということと、ジャニーズ事務所の役職員にヒアリングを実施するということも書かれています。今回事実認定の調査を行うに当たって、申告をしている過去のタレントのみに限っての調査を行うのか。あるいは、実際に今回申告をしていないタレントの中にも被害者はいる可能性もあると思うんですけれども、どれぐらいの規模で実態の解明の調査を行うのか、言える範囲でお願いできたらと思います。

林:先ほど申し上げましたが、私たちチームは過去の加害行為の存在を前提として、そしてジャニーズ事務所の過去の対応にどのような問題があったか、これを厳正に検証するということを考えております。一方で過去の加害行為全てについて、まだ明らかになってないものを網羅的に、その有無、詳細を調査すること自体は目的とはしておりません。

 一方で、もちろんわれわれが再発防止を提言していくためには、その場合に事務所がどのように対応したのか、そういった事実、性暴力がどのような状況で起きたのか、こういったことは当然把握した上で再発防止策を考えていかなくてはいけないわけですので。私たちとしては、もちろん現在被害を自主的に申告されておられる方で、できればご協力をいただいて、ご協力がいただける場合には、その方の心理的な負担を十分に考慮した上で、その方々のお話をぜひ聞かせていただきたいと考えております。

 一方で、このことはチーム内でも協議したわけでございますが、被害の有無にかかわらず、この件について話すこと自体が心理的に大きな負担を与えることだとは考えております。そのため、被害を自主的に申告されている方、あるいはこの件について、これから自主的にお話ししたいと考えているという方以外に、所属経験のある方々全てに被害の有無などをこちらから聴取するということ自体が、対象者の心理的な負担でありますとか風評被害を招きかねません。そのようなやり方は適切ではないと考えております。いずれにしましても、被害を申告されている方で協力をいただける方は、ぜひとも私たちは自分たちの目と耳で直接お話を伺って、今後の再発防止策の検討にするようにしたいと考えております。

飛鳥井:私も全く同じ考えでありまして。被害者支援に携わる立場からも、性被害というものはプライバシーを保護すれば調査していいんじゃないかとお考えの方もおられるかもしれませんけれども、調査をされるということ自体が大変な心理的な負担になって傷口を広げてしまうということがままあります。従って、まずそういったような傷口を広げてしまうような調査方針というものはすべきでないだろうというように考えております。

 ただ、じゃあ、それではほんとに全容解明できるのかといったような懸念をお持ちになるかもしれませんが。これはいろいろお話伺っていく中で、この点についてはもう少し掘り下げたほうがいいといったような問題がありましたら、そのことについてお話しいただける方に本当に丁寧にその理由を説明して、ご協力いただけるかどうかを打診するということになるかと思います。私自身も網羅的な調査ということは、この場合、適切ではないと考えております。

 ここで網羅的に調査を実施しないことがここで明らかになりますが、被害者についてのみ回答しており、幹部への調査方法については回答していない点が気になります。幹部への聴取について聞かれるのは2回目ですが、ここでも回答していないのはなぜか。幹部には全員に聞く、といった断固たる姿勢を示すことができなかったため、聞き手に不信感を残してしまいました。

オオタケ:『ジャパンタイムズ』のオオタケと申します。先ほどメディアへの長年の対応について、この再発防止チームが調査することは考えてないっていうことでした。一方で、事務所の長年のメディアとの付き合い方というものが、メディアコントロールというものが大きな問題の解決を妨げてきた面もあると考えられます。そういった組織風土を考える意味では、メディアへの対応も調査の対象になってくるのかどうかをお聞かせください。

林:この問題に対するジャニーズ事務所の対応を検証するというわけでございますので、検証していく過程においては、そういったことも視野に入ってくる可能性はあると思います。私が申し上げたのは、先ほどメディアの対応にいかなる問題があったか。こういったことは私たちの特別チームの目的ではないわけでございますので、そのように申し上げました。

 これはナイスフォローです。「メディアへの対応も調査の対象か」と望月さんのずれてしまった質問を的確に修正して投げています。ずれたり、詰め切れなかった質問を報道陣が補いあえば、「よしそこだ」と応援したくなります。

中編へ続く(近日掲載)

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長。社会構想大学院大学教授

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